第4話 『英雄』と『鬼神』
――さい、マスター。
「ふざけるなよっ!!
なんで……なんでお前が犠牲に!!」
「気になさらないで下さい、マスター。
こればかりは既に決まっていたことですから。」
「でもっ!!」
どうして……なんで俺じゃなくて彼女なんだよ!!
「……マスター。以前の約束事、覚えていますか?」
「……約……束?」
「ええ。」
……わかる筈もない。だって俺は、彼女との約束なんていらないくらいに多く交わしているから。
「……まぁ、マスターですからそう言うと思っていました。」
「……っ!」
「何があっても、何が起こっても絶対に二人でこの世界を守りましょう。
……思い出していただけましたか?」
「……ああ。」
悔しい。
「だから、例え私達が別れる事があろうともこの……誓いは……」
「……わかってる。」
力が……欲しい。
「なら……いいのです。」
「……………」
無力な自分が……悔しい。
「……マスター。
ひとつだけ……ひとつだけ、願いがあります。」
そんな俺の心を断ち切るかのように……彼女の声が響いた。
「あの時の……続きを、お願いしても?」
……昨日の……最後の夜の……
「……ああ。」
それが彼女の望みなら。
……たとえ、意味のない望みがあるとしても。
「……――――――――――――――――――。」
「……ありがとうございます、マスター。それと……」
気づくと彼女の半身は機能を停止している。
力を……使いすぎた為に。
「行くな、――――!!」
俺はただ叫び続ける。
叶わぬ願いと理解をしながらも……その名前を呼び続ける。
だけど、そんな思いも既に意味はなく……彼女の全てがなくなるその瞬間、声が聞こえた。
――さようなら――
「雪南っ!!」
「わっ!?」
…………夢……か?
「お……おはよう、言原君。」
……でも嫌に現実性があって、それに……
「それにしても、起きていきなり彼女の名前を叫ぶなんて……そんなに彼女が恋しかったわけ?」
アレは……雪南なのか?
話し方こそは違ったが、声や雰囲気が……
「……おーい?
言原くーん?
きょーすけー?」
「……あぁ、またこれか。私がやろう、凛。」
「氷室さん?」
それに、雪南と話していたあの男は……?
「起きろ、恭介っ!!」
「っ!?」
雪南の声が響いた。ただし今回は夢ではなく……
「……起きたか?」
「……起きたけど……お前……」
「なんだ、恭介?」
「耳元で叫ぶやつがいるかっ、バカ!!」
俺の鼓膜を破るつもりか、雪南のやつ!!
……なーんて思っていたら雪南が近づいてきて、
「だったら周りに集中しろ!!!!」
さっきよりさらに近く、大きな声で怒鳴って……俺は意識がとびそうになる。
「……え〜っと……そろそろいいかな、言原君に氷室さん……」
「……え?」
その声で俺は我を取り戻す。確かこいつは……
「凛……!!」
その姿を見て、俺は以前の事を思い出してすぐに身構える。
なんでこいつが……!?
「……恭介、落ち着け。今、彼女は敵ではない。」
「……え?」
雪南の言葉を疑う。
……が、確かに冷静に考えてみると雪南と凛が仲良く(?)隣同士に立っているのはおかしい。
「どういう事だ?」
俺が問いかけると今度は別の人が階段から降りてきた。
「……それは私が説明させてもらおう。」
「お前は……あの時の……!?」
「自己紹介がまだだったな。私の名前はジーン・ルーヴェンス。凛とは師弟の関係で、人種的にはロウに位置づけられる。」
俺の記憶が正しければ、このジーンという女性は凛との戦いの途中に邪魔をしたやつだ。
「……で?
どういう事だジーンさんとやらよ。
俺に詳しく、それにわかりやすく説明してくれ。」
「そのつもりだが……いくつか確認をさせてもらおう。」
「……なんの確認だ?」
俺が促すとジーンは少し間を入れて、質問をする。
「……お前、まだ自分で力を扱えないのか?」
「……力?」
クエスチョンマークを頭に浮かべている俺に、凛がつけたしをする。
「私が使ったような力よ。一般的に魔術を行使する力だから、魔力と呼ばれているわ。」
あぁ……あの炎の槍みたいなやつか。
「そんなもの、全く使えねぇぞ。」
「わかった。
……では、身体能力が上昇したと感じることは?」
……さっきより余計分かりづらいぞ?
「私が貴様と“リアン”を行なった時の状態だ。
おそらくあの時の行動を常時できるか、という意味だろう。もちろん“リアン”をせずに、だ。」
リアン……?
「……つまりその、リアンってのはあのプロテクターみたいなのをつけた状態の事か?」
「あぁ、そうだ。」
あの状態の速さとかを雪南と……リアンってのをなしでできるかって事か?
「そんなの、絶対に無理だろ。あんな異常な速度出せるわけがない。」
それを聞くとジーンは軽く落ち込んだような表情をした。
いや、無理なものは無理だから理解してくれよ。
「……わかった。
では最後に聞かせろ。
恭介……お前、戦う意志はあるのか?」
「戦う……意志?」
聞き返すと、三人ともそれぞれ詳しく伝える。
「これから先、あなたはただ平和を享受するか、戦い続ける道のどちらかを選ぶか聞いているのよ。」
「後者を選ぶならば、恭介を鍛え生き残る手助けはしよう。ただしこちらは死の危険が伴う。
前者を選ぶなら……」
「その場合は、私との契約を破棄してもらう。
戦う意志がないのならば貴様といる理由などは未塵も存在しないからな。」
……どうでもいいが、お前らって案外優しいんだな。しかも息もぴったりだしよ。
「……まぁそういう事だがどうするんだ、恭介。」
えっと……あぁ、戦う意志があるかないかだっけ?
はっきり言って……俺はそんなのはどっちでもいい。
戦えと言われたら戦うし、やめろと言われたらやらないだけだ。
……はぁ……自分でいうのもなんだが、典型的なやる気0の人間だな、俺は。
「俺は……」
もし、条件がないならば今の俺は前者を選ぶかな。(昔の俺は後者だろう)
けど、前者だったら雪南と別れるって意味だろ……
だったら答えは決まってるさ。
「戦う。」
「……それは、本心からなのか?」
ジーン、それを聞くか?
「それは愚問だな。
俺はまだ雪南とは別れたくはないから、何があっても戦い続けるさ。」
「き、恭介…!?」
あ、なんか雪南、顔が少し赤くなってる。
体調でも悪かったのか?
「どーした雪南?
風邪でもひいていたのか?」
「い、いや、そういうわけでは……」
つーか、精霊って風邪とかひくのかな……?
「じゃあなんでそんな風になってるんだ?」
「いや……だから……」
なんて雪南に質問を続けていたら凛が間に入ってきた。
「はいはいそこまでー!
ほら、やめなさいよ恭介。雪南さん、困ってるでしょ?」
「え?
……そうなのか。それは悪かったな、雪南。」
「あ……あぁ……」
「……そろそろ、話を戻していいか?」
「え?
……あぁ、いいよ。」
そういえば今はジーンと話していたんだったな。
とりあえず赤い雪南は放っておくか。
「では恭介は戦うということか。ならば、話すべき事があるが、聞くか?」
「聞くしかないんだろ。話してくれ。」
「わかった。少々長くなるが、我慢してくれ。」
そうしてジーンは語り始めた。
「まず、この世界には4つの人種がいるが……それは知っているな?」
「ゼロ、ロウ、ヨウ、それとシンだろ?」
「あぁ。この内表の世界で暮らしているのがゼロ。他の人種は全員裏で暮らしている。」
「マフィアや堅気じゃなくって、『歴史上で』という意味よ。」
「世界中の偉人には、ほとんどはゼロだけということだ。」
「ほとんど?」
「ああ、ほとんどだ。
だからごく僅かに私達もいる。
例えば……恭介、つい最近起きた戦争での『英雄』は知っているか?」
「『英雄』っていうと……アイアスのことか?
あの、イギリスとアメリカの戦争の。」
英雄アイアス・ヴィクトール。
イギリスで生まれ育ち、去年まで行われていた第二次米英戦争で多大な戦果をあげたイギリスの英雄。
この戦争でアイアスはたった一本のサーベルで戦い続けたという伝説を保持している。
ちなみに学者や政治家はアイアスの伝説を否定しているが、確かにあの時の俺の動きならアイアスの伝説は事実かもしれない。
……ちなみに(ニュースや新聞に全く興味をもたない)俺が知っているのは、ちょうどこの時期に高校受験があったからである。
「結論から言うと、彼はロウだ。しかもとびきりに強い、な。」
「……ところで、アイアスとあんたじゃどっちが強いんだ?
その口ぶりからすると、やっぱり……」
ジーンは肩をすくめて続ける。
「お前の予想通りだ。
アイアスにはとてもじゃないが勝てる自信はない。」
「なるほどね……」
「……話を戻すけど、現代にアイアスの他にも名を残している人がいるのよ。」
「名を、『鬼神』イザーク。イザーク・トラジェディ。こいつは英雄ではなく、殺人犯だ。」
ジーンの調べたところによると、イザークはアメリカの人間で陸軍の少佐に準ずる人物だったらしい。
彼は米英戦争中に一般市民を殺したことにより、同じ陸軍の中将と口論する。
その結果、中将を手にかけて軍を脱退。
だが中将を殺した罪は重く、その場での抹殺が命じられたがイザーク少佐はそのことごとくを斬り捨て軍を壊滅状態においやった。
現在はイギリスの監獄に無期限懲役で収容中。
「私はイザークと一度面会をしたが、アイアスと同程度の強さを感じた。」
「恐ろしいな、そのイザークってやつは……」
ジーンは強さはアイアスと同じ程度と言ったが、それは戦闘能力でのことだろう。
だが、おそらくそのイザークって奴は人間を殺すことに躊躇はない。
だからロウの中では最強なんじゃないか?
「なるほどね……
でもそんな話を俺にして一体何の意味があるんだ?
アイアスとイザークには喧嘩を売るなとでも言いたいのか?」
そうジーンに聞いたらここでやっと雪南が復活を果たした。
「ジーンと凛の情報によると、アイアスとイザーク、この二人が最近行方不明であるそうだ。」
「……え?」
今日だけで俺は何回このセリフを言っただろうか。
それほどまでにこいつらの話には驚かされている。
「……つまり、その二人は誰かに連れ去られたということか?」
「その考え方が吉ね。」
と、凛が。
そう聞いて俺はジーンと凛に問いかける。
「……なら、凶は?」
「WSOに肩入れしている、といったところだ。」
「WSO?」
「世界救済機構。この地球の為に害なす者を滅ぼし、世界を救済しようと思っている者達の集まりだ。」
「備考として、WSOに所属している人は全員ロウ、ヨウ、またはシンよ。」
ジーンと凛の話によると、アイアスとイザークがそのWSOに所属していると厄介と言うことらしい。
……だけど俺には二人の考えが理解できない。
「世界を救おうとする集団にさらに強い戦力となる人物が入ったなら、いいことじゃないのか?」
「……その世界を救う方法が、人類の掃討だと知ってもか?」
……………今、こいつはなんて言った?
人類の……掃討?
「……は?
いやいや、それ矛盾しているじゃねぇか。」
「矛盾してはいないわよ。人が環境を壊す。環境が壊されれば地球上の数多くの生命体が危機にさらされる。
だから私達人類が『スケープ・ゴート』になれば他の生命が守られる。生命体が星を作るなら、これは矛盾はしていないことになる。」
……なるほどな。確かにそれは正論と言える。
でも……なんか納得いかねぇ。
「その……WSOには『共生』って考え方はねぇのかよ?」
「あるならば、私達も奴らと戦う事など望みはしない。」
激突は必至っつーわけか。けどまぁ……確かにそいつらの思考には賛同しかねるな。
「……さて、私も恭介も話を一通り聞いた訳だが貴様達に捕らわれの身となっている私達に何を要求するつもりだ?
まぁ大体見当はついているつもりだが。」
そういやそうだったな。縛られたり拘束されている訳じゃないから、すっかり忘れてた。
……つーか要求なんてあるのかよ?
こいつら俺と雪南に何を要求する気だ?
「察しがついているならば話が早い。」
いや、俺は全然察していないのですが。
「二人とも、私達に協力しなさい。わかっているとは思うけど否定する権利はないから。」
……そう言われるとこう質問したくなる。
「嫌だと言ったら?」
「殺してあげる♪」
……俺は背筋に冷や汗が伝うのを感じる。いや、だって顔とセリフがあってねぇし(汗)
なんかあの時の火の槍みたいなのもだしてるし、しかもなんだよあの♪マークは!?
「はぁ……とりあえず時間をくれないか?
今までに知った全部の情報を整理するのと、この要求に対する答えを考える時間が欲しい。」
「……氷室さんは?」
「恭介がそう考えるならば、私はそれに同意するのみだ。
それに恭介は私の思いを汲み取っているようだから、何も問題ない。」
いつの間に考えるいたのか、雪南が俺の隣でそう答えた。
「……どうしますか、先生。」
「……1日猶予をやろう。ただし条件がある。」
そう言いながら、ジーンはポケットから白いリングを俺と雪南に投げつけた。
「コレは?」
「魔力の発動、身体能力の強化を封印する道具だ。解除するには私の魔力を必要とする。」
裏切らないようにする為の保険っつー訳か。でもコレをつけたままなら今までの日常に戻る事も……
「ちなみに、それは今から24時間経過すると自動的に爆発する仕組みになっているので、腕を失いたくないならば早めに来ることを勧める。」
……出来ないようだ。全く、無駄に用意がよすぎて嫌になるぜ……
「では今日はもう家に帰れ。時間も時間だし、両親も心配しているだろう。」
「そうさせてもら……」
……そういや聞き忘れてた事があった。
「……なぁ……ところでここはどこだよ?
それと、今日は何日で、今の時間は?」
「美尾月市南東部にある一軒家だ。
今日は1月10日のちょうど夜7時といったところか。」
……………やれやれだ。今夜は千春に殺されることは確定事項か。
扉が開く音がした。
足音が響き渡る。
そうしてそのお方はこの部屋の最も奥の椅子に席につく。
「アイアスとイザークはまだか?」
「先程部下に呼びに行かせました。おそらくはもうつく頃かと。」
盟主の問いかけに側近の一人が答える。その答えに盟主はやや眉をひそめられた。
今日はいつものWSOの定例会議ではなく、緊急会議が行われる。
何でも最後の一人に関する重大な情報が手に入ったとの事。
それ故に新参者であるある二人が遅れるのも無理はないが、事前に耳には届いた筈なのだが……
「ベロニカ、あの二人は信頼できるのか?」
気づけば盟主が私に話しかけておられた。
私は動揺を見せぬように対応をとる。
「実力は世間一般で『英雄』『鬼神』と呼ばれている事もあり、私と比べてもさほど差違は見受けられません。
ですが知名度が高いせいもあり、表立って行動するには厳しいかと思われます。」
「そうか。それならばちょうどいい。」
「それはどういった……?」
そう言った直後、扉が開き彼らが顔を出した。
「初めまして、かな。『英雄』アイアス・ヴィクトールに『鬼神』イザーク・トラジェディ。
私がWSOの盟主だ。本日は急な会議であった為、誠に申し訳ない。」
「こちらこそ遅れてすまなかった。改めて自己紹介をさせてもらうが、私はアイアス・ヴィクトールと言う。以後よろしく頼む。」
「……俺はイザーク・トラジェディだ。牢から解放してくれた事には感謝をしてやる。
単刀直入に聞くが、この俺に何をしてほしいのか説明しろ。」
私はイザークの言動にやや怒りをあらわにする。どうやら盟主の側近達も同様らしい。
「貴様!!
我らが盟主に向かってなんたる……」
「いや、いいよ。むしろこれくらいが『鬼神』に相応しい。
……ではこちらも単刀直入に伝えよう。
私たちはとある一つの大きな目的の為に動いている。
その為に必要なものがあるのだが、それをここにいるベロニカと共に集めてもらいたい。」
「……何が必要だ?
言ってみろ。」
イザークの問いに盟主は笑顔で答えを返す。
「それはとある7人の…………魂だ。」
こんにちは〜、毎度おなじみ金影でーすm(_ _)m と言う訳でこの小説もやっと本編に入ったような感じです。まぁ今まではプロローグ的なものと言うことで(笑) ではプロローグも終了しましたので本日は製作秘話(?)のようなものを…… 私はキャラクターの名前ははっきり言うと直感で決めています。 第六感、インスピレーションです(笑) おかげで困ることも多々……(汗) あ、でも主人公やヒロインは違いますよ? 物語のメイン人物ぐらいは考えてあります♪ では、本日はこれくらいでお暇させていただきます^^ それではまた次回に(^^)ノシ