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天の搭 2

ギィィ…



頂上は金属製の大きな扉が何本もの背の高い柱に囲まれ行く手を阻んでいた。

観音開きになっている錆び付いた重そうな扉を開けると、驚くことに中は全ての壁が取り払われた大広間が広がっていた。

床は空を移すかのような鏡になっており、まるで空の上に浮いている錯覚を起こす。



「幻想的ね…」

「すごい!!」


あまりの素晴らしい光景にヒナは思わず中央へと飛び出す。



「おい、はしゃぐなよ!」



言ったか言わぬかの刹那、鋭い光の矢のようなものがヒナの足元に突き刺さる。



「っ!!」



思わず後ずさるヒナに空の上から響くような声が降る。



『誰だ、我の空を汚す者は。』



空の中央に光が幾重にも集まり、声の主は姿を現していく。



ゆっくり3人の前に現れたは女性は美しいという言葉はこの人のためにあるのではないかというくらいの輝く美しさを放っていた。



綺麗なストレートの銀色の髪は足首程まであり、白い消え入りそうな肌の色を際立たせ、流れるような白い光沢のあるローブは床に広がる空を包むかのように優しく揺れていた。

伏せていたまぶたをゆっくりと開くと、切れ長の瞳は吸い込まれるような銀色をしていた。





『………。』


あまりの光景に目を奪われていると、存在自体も霧のような薄い存在のその女性はヒナたちを一人、一人見つめる。




『…!!!お前は…!!』





「え…」



急に怒りにも似た表情をこうに向けたかと思うと、次の瞬間にはその頬を一筋の血が滴りおちていた。



「うわっ!危ね…!」

「こう!!」




刹那に放っていた光の矢は、空を一周するとその女の掌に収まる。




「なにすんだよ!いきなり!!」



頬を無造作に拭い叫ぶと、即座に答えが返ってくる





『人間も…貴様らも…なぜ我らを裏切る!!』




「うら…ぎる??」




向けられたことのないような痛み、哀しみ、憎しみの入り交じる表情が、こうの胸を突き刺した。


真っ直ぐに射るような視線はなぜかこうに向けられていた。

今、初めて会ったばかりの自分に向けられた見に覚えのないはずの感情に戸惑うこう。



「なぜ裏切るって…なんのことだよ!」




裏切り……知らないはずの感情に、不思議な感覚を覚える。




その感覚はこうの、胸の奥底で静かに渦巻き始めた。



これは…罪悪感……?





キーン……




耳鳴りと共にその感情に包まれそうになったこうにヒナが叫ぶ。



「こう!危ない!!」



キン!!



間一髪、ジュンの放った守護幕が光の矢の矛先を僅かに反らし、危機を免れた。



『……。』


表情1つ変えず冷たい瞳がこうを見下す。



「お前……宝珠なんだろ?」


その瞳に屈せず、こうは立ち上がる。

自分を包む感情を振りきるように声をあげた。



「宝珠なんか俺は知らないけどここの人にとっちゃ、神とか女神とかだろ!この世界の人間見守るもんなんじゃねーのかよ!」



『……』


「人も世界も滅茶苦茶らしいし、お前たちは何なんだよ!」




こうの荒々しい言葉に低く冷たい声が応える。




『世界は、宝珠の配せぬ時に入ったのだ。世界の迷走を我らはどうすることもできない。』




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