表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/37

第六話

 本宅の二階にある、広いリビング。家具はどれも外国製の高級品ばかりで、ソファの金色の手すりや金でできているという熊の彫刻なんか私は最悪に悪趣味だと思うのだけれど、あの男は気に入っているみたいだ。

 私と志乃ちゃんは、そんなソファに並んで座っていた。

 こち、こち、と鳩時計が時間を刻む音が、やけに大きく響きわたっている。

「……ねえ、弥生」

「なに?」

 私は両膝に手をやって、視線を前に据えたまま答える。壁には、虎の描かれた自然画。

 そんな私に、志乃ちゃんが少し躊躇して息を吸う気配がした。

「ほんとに、やるの?」

「うん」

「ほんとにほんとに、やるの?」

「やるよ」

 志乃ちゃんは、重たそうに息を吐いた。

「面倒なことにならないかな」

「面倒だと思うよ。あの男のことだし、めちゃくちゃ面倒。でもさ」

 私は、白地に黒い斑点の天井を見上げた。

「やるしか、ないじゃん」

 志乃ちゃんが私の言葉に対して、どう反応したかはわからない。

 ただ、少しだけ、もぞりと動く気配がした。

 視線は動かさないまま。志乃ちゃんの手を、そっと握った。

 すると、きゅっと握り返してくる。

 だいじょうぶ。

 かつて志乃ちゃんに助けてもらったみたいに。

 今度は、私が志乃ちゃんを助けてみせる――。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ