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嫌われ者の蟲使い  作者: 『食べられません』を食べた人
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第二話

第1話→第一話にしました。

 蟲達にはこの宿の周辺に隠れてもらうことにした。指示を出すとすぐに移動を始めた。吸血系の蟲だけは自分のそばに置いた。受付のお嬢さんは震えていて話にならなかったので、勝手に部屋に行くことにした。


 「あれま、結構な人数がいたみたいだね。武器と服がいっぱい落ちてる」


 さすがにおっさんが着ていた服はいらないのでそのままにしておこう。武器は良さげなものがあったので、回収しておいた。金品が散乱してたので、蟲に集めてもらった。意外なことに綺麗好きの蟲がいたらしく、1ヶ所に集めてあるものもあった。それらも全て回収しておく。


 闇ギルドって儲かるのかな?まぁ闇ギルドっていうぐらいだし、犯罪で無理矢理金を稼いでるのだろう。まぁ何だろうと、この金は貰うけどな。夕食は出るのかな?確認してくるか。


 受付の方に行ってみるとお嬢さんはいなくなっていた。蟲達に聞いても宿を出ていったことぐらいしかわからなかった。骨蜘蛛を集めて宿のお嬢さんの位置を教えてもらうと、どうやらこの街の闇ギルドの本部に向かったそうだ。


 あのお嬢さん全然一人じゃないじゃないか。話を聞いていくとその闇ギルドの偉い人に報告をしにいったようだ。蟲狩りがくる可能性があるな。これくらいの大きさなら一人ぐらいはいるはずだ。さて、どうしたものか。今日はゆっくりするはずだったんだが、これから戦闘になる可能性があるな。


 宿を出て商店街に出るとまだまだ夜に差し掛かる程度のため、賑わいを見せていた。肉屋によるとすでに多くのブラッドフライとブラッディフライが成虫になっていて、餌が豊富なためか、抜け出す前に繁殖を繰り返していた。


 最初にいた個体は進化しており、その進化個体の子も成虫になり、肉屋が繁殖場になっていた。なぜ気付かないのか、不思議で堪らないが、人を襲う許可を出しておいた。


 「蟲だっ!人がっ人が食われたっ!」


 「蟲が突然あらわれたぞ!逃げろっ!」


 「いやっこ、こないでっあっいだっあっがっや…め…」


 すると、肉屋から悲鳴が上がり、やがてそれもすぐになくなった。気になった客が肉屋に入ると、次々と血を吸い尽くされていった。


 「あっいやぁぁぁあああーーーっ!」


 「逃げろっ逃げっ!うわぁぁぁあああーーーっ!!」


 「おがあ゛ざぁぁあああーーっん、置いていがないでっ」


 干からびた人々をみた者は叫びながら逃げていく。周りは騒然としている。一目散に逃げるもの、知り合いが死んで泣き叫んでるもの、周りを警戒するもの、どさくさに紛れて盗みを働くものがいた。


 「くそっこんなやつら火魔法でっ!ふんこんなや…つ…ら?う、うでがくわっれ…っ」


 「蟲がっなっなんで…」


 「いやぁぁぁあああーーーっ!私が何したって言うのよ!こ、こないでっ…いやっいやっ…あっ…あっ…あ…っぁ」


 各肉屋から数百の蟲があふれでていく、近くにいるものから血を吸われ生きたまま身体を食われ、逃げることもできず死んでいく。蟲達にこの街のものを全て食べていいと指示を出すと、隠れていた蟲達は集団で目に入った人々を襲っていく。


 蟲達に闇ギルドへ案内してもらった。どんな様子か聞くと人が忙しなく動いていて、物を馬車に運び込んでいるようだ。逃げる気満々だな。吸血害蟲達に馬を襲わせて足をなくす。街の人らは蟲達のご飯になってくれてるのに、何お前らだけ逃げようとしてんだよ。


 「おい、馬が突然干からびたぞ!どういうことだ!」


 「蟲だ!もうここまで来やがったんだ!逃げろ!」


 「くそ!なんでここに攻めてきたんだ!俺達が何したって言うんだ!」


 いやいや、すでに包囲済みだからね。それとお前らのお仲間が殺しに来たからね。てか君ら闇ギルド団員なんだから、色んなところから恨まれてるだろ。まぁ逃がさないけど。


 蟲達を屋敷の中に送り込み、外にいたやつらはある程度血を吸わせて半殺しにしておく。こいつらはワームや蟻に食わせる。吸血害蟲らの進化具合からしてDランクぐらいまで使役できるようになっているだろう。


 そういえば街の人らのことでも思ったが、使役してる魔物はどこにいるんだ?どこかに保護してる場所があるとか?それとも自宅待機か?いや、それだともしもの時の安全が確保できない。そうすると、魔物使い自体に使役できる魔物が自ら寄ってくること、使役できる魔物の系統に襲われないこと以外になにかあるのか?まぁそこらへんは冒険者ギルドあたりで調べたらいいか。


 それよりもまずはあのお嬢さんと闇ギルドの当主だな。骨蜘蛛に聞くとこの街で一番大きな屋敷から火属性の蜥蜴を使役した男が蟲を処理し始めたようだ。蟲狩りが来たか。その前にここを終わらせないとな。蟲達についてくるように指示をして、近くにいる人が俺に襲ってきたら食べていいことにしておく。


 闇ギルドの屋敷は今でこそ蟲達で埋め尽くされているが、少し前まではどこぞの貴族の屋敷のように庭は整えられ、石造りの屋敷が石畳の道に合い、お洒落な建物でこの街の闇ギルド本部とは言えないものだったが、今では死屍累々だ。


 門を通り正面から屋敷に入っていく。玄関では貴族の屋敷ではメイドや執事がいるものだが、入ってみると荷物を抱えたものとそれを指示するものが俺の侵入に固まっていた。


 「お邪魔します。ちょっと貴方達を殺しに来た者なのですが、勝手に入りますよ」


 「はぁ?なんだぼ…う…ず?ぐあっ、いだっなっあ゛じがっおでのあ゛じがぁっあああーっ」


 小声で指示して足だけを食べさせると泣き叫んで持ってる物をぶちまいた。


 「あれ?なになに?これ俺にくれるの?ありがたくもらっとくね!お、俺が持ってる魔法の鞄より容量多く入るやつあるじゃん!わざわざありがとねぇ~」


 物をもらったならばしっかりとお礼はしとかないとね。お礼は大事。信頼を勝ち取れば倍返ししてくれるからね。


 無抵抗のおっさんらを自らの手で殺す。転がってる体から頭を剣で切り離す。ステータスにはレベルが存在しており、倒した生き物の強さによって得られるものも変わる。


 それに人は魔物でいえば一般の大人はDランク,子供はEランクほどの強さがある。冒険者はその上をいく。闇ギルドの団員であればCランク以上は期待できる。


 初めて人を自分の手で殺したが、罪悪感はなかった。蟲に殺されるよりはまだマシだと思っているのは俺だけではないはずだ。きっと蟲に足をかじられたそこの頭と体を切り離した彼ならわかってくれるだろう。返事はないけど。


 奥からは叫び声を聞いて駆けつけた男達が剣を持って現れた。蟲に血を倒れるまで吸わせる。すると走った勢いのまま転けて、動けなくなった体に戸惑い始める。


 「おい!どうした!お、お前!なにをした!」


 「なにもしてないですよ。彼がただ転けたようにしか見えなかったんですけど」


 「おい!さっさと立て!おい!起きろ!は?なっんで体が…」


 転んだ彼に怒鳴り散らしていた男は糸が切れた操り人形のように崩れ落ちた。


 「どうしました?新手の詐欺かなにかですか?」


 その男の後ろにいた男達も同じように崩れ落ちた。皆驚愕な表情をしていた。


 「だめですよ。こんなところで寝たら…風邪引きますよ?ほら、はやく逝きな?」


 そう言いながら最初に転けた男の心臓に剣を突き立てる。それには後ろにいた男達も驚愕な表情から怯えた表情へと変わった。剣を心臓から抜いて1つ後ろの男の心臓に刺す。それを繰り返す。無抵抗のまま死の順番を待つ男達はあるものは失神し、あるものは体を震わせて、あるものは心の中で『殺さないでください』と懇願した。そんな男達の想いは虚しく叶わず、殺されていった。


 蟲達に人がいるところを教えてもらった。奥の部屋に大勢の人がいて、待ち伏せしてるそうだ。良いことを聞けたのでこの新鮮な男の死体を食べさせた。喜んでいる感情が無数に伝わってきた。蟲達にはその奥の部屋に窓から入れないかと聞くと、どこからでも入れるそうだ。ついでにその奥の部屋以外に人はいないか聞くと、いるそうなので殺しにいってもらった。


 蟲達に奥の部屋にいるもの達の手と足を食べてくるように指示を出すと、魔物用の結界が張られていて入れないと言われた。対策はされているようだ。


 確か魔物用の結界には術者が必要なものと設置型があり、術者が張るものは魔力量が有る限り張り続けることができ、設置型は魔力を蓄積できて、補充することで使い続けることができる。しかし魔物用の結界を張れば魔法対策の結界は張ることができない。俺は一応冒険者を目指していたから魔法も一通り使うことができる。


 最近ステータスを全く見ていないが、魔法を使うなら魔力量を把握しておかなければならない。基本的な初級魔法で5,中級魔法で20は消費する。オリジナルの場合はもっと必要になる。


名前:ラルフ

種族:人族

使役魔物系統:蟲

レベル:28

生命力:150/155

魔力量:257/257

【魔物使い】Lv5

→蟲系統の魔物を使役することができる。

Lv1:Gランクの蟲系統を使役できる。

→蟲系統を使役でき、自ら使役されにくる。

→蟲系統に襲われない。

Lv2:Fランクの蟲系統を使役できる。

→蟲系統と意思疏通ができる。

Lv3:Eランクの蟲系統を使役できる。

→蟲系統の感情が理解できる。

Lv4:Dランクの蟲系統を使役できる。

→蟲系統の位置特定,把握ができる。

Lv5:Cランクの蟲系統を使役できる。

→蟲系統を経由しての魔法が使用できる。

【属性魔法】Lv4

初級魔法:火,水,風,土,光,闇,無

中級魔法:火,風,無

【剣術】Lv4【弓術】Lv3【短剣術】Lv3


 魔物使いのスキル内容は見ておくべきだったな。やたら蟲達の感情がわかるかと思っていたが、そういうことだったか。もう5になったのか。ということはこの中にもCがいるということか。んん?魔法を蟲を通して使える?こういうのは試すのが一番手っ取り早いな。


 ちょうど今奥の部屋に侵入した蟲に意思を伝えて扉の前で剣を構えてる男の足に向いてもらう。それから地面から生えた蔦のイメージで蟲から風魔法を放ってみた。すると扉の向こうから叫び声が聞こえた。どうやら成功のようだ。


 蟲達に部屋にいる人の足を食べるように指示を出し、先程の蟲に人が多くいるところに向いてもらうことにした。また魔法をうつと、さらに大きな叫び声が聞こえた。


 奥の部屋から何人か飛び出てきたので、蟲に足を食べてもらう。転んだところを心臓を刺して止めを刺す。


 扉が開いていたので中を覗いてみると一人のおじさんに数人の女性が抱きついていて、そのおじさんを守るように5人の男達が剣を構えていた。床には7人の足を食われた男達がうめき声をあげていた。おじさんの方を見ると目が合ってしまった。


 「こんばんは、今日は命をもらいに参りました」


 奥の部屋に入りながらそう言って、床にいた男達を蟲に食わせる。蟲からは喜びの感情が伝わってきた。


 「てめぇ!舐めたこといってんじゃねぇぞ!」


 「別に舐めてませんよ。だってまずそうじゃないですか」


 「そういう意味じゃねぇよ!こんなことしてただですむとおもってんのか!」


 「そう言うならその結界から出てきてくださいよ。魔物用の結界を張ったところで意味はないのですから」


 わめいている男の後ろにいた護衛らしき者達の足を魔法で切断する。すでにこの部屋は蟲達が至るところに配置していて、いつでも魔法を打つ用意ができている。


 「っ!?あ、あああ足がぁーーっ、俺の足がぁっ!?」


 「いだいっいだいっ!いっだいどごがらっ…」


 「うわぁぁぁあああーっ…痛い痛い痛いっ足がっ俺の足がっ」


 足を切断されたおっさん達は叫びながら痛がり出した。先程までわめき散らしていたおっさんは状況を理解できず、かたまっていた。話にならないので近づいて首を横に切り殺した。


 どうやら先程まで立っていた男の中に術者がいたようで結界が解除された。蟲達が落ちているそこのおっさんを食べたいという意思が送られてきたので、食べさせた。


 残っているのはハーレムを築き上げているおじさんと女達だ。周りを蟲達でさらに蟲ハーレムにレベルアップさせておいた。


 「貴方がこの闇ギルドの当主ですか?」


 「いかにも。してわしはこれから殺されるのだな?」


 「そうですね。なにもできなければそうなります」


 「そうか…わしは長い人生をおくってきた。金も稼いで人を殺してさらって犯して好き放題やってきた。それでもわしには罪の意識はなかった。お主は昔の若い頃のわしを思い出す。お主は今何を望んでいる?金か?女か?名誉か?興奮か?それとも復讐か?」


 「俺は成人になるまではなに不自由なく生活していた。だが蟲使いになってからは蔑まれ罵られ石を投げられ、一人村に残された。だから世界への復讐をする。俺が満足するまでやり続ける」


 「そうか…お主は復讐者か。だが復讐は復讐しか生まない。それでもわしにはお主を止める権限はない。わしは復讐を量産していたからじゃ。人生の最後に復讐で終わるのはわしにとってはほんの少しの罪の償いにしかならないが、わしは満足できた」


 「そうですか。俺の復讐に付き合って頂きありがとうございました。貴方の来世が幸せになることを願っています」


 「あぁ…やっと逝ける。妻にやっと会える。今逝くよ…サーシャ…」


 女達を残して闇ギルドの当主を蟲達に食わせる。食われているはずの当主は優しく笑っていた。


 女達は支えを失って失神するもの、漏らす、へたりこむもの、笑い出すものがいた。あの宿のお嬢さんは震えていた。


 「よくも…よくも…私達の当主を…」


 「良かったね、これで君も一人だ。一緒だね?」


 宿のお嬢さんは落ちていた短剣を拾って両手で持ち俺の方に歩み寄ってきた。剣の刃がない方で短剣を叩き落とした。すると短剣を探してまた拾った。それを持ち直す前に叩き落とした。力なく床にへたりこんだ。


 「どうしたの?そんなに震え上がって?寒いのかな?」


 「なんで…なんで…主様を殺した!なんで…なんでなの…」


 「なんでだろうね。でもその当主は満足していたじゃないか。俺はあれほど死を受け入れた人を初めて見たよ」


 「なんで…私を置いていった…私には主様しかいなかったのに…」


 「それは俺にはわからない。でも当主は長い人生を生きてきた。だからこそ君には生きてほしかったから、置いていったということじゃないのか?まぁちょっと遅れる程度だから気にすることはないよ、今から逝かせてあげるね?」


 蟲達を徐々に女達に向かわせる。宿のお嬢さんの後ろにいた女達は泣き叫んで慈悲を願う。『死にたくないと懇願』する。宿のお嬢さん以外を蟲達に徐々に食べさせていく。当主とは違い、痛みを伴う。それによりさらに激しく泣き叫ぶ。それでも蟲達は食べ続ける。止まることなき蠢く蟲達の食事は終わり、残されたのは宿のお嬢さんだけだ。


 「君は俺が殺してあげる。最後に言いたい言葉はあるか?」


 「し、死にたくない…」


 「今更生を望んだところで、君の生きる道はない。それに先ほどまの言葉は嘘だったということだな。君は醜いな」


 その言葉と同時に剣を降り下ろした。涙を流しながら死んでいった。その表情は先程の当主とは違い、醜く生に執着していて、気分を害するものだった。


 「本当に醜いよ、君は」


 蟲達に醜い女は残すように指示を出した。蟲達を引き連れて屋敷を出ると、街には煙が上がっていて、そこらじゅうで火事が起きているようだ。蟲に対して火は有効な手段だ。だがこんな街中で使うものではない。


 「そろそろこの街を出るか。もう用はないし、いたところで意味もない」


 それに冒険者ギルドはここ以外にもある。今更行ったところで火の海の中では危険が伴う。蟲達に指示を出して周囲を探索してもらいながら門を目指す。検問なんてされないだろう。


 「どこにいくのかな?お前は…蟲使いは逃がさないぞ」


 後ろから声が聞こえてきた。振り返るとそこには火の蜥蜴を肩に乗せた男がいた。蟲狩りに遭遇してしまったようだ。


 「なんだ、蟲狩りか。なにか用ですか?俺は今からこの街を出るのだが?」


 「いかせるわけねぇだろ!こんなことしておいて逃がすわけないだろ!」


 男をよく見ると至るところに食われた傷と火傷があり、蜥蜴の方は片足を食われていた。


 「こんなこととはなんですか?この火事は俺のせいではないですよ」


 「お前が起こしたようなものだろ!蟲がどれだけ危険なものかわかっているのか!どれだけの人を殺したと思っている!」


 「そんなこと知りませんよ。彼らはただ食事をしただけです。人だって魔物を襲って食べるじゃないですか。それと同じことですよ。それとも貴方は野菜しか食べないのですか?」


 「ふざけたこと言ってんじゃねぇぞ!やれっ!マダラマ!」


 火の蜥蜴はなにもすることなく、彼の肩の上から滑り落ちた。それから体から蛆蟲が数匹出てきて蜥蜴を食べ尽くした。


 「それで?」


 「まっマダラマ!?お、おまえ!よくもマダラマを!」


 「言ったじゃないですか。蟲達は食事をしてるだけだって。蟲達もその蜥蜴おいしかったって言ってましたよ。良かったですね、美味しく食べられて」


 「貴様ぁぁぁあああーーーっ!!」


 彼は腰の剣を抜き取り、斬りかかってきた。振り下ろされた剣に剣を交差させて横に流し、男を斬りつけると剣を手放して後ろに倒れ込んだ。


 「その程度では俺は倒せませんよ?使役した魔物に頼りすぎましたね」


 後ろに振り返り逃げ出そうとしたところを後ろから心臓に剣を突き刺した。男は血を吐いて力なく倒れた。剣を抜き取ってから血をはらってから鞘に納めた。


 「蟲狩りはこれだけだったかな?どうまだ蟲を殺してるやついた?ふむふむ、数人いたのか。多分それは冒険者だな。それにしてもこれだけ街が大きかったらもっといるかと思っていたが、随分少なかったな」


 さて、蟲狩りを殺したから、少しは危険が減ったかな。これなら朝まであの宿で過ごしても大丈夫そうだな。宿に向かいながら状況でも把握するか。


 商店街に行ってみると、夕方の賑やかだったことが嘘のように静けさに包まれていた。蟲達に話を聞くと、ここにいたほとんどの人を食べたらしい。蟲達に指示を出して人を探してもらった。


 家の中や寝てる人がいるらしい。この状況でよく寝れるな。それは置いといて、沢山集まっているところを探してもらった。すると、この街で一番でかい屋敷に集まっているとのことだった。そして屋敷には結界があって通れないそうだ。


 冒険者ギルドを探していると、あったにはあったが、半分ほどすでに焼け落ちていた。うん、これ無理だわ。商店街に戻り、蟲達を集める。結界の中にいて近付けない人以外を食べさせにいかせた。のんびり屋敷に向かってる最中は街の静けさを感じながら歩いていた。


 屋敷につくと門には兵士がいて人を近付けさせないようにしていた。俺に気がついた兵士は指を差しながらなにかを話し合っていた。門まで結界があるのか。結構な大きさなわけだ。これは設置型かな?そんなことを考えていると兵士が話しかけてきた。


 「お前は…蟲使いだな?」


 「そうですけど?どうかしましたか?」


 「これだけのことをやって、よくもそれだけ冷静でいられるな?わかっているのか!街には人が数千人もいたんだぞ!お前はどれだけの人を殺したと思っている!」


 そんなにいたの?全然わからなかったな。じゃあ蟲達は数万は越えているだろうな。進化も繰り返してるだろうから、これは期待できるな。それにしてもこの人うるさいな。


 「はいはい、わかってますよ。でも蟲達はただ食事をしただけですから、罪はありませんよ?俺も多少は殺しましたが、蟲達には美味しく食べてもらいましたから。その人らも満足でしょ?」


 「ふざけるぐぎゃっ!?」


 近くにいた蟲からは初級魔法の土の塊を顔面に飛ばした。すると言葉の途中で倒れ込んだ。


 「ちょっと静かにしてくださいよ。今は夜中なんですよ?」


 「おがっおがえ…」


 「大丈夫か!?くそっ仲間がいたか!一体どこから攻撃が?」


 「なんだか相手にしてるのもめんどくさいから、さっさとケリつけるか」


 上空にいる蟲達から中級魔法の火の玉を屋敷に放った。すると屋敷からは火の手が上がり、屋敷から出てきた数人が辺りを見回し、数人が火に向けて水魔法を行使していた。今度は別方向から火の玉を3つ放つと何人か巻き込まれていた。


 「貴様ぁ!何をした!」


 「なにもしてませんよ?ほら?俺はここにただ立ってるだけですよ?裏切り者でも出たんじゃないですか?」


 火の手から逃げるために数十人の人が屋敷から出てきた。そこに向けて中級魔法の火の玉を放つと、さすがは冒険者といったところか、瞬時に水魔法を発動して身を守った。その間にも屋敷は燃え上がり、廃墟と化していった。


 「どうかしましたか?皆さん屋敷から出てきて総出でお迎えですか?」


 「お前がこれをやったのか!許さねぇ…」


 「ラナをあいつが…」


 「蟲使い…許せねぇ…よくもみんなを…」


 ん?あれは設置型の結界か?なんだか小さくなったみたいだな。さっきの魔法で削られたみたいだな。数十人が集まってるところ以外には蟲が入れるようになってるな。うーん、冒険者が周りを警戒してて魔法を打てる隙間がないな。


 「皆さん今日はもう夜遅いのですから、寝たらどうですか?」


 「ふざけたこと言うじゃねぇか!お主は絶対に許さねぇぞ!」


 あの中では一際ご高齢のおじさんが怒鳴り付けてきた。周りの冒険者達も畏縮してるほどだ。あの人がこの街の領主なのだろう。すごい威圧だ。レベルが上がってなかったら、跪いていたところだ。今ちらっと確認したら43レベルになっていた。


 魔物使いのレベルは6になっていて、新しい能力は魔物収納だ。これは蟲を体に収納することができるようだ。実際に入れるのではなく、入れた魔物の紋章が体に浮かび上がるようだ。周りにいた蟲を数百匹体に収納すると、手に黒い模様が沢山浮かび上がった。


 そんなことを考えているとおじさんに「話を聞け」と怒られてしまった。


 「それで?許さなかったらどうするのですか?俺を殺しますか?まぁ俺を殺したところで蟲は制御を失ってこの街以外に餌を探しにいくので、意味はないですよ?」


 「くっ…それを言われては対抗できん…だが、お主を殺さなければわしの気が収まらん…」


 「そうですか、さすがに闇ギルドの当主のように死を受け入れたりはしないか。まぁ許さないならまずその結界から出てきてくださいよ」


 「結界を出たら蟲に食われるわ!何?闇ギルドの当主だと!?」


 「先程闇ギルドの本部を潰してきたばかりですよ。お礼に魔法の鞄を頂きました」


 「そうか…ロウゼフは死んだか…」


 あの爺さんロウゼフって言うんだ。親しかったのかな?


 「それで?貴方はどうしますか?今ここで俺に殺されるか、蟲に食べられるか、2択ですよ?おすすめは俺に殺されることですね」


 「なにもせずに死ぬわけねぇだろ!お主を殺して生き残る!」


 冒険者達は周りに魔法を放ち、蟲に牽制し、領主と冒険者は結界から出てきて剣で斬りかかってきた。魔法ではないのはどこからか放たれるかわからない魔法を警戒してのことだ。


 でもそれは無意味の配慮に終わる。結界のすぐそばには蟲が待機していて、その蟲に背中を見せた瞬間に初級魔法の火の玉を放った。結界にいた冒険者は驚愕した。誰もいないところから魔法が放たれたのだ。無理はない。


 背中に撃たれた魔法によって冒険者と領主は吹き飛んだ。俺までの距離はあと数メートルのところだが、背中に受けた魔法で冒険者は意識を手放し、領主は意志の力で気力を保っていた。


 「言ったでしょ?意味のないことだって」


 無抵抗のまま冒険者は蟲に貪られて食い尽くされた。領主は俺を睨み付けて、結界にいた冒険者達はなにもすることができず、ただ立ち尽くしていた。


 「最後は貴方にします。他のものの死を味わってください」


 領主の手足に魔法の鞄から取り出した剣を突き刺して身動きを取れなくする。領主は泣きながら喚き散らしていたが、それを無視して結界にいる冒険者達に歩み寄る。


 結界にいた冒険者は全員こちらを睨み付けていた。周りへの警戒はなくなり、全てこちらに向いていて隙だらけになった。学習しないとね?俺がいる方向ではない3方向から初級魔法の火の玉を結界内に放つと、立っているのは7人だけになり、どこかにあった結界装置は先程の魔法で燃えていき、結界が解かれた。


 初級魔法の水の玉で火を消して蟲達に立っている者達の手足を食べさせた。立っている者は俺以外いなくなった。火傷で倒れているものと手足を食われた者を順番に斬り殺していく。どれだけ生にしがみつこうと懇願されても、殺し続けた。先程まで泣きわめいていた領主は静かになった。


 残ったのは今か今かとご飯を待ち続ける蟲達と俺と領主だけとなった。領主は力無き目で睨み付けてきたが、怒鳴り付けられたときの威圧はなくなっていた。


 「貴方で最後だ。言いたいことはあるか?」


 「ゆる…さ…ねぇ…ぜっ…たい…だ…」


 「そうですか。来世で会ったら1発だけ殴らせてあげますよ」


 睨み付けてきた領主の心臓に剣を突き刺して止めを差した。心臓に突き刺した剣だけ回収した。他はそのままにしておいた。蟲達から食べたいと言われたが、止めておいた。この街に誰か来たときに誰もいないんじゃ、かわいそうだと思ったからだ。


 蟲達に体に入るように指示を出すと、数えきれないほどの闇が街中から集まり、体に入っていった。数えきれない紋章を身体中に刻まれ、体が真っ黒になった。

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