第2話 最弱なのに創造主? 壊れた理想と少女の叫び
初めまして、作者のKeyです。
「最弱なのに創造主?堕ちた世界で、もふもふ家族ができまし!」
を手に取っていただきありがとうございます。
初めての作品となりますので、至らない点が多々あるかと思いますが、最後まで読んで頂けたら嬉しいです。
あまりの衝撃に、俺はノートを手放し、その場に両膝をついて頭を抱えた。
なんだそれ……どうすりゃいいんだよ!!
水も食料もないのに、外には魔物がうじゃうじゃいて、出たら五分でお陀仏?
完全に詰んでるじゃないか。
ありえないだろ。なんで出発地点が“魔の森のど真ん中”なんだよ!!
十分ほど現実逃避したあと、床に落ちたノートを拾い上げる。
「申し訳ございません。
私の伝達ミスで主様に要らぬご心労をおかけしました」
すごい勢いで謝られた。
なんだろう……メイドか?
“主様”なんて呼ばれてるから主従関係だと思ってるんだろうけど、現実世界ではそんな関係じゃなかったから妙にむず痒い。
ん?要らぬご心労?
いやいや、武器も戦闘スキルもない俺は、どう考えても詰んでるだろ。
もしかしてアーティ、実はとんでもない魔導書で上級魔法をバンバン撃てるとか?
「主様はこの世界にポケットノートとシャーペンを持ち込みました。
シャーペンはこの世界で言えば“短杖”にあたり、魔道媒体として最高級品です。
私に“ファイヤーボール”と書き込めばファイヤーボールを、その他どの系統の魔法でも、杖を媒体に私へ書き込むことで使用可能です。
また、“剣”と書き込めば杖が物質的媒体となり剣になります」
なにそれ……俺は一般人だけど装備がチートだった系のやつか?
全属性魔法に、変形可能な武器。
書き込むという要素がある分、マイナス要素のカバーでチート二つ持ちですってか?
いいね。
魔の森スタートなのに、なんで俺TUEEEE設定にしなかったんだ俺は……と思ってたけど、こんな特典があるなら、この詰み状況も実はただのチュートリアルイベントってことか。
ふふふ……なら今すぐ書き込もう。
絶対に砕けぬ鎧と盾――
書き込んだ文字の下に、
「鎧と盾を同時に展開できません。どちらかを選んでください」
と表示された。
なるほど、杖が物質的媒体になるって言ってたし、一つまでなのか。
なら――絶対砕けぬ全身鎧だ!!
MP不足により実行できません。
ふ…ふふふ……そうだよな。初めは普通のからだよな。
レベル上げて出直してこいってやつだ。
よし、一旦胸当てくらいから試してみるか。
MP不足により実行できません。
なっ…なら果物ナイフ。
MP不足により実行できません。
……ふ、ふざけんなよ!!
「お待ちください、主様!」
なんだよ!!クソ……!
「確かに今の主様はステータスが低く、MPが少ないため上手く扱えないかもしれません。しかし、今後必ずそれも解決します」
ふざけるな!!今後っていつだよ!!
今だろ、今食料も水もないんだぞ!!
つい八つ当たり気味に声を荒らげてしまった。
――キャーーッ。
子どもの叫び声?
その瞬間、激しい轟音と揺れが小屋を襲った。
なんだこれ?何が起きたんだ?
「主様、約100m先で異常な魔力の暴発を検知しました。
爆発の中心点で微弱ながら生命活動を確認。
魔物ではありません。人です」
そ、そうか……確かに叫び声は子どもの声だった。
助けに行くべきだ…しかし、ついさっき“自分には何もできない”と痛感したばかりの俺は、足がすくんで動けなかった。
情けない……。
恐怖を前にして、俺はこんなにも弱い人間だったのか。
「主様、現在周辺の魔物は爆発に巻き込まれ死に絶え、生き残ったものは逃げました。
しかし、このままでは魔物は戻ってきて、人は魔物の餌になります」
くっ……わかってる、わかってるよ!!
ただ……足が動かないだけなんだ……!
震える足を叩き、恐怖を押し殺し、俺はドアを開けて爆発地点へ駆け出した。
土煙の中、クレーターのように抉れた地面の中心に、彼女は倒れていた。
歳の頃は十二か十三。
土埃でくすんでいるが、それでもなお美しい銀の長髪。
しなやかで美しい尻尾。
可愛い猫耳。
俺は彼女を抱き上げ、小屋へと急いで戻った。
埃を払い、ベッドに寝かせたあと、ノートを開いてアーティを起動する。
「アーティ、ここは人族の治めるパンゲイル大陸にある魔の森じゃないのか?」
「ここは主様の言う通り、パンゲイル大陸の魔の森です」
「ならなんでこの子がこんなところで魔物に襲われてるんだ?この子は獣人だ。しかもこの首輪……奴隷か?
おかしいだろ。獣人はローなんたら大陸にいる設定だし、そもそも俺は奴隷制度なんて作ってない。
みんな上手く棲み分けして、世界は平和で……って設定だっただろ?」
「主様、確かに獣人はローラシオン大陸に住んでいます。
しかし、ここは幾多の生命が生きる“現実の世界”
現実では、理念よりも強い力、現実の力学が働きます。
表面上は平和に見えても、それは“見える範囲”の話で、事実は異なります。
まして魔法のある世界、奴隷は確実に言うことを聞く生物兵器となりうるもの。
目をつけないはずがありません」
現実……。
その言葉の重みが、胸に沈んでいく。
この世界を作った――その事実が、責任となって心を闇に引きずり込む。
身体が震え、体温が下がっていく感覚。
そして、いつしか俺は意識を失っていた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
皆様の感想が、今後の作品の成長に繋がると考えていますので、どんな些細なことでも構いません。一言残して頂けたら幸いです。
今後ともよろしくお願いします。




