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第12話 最弱なのに創造主? 記憶の封印と選ばれた道

初めまして、作者のKeyです。

「最弱なのに創造主?堕ちた世界で、もふもふ家族ができまし!」

を手に取っていただきありがとうございます。

初めての作品となりますので、至らない点が多々あるかと思いますが、最後まで読んで頂けたら嬉しいです。

この世界の通貨は銅貨・銀貨・金貨・白金貨。

銅貨100円×20で銀貨1枚。

銀貨2000円×20で金貨1枚。

金貨4万円×20で白金貨1枚。

白金貨は80万円相当。


物価は安定していて、パン1つ銅貨1枚、宿1泊銀貨2枚。

日本と同じくらいの感覚だ。


前金として受け取った金貨1枚と、盗賊から取り上げた分を色々使った残りが、金貨7枚・銀貨80枚・銅貨1000枚ほど。

日本円に換算すると約58万円。

1週間分の宿と食事は確保されているが、無駄遣いできるほど余裕はないな。


ストックしている魔物を売るのもいいが、冒険者としてしっかり稼いでいる姿を見せないとスフィアに怪しまれるだろうから明日からは依頼をこなしていくか。


そんなことを考えていると――


「うわ!! お兄ちゃん、これ見て!!」


リーヴが指さした先には……チーズ。


「カビてるのに売ってるよ?」


「お嬢ちゃん、これはそういう食材なんだ。まぁ、1週間かけて持ってきたのに全く売れないがな……」


こ、これは……!

何を隠そう、俺の大好物はチーズなのだ!!


「店主さん、このブルーチーズと、こっちのハードチーズは自家製ですか?」


「あぁ。牛やヤギを育てて売ってるんだが、家族で食べるために作って、余った分を今回初めて売りに来たんだ。だが皆、お嬢ちゃんと同じ反応でな……」


「全て……」


「えっ?」


「今お持ちのチーズは全て私が買取ります!!」


「えーーー!?(一同)」


「そりゃありがたいが……」


「ちょ、ちょっとお兄ちゃん? これ絶対腐ってるよ? すごい臭いだもん!!」


「そうだぞアーキトス君。私はこんな食べ物を見たことないし、カビも生えてる。これは食べ物としてはもう駄目なやつだろう」


「リーヴ、大丈夫。それにスフィアさん、これはとても美味しい食べ物なんです。色々な料理に使えるので、今度食べさせてあげますよ」


「えっ? あ、そうなのか……。しかし朝夕は宿で食べるから、そのうちまた機会があれば頂こうかな?」


「店主さん、全て買取りますので、最後の鐘が鳴ったら売れ残りを全部《月影のランタン亭》に届けてくれますか?」


「売れ残りって……今まで1個も売れてないから、ここにあるの全部になっちまうぞ?」


「はい、大丈夫です。それでは後ほどよろしくお願いします」


「……あぁ、わかった。ありがとよ」


やってしまった。

手持ちが多くないのに、勢いで「全部買う」と言ってしまった。

だが、いい買い物だ。ブルーチーズは肉にもデザートにも合うし、ハードチーズは……ピザだよな! ピザしかない!!


「お兄ちゃん……お顔がだらしないよ!!」


「ははっ、少し妄想してた。リーヴもきっと気に入るよ」


「私は……お兄ちゃんが食べろって言うなら……」


それはそうと、スフィアがいるから生物はあまり買えないかな?


「リーヴ、あそこに可愛いリボンが売ってる。今日はあれを買って帰ろう」


「えっ? 買ってくれるの?」


「当たり前だろ? このお金はリーヴが倒した魔物の素材の分も入ってるんだ。欲しいものを買っていいよ」


「やった! お兄ちゃんが選んでね!!」


露店のおばちゃんが声をかけてくる。


「いらっしゃい、可愛いお嬢ちゃんだね。何を探してるんだい?」


「髪をまとめるリボンが欲しくて」


「銀の髪には青なんて合うんじゃないかい?」


「青もいいけど……俺はこの薄紫が似合うと思うな。リーヴ、この淡い紫はどうだ?」


「うん、それがいい!!」


「おばちゃん、これいくらですか?」


「50cmで銅貨1枚だよ」


「じゃあ2本ください」


「はいよ、銅貨2枚ね」


「ありがとう!! ねぇ、お兄ちゃん結んで?」


「いいよ。ここは……ツインテールにしよう」


「リーヴちゃん、私が可愛く結んであげるよ!!」


「いい……」


「ツンツンしてるのもいい!!」


その時、黒装束の男が声をかけてきた。


「お兄さん、綺麗な髪をしているね」


訝しむ目で男を見る。いきなり何だ?


「これは失礼。私はリリス教の司祭、ヒュドロスと申します。女神リリスに仕える者です。漆黒の髪、漆黒の従魔……その姿に目を奪われ、つい声をかけてしまいました」


優雅な動作で謝罪するが、どこか違和感がある。

言葉を返そうとした瞬間――


ゴーン……ゴーン……


最後の鐘が鳴った。


「そうでしたか。申し訳ないですが、この後約束があるので失礼しますね。またご縁があれば……」


……なんだ、この違和感?


いや、それどころじゃない!

急いで帰らないとチーズ屋さんが来ちゃう!!


宿へ急ぐと、ちょうど店主と合流した。


「すみません、待たせましたか?」


「いや、今来たとこさ。いきなりで悪いが、ブルーチーズは6ピースと4ホール、ハードチーズは5ホール。どれも3kgだ。

ブルーチーズが銀貨2枚で5ホール分で銀貨10枚、ハードチーズが銀貨4枚で5ホール分で銀貨20枚。合計銀貨30枚でどうだ?」


「なっ、そんな物を銀貨30枚で売りつけるつもりか!? 貴様!!」


「ひっ!!」


「スフィアさん、妥当な値段ですよ。どちらも最低3ヶ月、ハードは1年以上の熟成が必要で、保存性も高いんです」


「そうなのか? しかし銀貨30枚なんて、慎ましい暮らしなら家族3人が1ヶ月は食べていける金額だぞ?」


「ははっ、いいんですよ。それだけの価値があるんです」


「では、金貨1枚と銀貨10枚で」


「……ありがとう!!」


「今度はいつ売りに来るんですか?」


「いや、当分来ないさ。余ってる分を売りに来ただけだからな」


「そうですか。もし良ければ、どちらから来られたかだけでも」


「ここから馬車で北東へ1週間ほど行ったアルミ村だ。もし寄ることがあれば絶対顔を出してくれ。俺はトールだ!」


「はい、必ず!!」


固い握手を交わし、トールと別れて宿に入る。


「チーズを部屋に置いてくるから、食堂で待っててくれ」


「はーい」


今日はボアのステーキだと言っていたし、ブルーチーズを1ピース残して、残りは異次元ボックスへ収納。


「お待たせー」


「お兄ちゃん、もうすぐご飯くるよ! ここ座って!」


《月影のランタン亭》の食堂は夜になると宿泊客以外にも開放され、賑やかだ。


「お待たせしました! ボアのヒレステーキ3人前と、プラティちゃん用のガッツリお肉セットで~す!」


「おぉー、お肉を運ぶ姿も可愛いね~リュミエちゃん」


「ふふふ、スフィアさんはいつも通りだね。あれ? アーキトスさん、それは?」


「これかい? ブルーチーズって言うんだけど、こうして熱々のステーキと合わせて食べると――」


「うん、美味しい!!」


「リーヴとスフィアも食べてみなよ」


「い、いや、私はその……」


「お兄ちゃん、その臭いがちょっと……」


「いやいや、こうしてソースと肉汁に溶かしてから食べると、臭いも抑えられて癖になるんだよ!」


「アーキトスさん、私! 私に1口もらえますか?」


「いいよ、リュミエちゃん。はい、あーん」


「あーん」


「わ、私が食べる!!」


「えっ?」


パクッ。もぐもぐ。


「んー……ほんとだ!! 美味しい!! 思ったほど臭いも感じない。これは……売れる!!」


「うんうん。パンやナッツと合わせてもいいし、サラダに少し入れても美味しいよ。蜂蜜をかけるとデザートにもなる万能食材なんだ」


「蜂蜜持ってきてもいいですか?」


「あぁ、いいよ」


「すぐ取ってきますね!」


ふふふ、これでチーズ党が一人増えたな。


「お兄ちゃん、わ、私も1口食べてみる!」


「いいね、どうぞ」


「えっ?いや、自分のにはまだちょっと……」


「なるほど。じゃあ少し切り分けてあげるよ」


「あ……うん、ありがとう」


「スフィアさんもどう?」


「いや、私は自分の分でお腹いっぱいでな。また今度の機会にいただくよ」


「蜂蜜持ってきました!!」


「よし、じゃあ1口サイズに切って、蜂蜜をたっぷり……はい、どうぞ」


「うん……パクッ。もぐもぐ……ふぁ~……塩気と甘みがちょうどよくて、香りもまろやかで……これは……売れる!!」


「ははは、さすが商売人の娘だね。感想が全部商売に繋がってる」


「リュミエちゃん、それそんなに美味しいのかい?」


「スフィアさん、まだ食べてないの? すごく美味しいから食べてみなよ!!」


「あーんしてくれるかい?」


リュミエはジト目でスフィアを見る。

その視線に、スフィアは頬を染めた。


「じゃあ、お酒1杯と蜂蜜はスフィアさんの奢りならいいよ!」


笑顔でスプーンをスフィアの口元へ持っていくリュミエは商売上手だな。


「もちろんさ。あーん……んん!! 本当に……美味しい」


「だろ?」


こうして楽しい食事の時間は過ぎ、部屋に戻った。


さて、少し現状を整理してから明日に備えよう。


「なぁアーティ。この世界は、俺が転移してきたことで本来の歴史からズレたのか?

獣人が普通にいることもそうだが、大聖女エリュシアがここを治めているのはおかしい。王都の大聖堂にいるはずだろ?

それだけじゃない。街中に女神リリスを祀るリリス教なんてのもあった。あんなの俺は知らないぞ?」


「主様、それは少し認識が違います。

主様と私が作り上げたのは、”こうならいいな””こうあって欲しい”と言った理想の世界です。

そうした願いの種子が芽吹いたのが今の世界です。」


「どういうことだ? 俺が来なければ、この世界は無かったってことか?」


「……世界はありましたが、そこに意思はなく、全てプログラムとして動いていました。

しかし主様が来たことで、この世界に意思が宿ったのです。」


「意思のない状態が種で、意思を持ったことで芽吹いた?それは元々こうあるべきと定めた世界が俺が来て分岐し、世界の有り様が書き換わったって話しじゃないのか?」


「いいえ。主様がこの世界に来た時にこの世界が始まりました。

ミスティアが形成されて46億年。人類が定着してからおおよそ1万2千年。

現在は聖国歴432年で、主様が肉体を持ち生まれ落ちてから15年になります。」


「サラッと言ってるけど、それ宇宙の始まりの起点が俺の転移ってことだよね?分岐ではないけど、大まかなところ、例えば国の名前とか聖女の名前、神の名前は同じだけど俺達が作った世界とは違うってのは変わらないだろ?」


「全ての選択を主様が決めていた理想の世界と、自由意思に任せた結果の世界を別とするなら違う世界とも言えます。

ですが、ここは主様の作った世界で間違いありません」


「……そういうことか。プログラムってのは俺の意志の反映で、全ての生命に選択の自由を認めない世界……あぁ…なるほど、それは理想の押し付けで……」


「主様。しかし主様はその選択をしなかったのです。

この世界に自由意思を与え、支配ではなく共存を選んだのです」


「選んだ……?」


「……主様は記憶を失っております。

この世界に渡る際、記憶の消去と私への禁止事項を設定し、“自由意思を持った世界”を選択したのです。

これ以上は、禁止事項に触れるためお答えできません」


「……そっか。なら俺はこの世界で自由に生きる。

リーヴの親を探して、色んな人と会って、理想の家を自分の手で建てて……自分の手の届く範囲の人を幸せにする。

それでいいんだよな?」


「主様の思うままに」


「……そうだな。明日からまた頼むよ、アーティ。おやすみ」


ノートをそっと閉じ、ベッドに寝そべる。


記憶を消した……か。

でも、俺は俺だし、今はここに生きてるわけだからな、悩んでも仕方ないかな…

切り替えて、明日からこの世界を全力で楽しもう。

最後まで読んでいただきありがとうございます。


皆様の感想が、今後の作品の成長に繋がると考えていますので、どんな些細なことでも構いません。一言残して頂けたら幸いです。


今後ともよろしくお願いします。

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