二人の龍使い 4
「嫌だって……お前にそんな命を張る義理はないだろ!」
リュウはヒナの返事に信じられないというように叫んだ。
「大丈夫…。」
一瞬、ヒナの視線が頭上を指す。
そのヒナの表情に何かを感じた。
…………!!
リュウはヒナの表情に小さく呟く。
「そんなちっぽけな卵1つに何言ってんの…バカみたい…!イイ気になってんじゃないわよ!!」
シェルーの絞り出すような声と共に黒龍は爪を上げたまま更に空高く飛び上がった。
もはやヒナの目からは地上の3人が見えないくらいだった。
「最後のチャンスよ…。そいつを手から離しなさい。」
冷淡な凍るような声をヒナに浴びせるとシェルーは黒龍の背の上に上りヒナを見下ろした。
チャンス…!!
「頼んだわよ!リュウっ!!」
ヒナは叫ぶと共に黒龍の爪を蹴りあげ自由を得ると同時に空へと飛び出した。
「なっ!」
「ヒナ!」
呆気に取られるシェルーの隙をつき、リュウはクロスを飛び笛のように鳴らしながら放りあげた。
「キャー!!」
悲鳴をあげながら地面にまっ逆さまに落ちていくヒナに、上空高くから凄まじい速さで飛んできた大きな影が覆い被さった。
影は、先程リュウがその腕から放した鳥によく似た、その鳥の何倍もの巨大な大きな翼を持つ鳥獣だった。
ボスッ!!!
間一髪、ヒナは抱えた卵と共にその大きな翼の上、柔らかな羽毛に包まれ事なきを得ていた。
「ヒナ!」
「良かった…!」
固唾を飲み、見守っていたこうとジュンは安心したようにヒナを見上げている。
「……よくわかったな、俺の仲間だと。」
リュウは放ったクロスを首にかけ直し、ゆっくりと地上に降りてくる巨大な鳥に手を掲げながらヒナを見た。
「さっき放してた鳥と一緒にこのでっかい鳥がずっと真上を飛んで回ってたの。だからもしかしたらって。」
その翼から地上にゆっくり降りたヒナはその場にへたりこむ。
守りきった卵はまだその手に抱えられていた。
「こ…恐かった…」
「バカヒナ!心配かけんなよ!」
すぐにこうとジュンがヒナのもとに駆け寄り、ヒナの無事を確認する。
「なんで…自分からそんな物のために……」
シェルーの言葉にヒナは訂正をいれるように言葉を重ねた。
「物じゃないわよ。ちゃんと生きてる大事な命だから簡単に落とすなんてできるわけないでしょ。」
ヒナの言葉に沈黙するシェルーは戦意は失っているようだがまだ何をするかわからない敵の姿にこう達は警戒の構えをとる。
「ヒナは戻ってきたけど、あの大きな龍が相手じゃつらいな。」
「いや、大丈夫だ。」
リュウはこうの言葉を制すと、シェルーを見上げた。
「こいつの鳴き声は龍の感覚を鈍らす。龍にとって唯一の天敵。退くしかないなシェルー。」
「……っ」
声を出せずに未だ黒龍の背に立ち尽くしているシェルーにヒナは問い掛けた。
「あなたはなんで…宝珠が嫌いなの?」
「私は…この世界に天罰を与える4DSよ!!宝珠も龍も人間も大っ嫌い!私達を勝手に悪とした世界も全部っ!!」
吐き出すように、苦しそうに叫ぶとシェルーは黒龍に腕をまわす。
ヒナはシェルーの表情はよく見えなかったが悲しげにも聞こえる言葉に胸を締め付けられるような感覚を感じた。
「絶対…許さないから…!」
見上げる四人を背にシェルーと黒龍はその翼で風を巻き起こし飛び立っていった。