4つの闇の星を統べる者ー4DS 2
「なに?4DSって…」
「北の時空間の歪みを利用して空に要塞を築き、 闇魔法を使う種族よ。
最近になってこうして頻繁に攻撃してきているのよ。
今の攻撃はそいつらの仕業…
古の昔、このデタルタロンを支配していた私たちの祖先との戦争で敗北した種族とは言われているけど… 本当に復讐が目的なのか、破壊か、侵略なのか…」
ジュンの説明をだまって聞いていたこうが口を挟む。
「この世界のヤツらはなんとかしないのか?
逃げるだけかよ?」
「………奴等の攻撃の闇魔法は威力がものすごくて…私たちでは太刀打ちできないのよ… こうして砦や搭を街に築いてそれぞれ身を守るので精一杯。
それでも何度となく強い魔法使い達が北まで討伐に向かったけど……」
ジュンは切なげに首をふる。
「あいつらのおかげで、地は枯れ、空は黒ずみ、 街は荒らされ……何人も犠牲がでてる…。
特にここ何ヵ月かは攻撃が頻繁になってきたわね …」
悲しそうに俯くジュンの横でヒナは思いついたように言葉をもらす。
「…あ……光の神…?」
「え?」
「そうだ!光の神が現れればいいんじゃん?」
ヒナが立ち上がりながらジュンに問いかける。
「なんだよ、急に…」
「そうね…そうよ!世界の均衡が崩れし時、宝珠使いが現れ…… つまり宝珠を12個集めて光の神が現れれば、4DSは退くってことかしら」
ジュンは一筋の光を見出した気分なのか、黒ずんだ空を見上げる
しかし、こうは複雑な顔をして、ヒナに呟く。
「おい、ヒナ……」
「わかってる。私たちの目的は帰ること。 それは変わらない。 でも、気になってきたの。宝珠やこの世界が…」
ヒナは不思議な気持ちだった… 自分を必要としている現実がこの世界にはたく さん揃っている。
幼いあの頃夢みた絵本のように。
元の日常に帰りたいと強く願う気持ちとは裏腹にヒナの心は揺れている………
その時、ポンと手を叩き、何かを思い出したジュンが叫ぶ。
「そうそう。宝珠の伝説があるのはこの塔、『天 の塔』なの。」
「天の…塔」
ヒナは砦の入り口からも見える『天の塔』と呼ばれる大きな塔を見上げた。
「天の塔って…あれが…」
ヒナとこうは砦の外に出て、そのすぐ前にそびえ立つ高い塔を見上げた。
先程の時計塔とは比べ物にならない高さでそのてっぺんは見ることができず、雲の上まで続いている。 塔の側面は神秘的な象形文字のような装飾、塔を囲むように螺旋に続く階段、高い柱が何本も立っている。
まるで中世のヨーロッパにある遺跡のような様式だ。
塔の中は決して広くはないようだが、天の塔の名の通りとにかく空高くまで続いている。
「確かに…なんかいそうだよな…」
「まあ、今日はもう夕暮れになるし夜を越して 、朝また来ましょ」
気づけば長い一日が終わろうとしていた。
一行は塔の近くでジュンの作る結界の中で夜を越すことにした。