4つの闇の星を統べる者ー4DS
「ここが天の宝珠がいるらしい街、アースガルズ…」
ヒナがまるで観光に来た旅行客のように大きな街の建物を見渡す。
大都市とも言える街の入り口にはヒナ、こう、そしてジュンの姿があった。
時計塔の街クローナを後にしたヒナ達一行は途中で出会った荷車の荷台に乗せてもらい、隣街の『アースガルズ』と呼ばれる大きな街に降りていた。
白塗りの家壁や、石造りの街道はクローナとは違い広く立派だ。
行き交う人も段違いに多く、様々な人種、目的を持ってこの街を訪れているようだ。
遠く、中心部の広場には高くそびえる荘厳な塔が見える。
ジュンは街を珍しそうに飛び回るヒナを見ながら、諦めるように言葉をこぼした。
「なんで、私まで加わされてるのかしら…」
「…あいつは、一度決めたことは絶対動かさないからな…」
こうはあきれたようにヒナを見ながらジュンにこぼす。
だがその直後、鋭い視線をジュンに向け瞬時に言い放つ。
「だけどな。ヒナはあんな調子だけど、オレはまだおまえを信用しないからな。」
ジュンはその言葉に驚く様子もなく真っ直ぐにこうの目を見て笑いかける。
「ふーん。まあ、当然の行動と意識だろうと思うわ。逆にその言葉に安心した。」
「あ?」
思ってもみないジュンの反応に驚くこう。
「なんでだ…?」
「この世界は今、平和じゃないの。
私たちに害なすモノがたくさんある。
逆に言えば簡単に人に付いていくあの子は危険なのよね。
だから、あなたが見張っていてあげなさい!」
こうはいたずらっぽく意味ありげに、自分を見るジュンを見てあわてて手を振った
「なっ!んだよ!!そんなんじゃねーし!!」
二人の空気が和んだ。
ちょうどその時だった
ドドン!!
「なに!?」
地を揺らすような爆音ともいえる音にヒナは思わずしゃがみこむ。
「まさか!!」
ジュンは一瞬にして鋭い表情に変わっていた。
「なんだ!?地震か?」
パン!パン! とたんに空に花火のような火花が飛び散る。
それを合図にしてか広場にいた人の波は一斉に街の中心部目指して散る。
「ブルームの合図!! 『4DS』よ!!急いで! あの塔まで走るわよ!!」
ジュンは鋭く叫ぶと二人を導くかのように走り出す。
「ええ〜」
「なんだかわかんねーけど行くぞ!」
『4DS』……ジュンが呟いた言葉が何なの かわからないまま、その緊縛した雰囲気と剣幕に押され、言われるがまま走るヒナとこう。
街には小さく火の手があがっている。
しばらく火花は散っていたが、その合図が消えると同時に街一体が黒い炎と影で覆われていく。
ヒナにもそれが一目でなにかの攻撃だとわかった。
街の人たちも、それを避けるように必死に安全な場所を目指して走っているようだ。
「なんなんだよ!あれは…」
「話は後よ!シエル!」
ジュンは素早く詠唱をし、手のひらから杖を引き出すと高く掲げた。
杖の先端の赤色の宝飾から淡い光が現れ3人を包む。
「わあ!すごい!ジュン!」
「感心してる場合か!!」
ドガン!!
すぐ側の街灯に雷のような光が落ち、石造りの路地をえぐり火の手があがる。
「きゃー!」
「真面目に走るぞ!まじでやばい!」
なんとか、火や、雷の攻撃を避けて塔の近くの砦に到着できた三人だったが、急に起こった出来事にその場にへたり込むヒナとこうだった。
周囲を見回し、安全を確認したジュンは静かに杖を降ろす。
「……これが、今のこの世界の均衡が崩れている元凶…4つの闇の星を統べる者達……『4DS』の驚異よ。」