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8/13

その報酬、激甘につき

翌日。 ガストン男爵は、窃盗の現行犯で逮捕され、地下牢にぶち込まれた。 燭台は無事に戻り、侍女のソフィの疑いは晴れた。


「リリアナ様ぁ~ッ! ありがとうございますぅ~!」


部屋に戻るなり、ソフィが泣きついてきた。


「無事でよかったわ、ソフィ」


「はい! リリアナ様のおかげです! やっぱりリリアナ様は、最高の名探偵です!」


ソフィは目を輝かせている。 探偵、か。 まあ、結果オーライね。


「……だが、許されんこともあるぞ」


そこへ、ヴァルダス殿下が入ってきた。 ソフィが慌てて頭を下げる。


「殿下……」


私は緊張して居住まいを正した。 昨夜のことで、お説教されるに違いない。


殿下はソフィを下がらせると、私の前に立った。


「リリアナ。お前は俺に嘘をついたな?」


「……はい。申し訳ありません」


「俺に隠れてコソコソと動き回り、あまつさえ、危険な男の部屋に一人で乗り込んだ」


殿下の顔が近づく。


「もし俺が駆けつけなかったら、どうなっていたと思う? あの豚に何をされていたか……想像するだけで、はらわたが煮えくり返る」


「ごめんなさい……。でも、殿下にご迷惑をおかけしたくなくて……」


「迷惑?」


殿下が私の顎を持ち上げる。


「俺にとって最大の迷惑は、お前が傷つくことだ。……それ以外はどうでもいい」


ドキッとした。 殿下の赤い瞳が、真剣な光を宿して私を見つめている。


「今度からは、俺を頼れ。どんな些細なことでもいい。お前の敵になるものは、俺が全て消してやる」


(訳:俺に相談しろ。そうすれば合法的にお前の敵を虐殺できるから)


殿下の言葉は物騒だったが、その奥にある「守りたい」という意志は、痛いほど伝わってきた。


「……はい。約束します、殿下」


私が頷くと、殿下は満足げに微笑んだ(サディスティックに)。


「よろしい。……では、罰を与えよう」


「えっ、罰?」


やっぱり処刑!? 私が身構えると、殿下はポケットから何かを取り出した。


それは、最高級のチョコレートが入った小箱だった。


「口を開けろ」


「は、はい?」


「罰だと言っているだろう。……あーん、だ」


またこれ!? 私は混乱しながらも、口を開けた。 殿下が、チョコを一粒、私の口に放り込む。


甘い。 とろけるような甘さだ。


「……罰として、この箱が空になるまで、俺の部屋から出さない」


殿下は、私の隣に座り込んだ。


「そして、俺が手ずから全部食わせてやる。……拒否権はないぞ」


殿下の耳が、少し赤い気がした。


(これは……罰ゲームなの?)


私はチョコをもぐもぐしながら思った。 甘いお菓子を、イケメン皇子に「あーん」され続ける刑。 世の女性が聞いたら、羨ましがって卒倒するかもしれない。


「(……まあ、悪くないかも)」


私はこっそりと、心のなかで微笑んだ。 もちろん、顔は鉄仮面のままだったけれど。


こうして、冤罪事件は解決し、私の「鉄仮面探偵」としての名声(?)と、殿下からの「激重溺愛」は、また一つレベルアップしてしまったのだった。

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