隠された力を胸に 1
夕暮れのような、切ないような懐かしいような淡い光の中、子供たちが輪になっている。
その真ん中。
泣きじゃくりうずくまる女の子がいるた。
~あの子は…~
幼い頃の自分だった。
子どもたちの輪は笑い合いながらパァーっと四方に散っていく。
取り残されたのは幼いヒナだけだった。
<どうして?どうして、みんな離れていくの?>
<私が変?変てなに?>
[あいつの手から光がでたんだってさ]
[お母さんがあの子とは遊んじゃダメだって!]
四方に散ったはずの子どもたちは、また輪になりながらヒナをはやしたてる。
かつて『泣き虫』と呼ばれていた小さい女の子…
それがヒナ胸の奥にしまい込んでいた過去。
その光景がそこにある。
<ちがうよ…私にもわかんない。それが私の力…??>
[本に向かって一人でしゃべってたんだって!]
[おばけだ!おばけのヒ……]
「おまえら!いいかげんにしろ!!」
〜え?〜
そこに割りいってきたのはよく見知っている顔の男の子だった。
青黒い髪を短く切り、まだあどけない顔立ちをしているが身間違うはずもない。
幼いこうだった。
<なんで、みんな行っちゃうの?>
幼いヒナは泣きじゃくりながら、現れた少年に驚いて逃げていく子供達を見て言った。
~…そっか。そうだったね、あいつ…~
ヒナの心になにかが生まれる。
「おまえもいちいちメソメソすんじゃねーよ!」
少年のこうは、ヒナに向けてそうぶっきらぼうに言ってちょこんと隣に座った。
まだまだ、小さい、悪ガキみたいなあいつ。
その光景を見ながら、ヒナの心に生まれた小さな光は微笑んでいた。
「しょーがねーな。弱っちぃよ、おまえ。
そーだ!おまえが強くなるまで…」
<うん。そうだよ。>
その時、ヒナは目を上げた。
意識はもう自分の中に戻りつつある。
時の呪縛の中で、ヒナの心は動きだそうとしていた。
<…わかってるよ。>
<忘れてた。>
<だから、見てなさい!!>
「おまえが強くなるまで、ずっと見ててやるよ。」
幼いこうの小さな手が幼いヒナの頭に触れた瞬間。
<私はもう大丈夫!>
カッ!!!
とたんにまばゆい光が辺りを包んだ。
ヒナの心に生まれた光が宝珠にかけられた呪縛と共に四方に飛び散っていった。
「え…」
ジュンは驚き、眩しさに目を細めたまま動けずにいた。
なぜなら今まで自分の手のなかで横たわっていたヒナは白く輝く光を胸に、立ち上がっていたからだ。
ヒナは驚くジュンを笑顔で見やりながら、挑むような表情で宝珠を睨む。
「時の宝珠、リイム!!私に従いなさい!!」