第5話 成績の秘密
今回書き方が迷走してて読みづらいかも知れません
ベルンハルトはユリアーナに呼ばれ昼食をとった後もこの世界のことについて調べ続けた。いくつか調べたものの中で特に驚いたのは暮らしている種族が人間だけじゃなかったことだろうか。ドワーフ、獣人などが主に多くなるみたいだが他にもいるらしい。
(正直本物を見ないと信じられないところだな。俺も出会ったことないから会ってみたいものだな。どこに行けば出会えるもんなのだろうか)
など、適当に調べ物やら勉強やらしていて少し疲れたかなと、時間を確認したらもう夕方くらいの時間になっていた。適当に調べ物や勉強をしていたらだいぶ時間が経っていたみたいだ。
(そろそろ学校が終わってティアが帰ってくる時間かな)
そう思った矢先にコンコンっと扉を叩く音の後に声が扉の向こうから聞こえてきた。
「お兄様私です入ってもよろしいでしょうか?」
「ああ、ティアか問題ないよ」
「失礼致します。学校から戻りました」
「うん、おかえり。今日はいつもより帰ってくるのが早くないかい?」
「えっとその、お兄様がの事が……」
言葉に詰まっているのかその先がすぐ出てこなかったので続きを促すことにする。
「どうした?俺の事?」
「いえ、何でもございません。今日は仕事の量が少なかったのでいつもより早く上がれたんですよ」
「…そっか、お疲れ様、とりあえず俺はもう回復して暇してたくらいだから大丈夫だよ」
(多分生徒会の仕事残ってたんだろうけど切り上げて早めに帰ってきたんだろうな。なんで平日にぶっ倒れちゃうかな、休日だったらまだ少しかはマシだったはずなのに。申し訳ないことしたな)
などと考えつつもセレスティアの頭を安心させるように軽く撫でて、後ろにいたもう一人に声をかけた。
「アリシアも、来てくれたんだねありがとう。このとおり今はもう何ともないから心配かけてごめんね」
「べ、別にベルお兄さんを心配してきたわけじゃないわよ。ティアがどうしてもって言うから…」
「あらそんなこと言って、お昼のこといいの?」
「ん?お昼のこと?」
「ちょっとティア!?」
俺がいない間に何かあったのだろうかと聞き返したところ凄い勢いでティアを引っ張ってドアのあたりまで下がっていった。
「そのことは内緒にしてって言ったよね!」
「シアが素直じゃないこと言おうとしてるから後押ししてあげようかと思ってね」
「そ、そんなことしなくていいよ」
「あら、ならなんで私が無理やり連れてきたみたいな風に仕立てようとしてるのかしら」
「うぐ、だってぇ」
「だってもなにもないわよ、ここで変に誤解される可能性もあるのよ」
「誤解されたとしても、今はまだこの気持ちを打ち明けることは出来ないの!」
「ならいつになったら打ち明けるつもりよ…って問い詰めたいところだけどお兄様をこれ以上待たせるわけにはいかないわね」
ベルンハルトの方を向いてみるとニコニコしながらこちらを見ていたのでまた切り上げることにした。
「話し合いは終わったのかな?」
「はい、申し訳ございませんお兄様の部屋なのにお兄様のことを会話に混ぜないで話してしまって」
「いやいや、問題ないよ二人は相変わらず仲が良くていいね。これからも妹をよろしくねアリシア」
「い、いえ。こ、こちらこそ末永く宜しくお願いします」
「あら、シアってば大胆」
「へ、あっいやこれは違くて」
「?なにか悩み事あったら押し売りみたいなるけど相談してもいいからね二人の兄としてその位は聞けるから」
何が大胆なのかよく分からなかったが、相談なら乗ると言うと2人は不思議そうな表情でベルンハルトのことを見始めた。
「……お兄様なんか雰囲気変わりました?」
「うん、ベルお兄さんは良くも悪くもあまり人の内側に入ってこないようにしてた気がするけど」
「えっ」
ドキッとした。それは、たった一言自分の意見を話しただけでなにか見抜かれたような気がしたからだ。話題が悪かった可能性もあるが2人の洞察力は危険な気がした。母は特に何も言ってこなかったから失念してたが自分の価値観やら何やらある程度変わってるせいで自分のことをよく知ってる人には違和感があったのかもしれない。
(どうするかな素直に話すべきか?だが、実は前世の記憶があったんだよねーあははは。なんて話を誰が信じてくれるか…否、誰も信じてくれるわけがない。頭おかしくなったと思われてもおかしくないし、証明する証拠が不十分な以上隠しておくのがいいか)
「お兄様、いかがなさいました?まさか!まだお体が優れないのでは!?」
少しの沈黙を訝しんだのかハッとした様子でそう聞いてきた
「ああ、ごめんもう本当に体調は大丈夫なんだ。俺は何も変わってないから。それよりティア達はなにか相談や聞きたいことは無いのかい?」
「そうですか?それならベルお兄さん私たちに勉強を教えてくれませんか?今日の授業の内容が頭に入らなくて」
「そのくらいの話なら問題ないよどこが分かんなかったの?」
「実は今日初めてやる範囲に入ってこの問題の答えまでの過程をもう少し詳しく知りたくて」
こうして夕飯ができる時間までセレスティアとアリシアに勉強を教えることになった。雰囲気が変わったと聞かれたことはとりあえずは誤魔化せたみたいだから前世について教えるかどうか考えないといけない。
(さて、どう信憑性を持たせたものかな)
それから数時間セレスティアとアリシアに勉強を教えていたベルンハルトだが軽くヒントを教えるだけで二人は自分達で理解していったので特筆すべきことも無く、滞りなく勉強会は終わった。はずだった。
「あら、お兄様この紙は…」
「ん?なんかあったか」
「……」
黙りこくったセレスティアを不審に思いその手に持っている紙を覗いて見るとそこには自分の今までの成績表があるではないか。
「ティア…それをどこから?」
「教科書の下敷きになってました。それよりお兄様、これはなんなのでしょうか?」
「あ、あーそれはな。うん、なんだ。俺の評価だな」
「そんなことは分かりきっておりますわ。ちゃんと名前が書かれてますから。そういう事ではなくて、どうしてこんなにギリギリの成績なのでしょうか。そしてこの成績でなぜ先程の問題を教えることが出来たのでしょうか?」
感情を覗かせないような声で淡々と問い詰めてくるセレスティアに焦りつつなんとかうまい言い訳がないか頭をフル回転させている。前世の記憶があってその前世で勉強がとても出来ていたからその問題もできたなんて言っても信じてもらえないのは確実だろうから何とかして上手いことを探さないといけない。
「そ、それは…ティアたちが学校に行ってる間に勉強したからな」
「そんな数時間で理解できるような内容じゃないと思われますが」
「……」
(まずいまずいまずい、どうする。こうなるとティアは納得するまで逃がしてはくれないぞ。何かいい案は…そうだ!)
「お兄様?」
「手を抜いてたんだ」
「はい?」
「手を抜いてました」
「はぁ、何故そのようなことを?」
「まあまあ、ティア落ち着こ?きっと何かしら理由があっての事なんだろうからさ」
アリシアの優しさが嬉しいけどどこが冷めた目で見られている気がして少し傷ついたが、ティアはさらに痛い目線を送って先を促してきているので考えついた上手い感じの言い訳を並べていく
「上位になると掲示板に名前が張り出させるだろそれが嫌だったんだ。最初のうちは本当に点数が悪かったんだけど、その時に上位になってたやつが不正をしただなんだって難癖をつけられてたんだよ、それを見て日々の勉強はしっかりしてもテストは手を抜くことにしたんだ。その結果がその成績表だよ」
ベルンハルトが頭を全力で回転させて出てきた逃げ道がこれしかなかった。難癖をつけられてた人がいたなどの事実も織り交ぜてあるから嘘とは見抜かれないであろうと思う。
ちなみに余談だが難癖をつけていたやつは上位をキープしており。難癖をつけられた人はそいつらの嫌がらせの悪質さに耐えられなくなり学校を退学している。
自分で嘘を言いつつどの世界でもいじめ問題はあるんだなと、悲しく思いつつ、自分ではどうしよもできないと見捨てたことに嫌気がさしたが今となってはどうすることも出来ない。
「なるほど、そういう事だったんですね。確かにその人は最低な人間ですね…。ですがお兄様アルム家の長男ともあろうお方がそんな事でどうしますか!私のお慕いするお兄様はそんな覇気のない方ではありませんよ!」
どうやら信じてくれたみたいだが何やら熱くなっているようだ。それはイメージの押しつけじゃないかと思いつつも妹の言葉が心に刺さった。
(今までダメな面ばかり見せてたと思うけど慕ってくれていたのか…そっか慕われてたのか。悪い気は…しないよな)
何故か妹の熱さに感化されたのか嘘ついた自分すら騙され始めたような感じだ。慕ってるという言葉が想像以上に嬉しかったのだろう。
「そう、だな。分かったよ。次のテストからは学年1位で通るようにするよ今の1位なんて敵じゃないからな」
「そのいきですお兄様、それでこそ私のお慕いするお兄様です」
「そ、そんな簡単に1位なんて取れるもんなんでしょうか?」
おずおずと二人の勢いを邪魔していいものかと思いつつも気になって聞かざるを得なかったのだろうか素朴な疑問をアリシアが聞いてきた。
「問題ないよって言っても信用出来ないかな…そうだ、今までのテストの用紙あるから全部やって見せようか」
そう言って机からテストをまとめた箱を出して別の紙に解き始めた。
そうして約一時間後五年分のテストをすべて解き終えた。
「は、早い」
「私達も同時進行で答え合わせをしていきましたけど全問正解ですわね」
「まあ、このくらいならね。できないと今までの努力が報われないよ」
(前世で大学生までいってるんだ。小学校の問題で躓いてたら涙が出るどころでなく、しばらく引きこもれるよ)
そんなことを思いつつ、時間を確認するともう夕食の時間であった。
「さ、もう夕食の時間だから食堂に行こうか。アリシアも今日はここで食べていきなよ。お見舞いに来てくれたお礼も兼ねてね」
「そんな、お礼なんて」
「いいからいいから、と言っても夕食を作るのは俺じゃないんだけどね」
「うう、分かりました。お言葉に甘えさせて頂きます」
「そう言ってくれると思ってたよ。ちなみにもう既にタナー家の方には連絡してあるから心配しないでね」
こうして3人で食堂に向かっていって。アルム家の両親を加えて夕食を食べて。その後アリシアの事はセレスティアの計らいによりベルンハルトが家まで送り届けることとなった。