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神様の涙2  作者: 美黒
2 歩み寄る日常
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終 雨の神様の日記

 自分がもし、人間じゃないとしたら。

 これを読んでいるあなたは、どんな気持ちで、どんな生活をしていくのでしょう。

 私と言えば、正直、人間とはかけ離れた存在で、何もかもが違うと思っていました。

 けれど、その考え方を根本的な所から覆してくれたある人によって、私は誰よりも人間らしく生活をしていると言えます。

 これは、身元どころか正体も不明の、何者でもない私が、ただ、記録のために語るお話です。

 私を救ってくれた彼と、その周りの人たちがどんな“その後”を送っていくのか。

 それを、私のつたない文章で綴っていきたいと思います。


 思えば、彼の親友二人である友喜さんと幸弘さんには、直接関わっていないにしろ、とてもお世話になりました。私が出会うずっと前から、彼を支え、ともすれば友情という言葉が逃げ出してしまうほど、三人の絆はとても固かったのです。

 初めて二人に会った時、ああ、これが彼を支えてくれた大切な存在なのだとある種の感動を覚えたものです。

 あれからかなりの時間が経ちますが、彼と親友二人の関係性は未だ変わらず、助け合って生きているようです。

 友喜さんは運動神経をいかして、意外にも建築関係のお仕事へ。現場に行くのがとても楽しいと以前私に語ってくださいました。見た目もさることながら、女の子からのモテっぷりは相変わらずのようです。赤瀬さんは少し、不満そうでしたけれど、例えば彼がモテモテであるとしたら、今度は私が激しい嫉妬に駆られてしまうので、それはそれでいいと思うのです。

 幸弘さんは植物好きがついに仕事になったという形でした。骨太な体系と性格からかけ離れた花屋へと就職し、ここ最近では独自の流通ルートを開発して自分のお店を開きました。お部屋の花は、全てそこで買ったものです。彼も呆れつつ、仕事帰りに何かと立ち寄っては幸弘さんに愚痴を引っかけているようで、そこは私も申し訳ないので謝っておきました。今やその花屋の従業員さん達はみんな私達二人を良く知ってくださっています。

 彼は、友喜さんと幸弘さんには感謝してもしきれないと言っていたことがあります。毎度毎度助けられてばかりだと。

 しかし、それはどうでしょうか。

 二人からしたら、彼の存在なくしては今の自分はないとこっそり聞いた時、この人たちは本当に、お互いをかげがえのない存在として見ているのだなあとしみじみしたものです。三人は過去に何か大きなトラブルを抱えていたようで、それを彼の存在によって終着を得たとか。さすが、私の大好きな人です。ちょっとだけ、皆に自慢してあげたくなりました。

 

 そう言えば、時折連絡をくれる彼のご両親は、あんな態度を取りつつもやはり心配をかけているようです。もう二度と会わないと思っていた、と彼は何度も言いながら、それでも自ら手土産を持って会いに行くあたり、関係は昔よりも良好になったと言えるでしょう。特に、最近は美代子さんの心配が目に見えているとか。彼女を早く紹介しなさいと急かされているので、今度一緒に会いに行きましょうと誘われてしまいました。おめかししていかなければ、と今からドキドキです。

 雅彦さんと美代子さんの愛した息子。そして、彼の永遠のお兄さんである春さんのお墓参りは、最近私も一緒に行かせてもらっています。

 春さんのお墓に行くたびに、彼は最近の出来事をにこにこしながら語ります。そして、最後に必ずこういうのです。またね、兄さん、と。

 私もお墓に手を合わせて、何度もよろしくお願いしますと祈っていました。来るたびに、お墓の後ろでふわふわの頭が揺れている気がして、だけど私は何も伝えませんでした。出来る事なら、生きている時に、彼を挟んで三人で会いたかったものです。


 私を大きく変えた恩田さんは、あのアパートから出て行って、今は会社員を務めているようです。彼氏を作って、それなりに楽しい生活をしているようですが、たまに嫌な事があると私たちの家に飛び込んできて、お酒を飲みながら愚痴を始めます。お酒が入ると口が回るようで、面倒見の良い彼がずるずると彼女に付き合うのを見ていると、少しだけ嫉妬心が芽生えてしまうのは内緒です。

 

 天城さんとは未だに繋がりが深くて、たまに彼に内緒でこっそり家を訪ねます。彼は呆れつつも中に入れてくれるし、根が優しいのか、お茶やお菓子をくださいます。野心家であり、企業をいくつも抱える敏腕の彼が、あの神社の跡地を未だにほったらかしなのが疑問で、何度も理由を聞いたのですが、何も教えてくれませんでした。曰く、いずれ分かる、とのことでした。私の家は、もう彼の隣だというのに。


 川上さんと初めて会った時、なぜか彼が鼻で笑われていました。それに怒って、しばらく二人で軽い言い合いをしていたのですが、そのやり取りが何よりも仲の良い証であるように思えて、私は微笑ましく見ていました。二人は本当に信頼し合っているように見えましたから。

 川上さんは、口は悪いけれど、優しさがにじみ出ていて、とても面白い方でした。彼に内緒で和菓子を貰ったのも数えきれません。彼の将来を支えてくれた、川上さんに私もいつかお返しがしたい。どうやってお返しをするか、今の悩みはそれです。

 

 そして、彼はといえば。

 大学卒業後、川上さんに見込まれて、せせらぎを継ぐことになりました。

 まさかの進路に、私よりも友喜さん達が驚いていたようですけれど、彼の意思は固かったのです。川上さんの家には子供は居ないので、このままでは彼の死と同時に潰れてしまうそうで、そんな時に安心して話が出来る(ここが重要みたいです)男性が現れたので、是非とも任せたいと。

 最初は四苦八苦していて、和菓子なんてとても形にならないと彼の愚痴を聞いていましたが、最近では川上さんに負けないような素敵で美味しいお菓子を私に作ってくださいます。それだけで、私はもう十分です。

 ネットの事業にもその若さを使って力を入れて、最近ではせせらぎの売り上げも右肩上がりなのだとか。夕食を川上さんご夫婦と四人で囲ませてもらう事も少なくないので、本当にお世話になりっぱなしです。


 私は、やはり不確定な存在です。

 彼の恋人になってからというものの、彼が存在理由となり、私は彼のために必死に支えようと活発的になりました。相変わらず彼の願いによって存在できるわけなのですから、彼に助けられているといっても過言ではありません。

 一度、彼にこう聞いたことがあります。

 本当に、私と一生を共にしてしまっていいのか、と。

 そうしたら、彼は当たり前のようにこういうんです。

――むしろそれ以外の未来が見えませんよ。おこがましいかもしれませんけど、雨宮さんは僕の奥さんです。

 なんて。

 そう言われたら、私は彼に惚れ切っていますから、一生を共にしないわけにはいきません。

 私は、彼が死ぬまで。

 いいえ。

 死んでも。

 彼だけを思い、彼だけのために存在し続けて行こうと思います。

 それが、私の願いです。


 これにて、私の拙い記録は終わりです。

 これより後に、彼がまさかの神社復興にかけての騒動だとか、親友二人のトラブルだとか、せせらぎのお客さん騒動だとか、様々な事が起こります。

 しかし、それも、彼の、不思議な魅力と力によって事なきを得るのですから、安心ですね。

 それでは皆さん。

 またどこかで会う日まで。


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