4つの闇の星を統べる者ー4DS 5
……………
暗く、深い。地中の中のような息苦しさと、冷たい雪に閉ざされたようなキンと張り詰めた空気の中。
その空間の中で唯一、淡い黒の光を放つ水晶の間。
音もない、静寂な空間に一人の男がいた。
その空間の暗い闇夜のような天井には無数の星が映し出されている。
ほとんどは白く、その暗闇に溶けるように細い小さな光を放つ。
その中で一つの星座が、急に紅く燃え出す。
「………… 」
男は閉じていた瞳をあける。 深い血の色を連想させる緋の色。
男はまだ幼さとあどけなさを残す青年だった。
しかし、その目は鋭く相当な魔の使い手なのだろう。手にしている不思議な黒色の魔球の力か身の回りを黒い稲光に似た光で包んでいる。
「………来ましたね。」
パタン。
「サマル 」
暗闇が瞬時に消え、青く揺らめく灯りとともに もう一人の男が入ってくる。
その青年は男にサマルと呼ばれ振り向く。
「なんですか?セレメス。」
今入ってきた男、セレメスは幾重にも重なった長いローブをまとい、長い身長程の杖を持っている。
「宝珠使いが現れたそうだ。天の塔に寄越した闇駒がそう残し、消えた。」
「…………宝珠使い……他に仲間はいたんですか ?」
「いや、それ以上の情報は……」
「セレメス、その者に洗礼の挨拶を。」
そう言うと、サマルはにこりと笑い後ろを向 く。
「……早いな。今回は。」
セレメスも察したのか、すぐに部屋を出る。
紅い星を見上げ、サマルは誰に言うでもなく、 呟く。
「………だいぶ怒っているようですね…星は目覚め、星の復讐が始まりを告げる。
どうします?カストル…。」
「消えた…闇駒が…一瞬で。 それに、今のは…ただの魔法じゃない?…」
ヒナが倒れた後に残ったのは、襲われていた女の子だけだった。
先程の闇駒は跡形もなく消えている。
辺りはいつもの朝の情景を取り戻していた。
女の子は、気を取り直し倒れたヒナを起こそうと近づいた。
「待て。」
「!! 」
背後に気配を感じて振り向くと
黒い靄が現れ、長い杖を持ちローブをまとった男が現れる。
セレメスである。
「また…闇の…」
女の子は思わず後ずさる。
「物分かりが良い娘だな。いかにも、私は闇の集団『4DS』のセレメスだ。」
「なっ… セレメスって……最高幹部、四天王の!」
女の子はその場に座り込む。その顔からは血の気が引いている。
「…悪いが、その宝珠使いを渡してもらおうか。 邪魔をすれば命はない」
「!!」
セレメスは一歩、一歩ヒナに近付いていく。
為すすべもなく、座り込む女の子の横を通り過ぎ、ヒナに手をかけようとしたその瞬間、
「!? 」
セレメスは何かに気づきバッっと退く。 その手には、微かな切り傷がにじむ。
「4DSも目が鈍ったんじゃない 」
凛とした声がどこからか響く。
「……誰だ。」
怒りを押さえ、その声に鋭く応じる
「宝珠使いは…その子かしら。」
そこには、ひとりの女が立っていた。