第十五話
どれくらい、時間が経ったのだろう。
星が少し動いているのは、気のせいだろうか。
武はふいに、手を差し伸べてきた。私を優しく立たせると――私の髪のりぼんを、しゅるりとほどいた。
「……武?」
「これでいい」
その言葉は、どちらかというとひとりごとに近いと思った。
自分の手に、私のりぼんを巻きつける。
そして、私の髪には――。
武は先ほど私にプレゼントしたばかりの箱をそっと持ち上げて、そのなかから真新しいりぼんを取り出し、髪に巻きつける。
「やよちゃん」
武の声とひとみは、いつになく真剣だった。
「これは俺たちの約束だ。りぼんの、約束だ。俺たちはふたりとも」
武は、言う。
「殺そう」
「……うん」
私のそのあいづちは、けっして肯定ではなかったけれど。
でもいまは、うん、というほかなかった。
「屑は処分。ごみは焼却。……そうだろ?」
「……うん」
「やよちゃん、俺は誓うよ。この夜に。きょうの星に。そしてなにより」
武はかすかに笑うと、私の髪を撫でた。
「りぼんに、誓う」
その言葉の、受け止めかたを。
私はまだ、知らない――。
満点の星空は、どうやらなにも聴かなかったふりを決め込むみたいだった。