二人の龍使い 5
「………あの女の子、泣いてた?……」
シェルーが去った後、最初に言葉を発したのはヒナだった。
シェルーの放った言葉と表情になぜか切なさを感じながらジュンに問い掛ける。
「あの子は…4DSって集団にとっては…宝珠を集めることは許せないの?どうして??」
その問いは虚しく宙を舞う。
ジュンも、リュウも固く口を閉ざし、ヒナの言葉を待っている。
「宝珠は…すべてのヤツらにとって良いものではないってわけだろ?今までのことを考えると。」
ヒナの言葉を受け、こうは静かにリュウに向けて話し掛ける。
リュウは少し間を置いた後、静かに話し出した。
「その昔。宝珠によって起こされた争いがあったらしい。
光暗戦争というものだ。
助け合い暮らしていたはずの宝珠と人とが互いに敵となり闘った。その戦争で人類のほとんどと人に組した龍族が死んだという遠い昔の争いだ。
詳しくはわからないがそれ以来、宝珠は封印され時たま姿を現したかと思うと世界に危害を与える。
4DSも最近出てきた集団だが昔からその類いのものに世は脅かされている。」
こうはこの世界に来たばかりのころに出会った宝珠を集めろと諭して消えた存在を思い出しながら呟いた。。
「宝珠…。敵か味方か、そんなよくわかんねーものを4DSって危ない奴からも逃げながら集めろってか。とんだ「すべきこと」とやらだな。」
こうは真剣な顔でリュウの話を聞き考え込んでいるヒナを横目で見ながら続けた。
「くだらねー。昔の戦争にまだこだわってるってやけか。」
「私たちも知らないのよ。昔からの事だから詳しくは…悔しいけど何も…。」
たまらず、ジュンも誰にともなく叫んだ。しかし、気持ちが先走ったせいか、すぐに口ごもってしまう。
「…どうして?…。」
黙り込んでいたヒナがふいに言葉を漏らす。
「知りたいよ…。もっとこの世界のこと。宝珠は私を助けてくれた。宝珠は本当に危険なものなの?4DSはどうして宝珠を嫌うの…?どうして?」
答えにならない思いをそのまま声に出すと、ヒナは何かを決意したかのようにキリっと顔を上げた。
「集めるよ。私。この世界のこと、宝珠のこと、あの子達のこと、もっと知りたい。」