光暗神伝 2
「……その神話には、今この子と会った『宝珠』が出てくるのよ。そして、世界の均衡が崩れた世に現れる『もう一つの世界』から来た使者……」
宝珠の本から目を離し、こうの瞳を真っ直ぐ見ながら話しはじめた。
「なんだって!?待てよ…それって!!」
思わず声を荒げ立ち上がるこうにジュンはシーっと人差し指を見せ、落ち着くように示した。
こうは周りを気にしつつ席につく。
「まさかとは思うけどね。似てるのよ、あなた達の今の状況に。」
「それで、その神話はその先どうなってるんだ」
自然と声は小声になり、再び身を乗り出すこう。
「それが……」
「それで……?」
「ううん〜!」
丁度その時、目をこすりながらむっくりと起き上がり、2人を見上げたのはヒナだった。
「おまえ~!」
話のこしを折られ、再会を喜ぶことも忘れ、低い声をあげるこう。
「あれ?こうじゃん、どしたの?
あ、ジュンも!!」
久しぶりに再会した友達のように二人を見て笑うヒナ。
そんなヒナを前にジュンは言いかけた言葉をしまい、静かに微笑む。
「たく…なんだよ、それ。
おまえ、宝珠ってやつに会ったらしいな」
ヒナは宝珠という単語を聞いて飛び上がる
「そうそう!!見てよ、宝珠の力をもらっちゃったのよ!宝珠って人だったのね」
そう言うと、得意そうに抱きかかえていた本をめくり、こうに見せる。
「これが宝珠…??」
何語かわからない言葉がずらりと並んでいる…
図のようなものも書かれているが、ひとめで宝珠とわかるようなものではなかった。
「これに……なんか力が??」
「そうよ!ここにいるのよ?ものすごいおっきな力がギューって!!」
キラキラした瞳を見せてしゃべるヒナと不思議そうにそれを見るこう。
どうやら、その力はヒナにしか感じられないようだ。
「宝珠か…。
まぁ、この本がどうであれ、宝珠がモノじゃなくて、人とかそうゆう存在だったとはな…」
こうは本をヒナに渡しながら答えた。
「宝珠はこの世界…『デタルタロン』の各地に口伝の伝承として語り継がれている精霊のようなものよ。
まさか本当に存在しているとは思わなかったけど…」
ジュンは思い出すように視線を空に向けながら話しはじめた。
「ねえねえ、宝珠はあと何人くらいいるの?」
「そうね…正確にはわからないけど、光暗神伝には12いるとされてるわ。そして、12の力を集めた時……」
「とき………??」
先程話を切られたこうは今度こそ聞き逃すまいと身を乗り出して聞き耳をたてる。
「『光の宝珠が目覚めるだろう』……て言われているわね。」
「光の宝珠?!それが目覚めるとどうなんだ!?」
「…さあ………」
「…んだよ…」
ジュンの呆気ない言葉に、力が抜けたように椅子にどしんと座り込むこう。
「…まあ、俺たちがつかんでる手掛かりはその『宝珠』てやつしかないからな…地道に探すしかないか……」
こうは立ち上がり、街を見渡す。
「…そうだね!
とにもかくにも動かなきゃ始まらない!
ジュン!じゃ、その伝承が残ってる場所に行こう!」
そう言うとヒナは何事もないようにジュンの手をつかみ、店の出口へと歩きだそうとする。
急に手をとられ呆気にとられるジュンが抗議するように聞き返す。
「は…?あの、私も?…え?」
「何言ってんだよ、ヒナ!」
その行動に呆れるこうにヒナは笑いかけた。
「だって…そう決まってるの!!」
「え?」
「は?」
「これからもよろしくね!ジュン!」