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その捜査、不審者につき

私は、城内を聞き込み調査して回っていた。


もちろん、不審がられないように変装(いつものヴェールと黒ドレス)をしている。 ……余計に不審者に見える気がするが、気にしている場合ではない。


まずは、現場の目撃者を探さなければ。 私は、宝物庫の警備をしていた兵士に声をかけた。


「……そこの、貴方」


「ひぃッ!? く、黒い幽霊!?」


兵士が腰を抜かした。 私はジリジリと詰め寄る。


「正直に答えなさい。あの日、何か変わったことはなかった?」


私の顔はヴェールで見えない。 だが、そこから漏れ出る気迫(緊張による硬直)は、熟練の尋問官以上だったらしい。


「い、言います! 全部言いますから呪わないでください!」


「(呪うつもりはないんだけど……)」


「あの日、貴族風の男が裏口から出ていくのを見ました! でも、偉そうな服を着てたから、怖くて声がかけられなくて……!」


「貴族風の男……。特徴は?」


「えっと、太ってて、派手な指輪をしてて、香水の匂いがキツかったです!」


貴重な証言だ。 私はメモを取った。


「ありがとう。……このことは、他言無用よ」


私は口元に指を当てた(シーッ、のつもり)。 だが、兵士には「喋ったら殺す」という暗殺者のサインに見えたらしい。


「は、はいぃぃぃッ! 墓場まで持っていきますぅぅッ!」


兵士は泡を吹いて気絶した。 ごめんなさい。あとでソフィに介抱させます。


私は次々と情報を集めた。 厨房、庭園、廊下。 行く先々で人を気絶させながら、私は「真犯人」の外堀を埋めていった。



その様子を、柱の陰から見ている男がいた。 ヴァルダス殿下である。


「……あいつ、何をしているんだ?」


殿下は困惑していた。 リリアナが、次々と城の男たち(兵士や使用人)に声をかけている。 しかも、男たちはリリアナと一言二言交わしただけで、顔を赤らめて(酸欠で)倒れていくではないか。


「(まさか、手当たり次第に誘惑しているのか!?)」


殿下の誤解が加速する。


「なんてことだ……。あの鉄仮面の下で、どんな甘い言葉を囁いているんだ? 『ねえ、私とイイことしない?』とか言ってるのか!?」


殿下はギリギリと歯ぎしりをした。 壁に爪が食い込む。


「許せん。俺ですら、まだ手も握っていない(食事の世話はしたが)というのに!」


殿下の殺気が膨れ上がる。 だが、ここで飛び出しては「浮気の現場」を押さえられない。 殿下は、血の涙を流しながら尾行を続けた。


「(待っていろリリアナ。お前を惑わす『本命の男』を見つけ出し、五体引きちぎってやるからな……!)」


一方、私。


「(ふふっ、わかってきたわ!)」


私は手帳を見返して、手応えを感じていた。 目撃証言をつなぎ合わせると、一人の人物が浮かび上がってくる。


『太っている』 『派手な指輪』 『最近、頻繁に城に出入りしている』 『金遣いが荒い』


該当者は一人。 隣国の貴族、ガストン男爵だ。 彼は外交官として滞在しているが、裏では賭博にハマって借金まみれだという噂がある。


「借金返済のために、王家の宝を盗んだのね……」


動機も十分。 あとは、証拠を掴むだけ。


「待っててね、ソフィ。私が必ず、あの男の尻尾を掴んでみせるわ」


私は拳を握りしめた。 その背後で、殿下が「必ず、あの男の首をねじ切ってみせる」と同じポーズで決意していることになど、気づきもしなかった。

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