お姉ちゃんの耳かき
妹をねこっかわいがりするお姉ちゃんと、年の離れた妹ちゃんの耳かきです。
実験的に、読むASMRを意識して書いてみました。なので台詞はお姉ちゃんだけです。
地の文は7歳前後のお利口な子の語彙をイメージしています(が、まったく正解が分かりません)。
◇登場人物◇
お姉ちゃん:おおらか。甘いものが好き。
妹ちゃん(私):大人しい。口下手。本を読むのが好き。
夜の十時。
私はお姉ちゃんの部屋の、大きくて白いベッドの上にいた。
となりにはパジャマ姿のお姉ちゃん。いっしょにお風呂に入って、いっしょに歯みがきをした後。一緒のシャンプーの香りがする。お姉ちゃんの長い髪もつやつや。
「はい。お姉ちゃんのひざ枕にどうぞー……」
ぽんぽんとひざが叩かれる。
ゆっくりと寝そべる私。頭を乗せると、パジャマごしでもふかふかな柔らかさ。
「どう? 寝心地いい? ……よかった。お姉ちゃんのひざ枕、柔らかいでしょー。最近ちょっとだけ、太っちゃったから……えへへ……」
恥ずかしそうに言うお姉ちゃん。
ふるふるとひざ枕の上で首をふる。
「ふふ、くすぐったい……。ありがとう、やさしいねぇ……」
お姉ちゃんの温かい手が、髪をなでてくれる。
お姉ちゃんの指は細くて、ブラシをかけるみたいやってくれるから気持ちいい。
「ん……じゃあ、耳かきしよっか」
いそいそとお姉ちゃんはサイドテーブルから耳かき道具を用意する。
先が細くて、耳の奥にこりっ……こりっ……って当たる竹の耳かき。
耳あかをとるためのティッシュ箱。
その間私はじっと待っている。
いつも、この時間はきんちょうしてくるような、うれしくなってくるような、そういう気持ちになる。
「よし……。頭、ちょっと動かすね。見えにくくて」
お姉ちゃんの手が私の頭を支える。それからちょっと持ち上げられる。場所のちょうせい。
それから、お姉ちゃんが前かがみになって耳をのぞこうとする。そしたら、お胸がふにっと当たる。
「あ……ごめん、当たっちゃうね。でも、こうして覗き込まないと耳の中、よく見にくくて……耳かきの間、我慢しててくれる……?」
お胸だけじゃなくて、声がぼそぼそってささやかれる感じになるのもくすぐったい。それでもがまんできるから、ひざ枕の上でうなずく。
「ん……いいこ。じゃあ……お耳引っ張って、どれくらい溜まってるか見るね」
お姉ちゃんの声はいつもやさしい。それで、耳かきのときはとくに、甘くてあったかい感じになる。いつまでも聞いていたくなる声。
耳をつまんで、軽く引っぱられる。
「わ……あらら……すごく溜まってる……。前にやってあげたの、二週間くらいまえだったよね……。その間、一人で触らなかったの? ちゃんと、我慢できた?」
うなづく。
「えら~~い……!」
そしたら、たっぷりと頭をなでられた。
はずかしくて、うれしい。
もう小学二年生だけど、こうされるたび、どうしても体から力が抜けてしまう。
「一人で触るのは危ないし……頻繁にやるのもよくないから……。お姉ちゃんにやってもらうまで、よく我慢できたね。かゆかったでしょ……?」
うん……とうなづく。
ずーっとがまんしていた。体育の後とか、お風呂の後とか、気になるとどうしても指でさわりたいときもあった。けど、やくそくしたし、ちゃんとまったら、お姉ちゃんにいっぱいほめてもらえるって分かっていたから。お姉ちゃんにたっぷり、耳かきしてもらえるって知っていたから。
だから、今すこしどきどきしている。
「すぐ、とってあげるからね……♪ じゃあ、入れていくよー……」
私はつばをのんだ。
──しゅり、こそ……
耳かきが耳のあなに入ってくる。
──かりっ。かりり……。
耳かきが、耳の手前の方にふれる。
かりっ、かりっ……ってまずはさわった感じを確かめるみたいに、やさしく耳のはだをかいてくれる。とってもやさしい力なのに、もうすごくきもちよかった。ずっとさわっていなかったから、むずむずがほぐされていくみたい。
それから、耳の中の音に、カリッ、ぱりっ……とか、かさかさした音がまじる。
手前の方だけど、もう耳あかにさわっているみたい。
それぐらいいっぱいたまってるんだ……。
じゃあ、もっといっぱいかりかりしてもらえる……。
うれしくて、私はお姉ちゃんのパジャマのすそを、きゅっとつかんだ。
──ぱりっ、かりっ……こそっ……
──かりかりかり、ぱり、ずそ……
ぺきっ、とか、ぱりっ、っていう音といっしょに耳あかがはがされて、ずそ……ごそ……と言う音をたてて、耳の中から出ていく。
そのたび、すぅっと空気が入ってくる感じ。
むずむずが取れて、耳のなかがどんどん気持ちよくなっていく。
耳かきが出ていってる間は、お姉ちゃんがよしよしって頭をなでてくれる。
「……どう? 痛くなぁい? ……気持ちいい? 良かったぁ。たくさん取れるから、お姉ちゃんも楽しいよ。さて、いっかい耳かきの先を掃除してー……」
ティッシュで耳かきをくしくしと掃除しながら、お姉ちゃんはふん、ふふん……♪って鼻歌を歌いはじめた。とってもうれしそうで、私もうれしくなる。
「きれーになった耳かきで、もーっとお耳の中、ぴかぴかにしようねぇ……♪」
もう私は赤ちゃんじゃないけど、耳かきされるとき、こうやって赤ちゃんみたいにささやかれるのも、すき。はずかしいけど……心がぽかぽかしてくるから。
きっと、もっと昔、ほんとに赤ちゃんだったころに聞いたお姉ちゃんの声を、思い出すからかな。
──かり、こり……ぺりっ。ささ……
おねえちゃんはやっぱり、耳かきがじょうず。
多分、日本でいちばんうまいかもしれない。
だって、かりっ……こりっ……ってやさしく耳かきをうごかしながら、ぺり、ぱり、すごくかんたんそうに耳あかを取ってくれるから。
それで、一度も、いたっ、てなったことがない。
──こりり、かり、かり……
──かりっ……こりっ……かり……
手前の耳あかはなくなったのかな。細かいのを取ってくれる感じで、耳のはだを、さりり……かりり……ってかいてくれる。これも、すき。耳の中をなでられてるみたいで……。
「気持ちいいー……?」
気持ちよすぎるから、んん……って、寝てるみたいなお返事しかできない。ねちゃいそうなのを、がまんする。
「んふふ。ほんとう、気持ちよさそうなお顔……。まゆがとろーんってして、手もくたってなって……。かわいー……♡」
──こりっ……かり、かり……
──くり、こり、こり……
……
「よぉーし、手前の方は綺麗になったね。じゃあ次は奥のおっきいのを取ってくから、少し待っててね……」
浅いところが終わって、いったん休けい。
足をくーってのばしてから、私もほぅっ……って息を吐く。お姉ちゃんが耳かきのお手入れをしてる間、私はくたっと力を抜いて、手もひざ枕の上に乗せて、お姉ちゃんのおひざに甘える。
パジャマの良いにおい。それに、あたまをちょっと動かすだけで、太もものやわらかさがよくわかって、ここちいい。
お姉ちゃんは太ってるってよくいうけど、ぜんぜんそんなことない。やせてる。今がいちばんのびじんさん。
だから、お風呂あがり、いっしょにデザートをたべるときも、ひかえめにしないでほしい。
甘いものを食べてるときのお姉ちゃんが、一番かわいいと思うから……。
そんなことを考えているうちに、お手入れも終わったみたい。
頭をぽんぽんってなでられる。それが、もっかいはじめるよ、の合図。
「奥の方触るの、怖くない……? そっか、ふふ……良かったぁ、むしろ、楽しみなんだ……♪ 前のときに触ったの、気持ち良かった……?」
……うなづく。
「うんうん、前もすごく気持ちよさそうで….最後は寝ちゃいそうだったもんねぇ……」
そう言った後、お姉ちゃんはいたずらっぽくくすくす笑った。
それから、ひそひそ話するみたいに、耳元でささかれる。
「今日も、気持ちよくなったら、いつでも寝ちゃっていいからねー……。ベッドの上だし……そのまま一緒に、添い寝してあげるから……」
声がくすぐったくて、体をよじっちゃう。
お姉ちゃんがくすくすと笑った。
「ごめんごめん、くすぐったかったよね……♪ はぁ、もう……つい可愛くて、甘やかしたくなっちゃう……。がまんがまん……!」
お姉ちゃんが自分のほっぺを軽くぺちぺち触る。ふうっと息を吐いて、気合を入れなおした感じだ。
「さぁて、気を取り直して….奥の方やってこうね。お耳、もっかい触るよ。ふふ、可愛いお耳が、赤くなってる……。リラックスして、ぽかぽかしてきたのかな……。じゃあ、いれるよー……」
──しゅり、こそ……
──こりっ。……パリっ……
とっても大きな音がして、少しびっくりした。でも体は動かなかった。ぜんぜん痛くなかったから。
深いとこをコリコリ、カリカリされる。耳あかもカサコソ動いては、つかまったのがずぞぞー……と耳からかきだされていく。
さっきの場所とは全然違うひびき……。
──こり、くり、ごそっ……。
──かりっ、がさっ……こそ……。
「わぁ……取れる取れる、おっきいのが簡単に、ぽろぽろって……。取り甲斐あるぅ……♪」
お姉ちゃんの声もさっきより楽しそう。
「〜〜……♪」
もっかい、鼻歌。
おねえちゃんのかわいいくせ。いい気分のとき、
──くりっ、くりっ……こりっ、ぱりっ……。
──がさっ、かり……ぽり……ごそ……。
──かり……こり……。
……
「……ふぅ。はい、こっちは綺麗になったよー。いい子で出来ましたっ……♪」
その声で、私もハッとした。
寝たわけじゃなかったけど、すっかり夢ごこちで、いつの間にか左耳がすっきりしていた。
お姉ちゃんは気づいてたのかな。マッサージみたいに、上側のほっぺたを、もちもちとなでられる。
「じゃあ、こっち側の最後に、いつもの仕上げするね?」
そのまま、お姉ちゃんがかがんで、ぐにっとお胸がおしつけられる。
くちびるの動く音が、耳のすぐ近くで聞こえる。
「い、く、よ?」
『いつもの仕上げ』。
私はその言葉を聞いて、どきりとしながら、きゅっと口を閉じた。
いつも、それをされると、変な声がでてしまいそうになるから。
「すぅ……、
ふぅ〜ー〜ー…………」
お耳の中に息がふきこまれる。
耳の中が、ぼふぼふと揺れる。
こそばゆくて、あったかい。結んでいたくちびるからも力が抜けて、開いちゃう……。
これも、好き……。
「んふふ、気持ち良かった? ──もういっかい? うんっ……いいよぉ……。
いくよぉ……?
すぅ……、
ふぅ〜ー〜ー〜ー………………」
二回目は、
「お耳、ふーってすると、目がとろーん……ってなっちゃうね……。かわいー……♡」
さらり……さらり……とお疲れさまを言われるみたいに、大きく手ぐしで髪をとかれてから、ぽんぽんと頭をなでられる。
「……よし。じゃあ反対がわもやろっか」
こくっとうなづく。
私が耳かきで好きなのは、こんなにきもちいいのに、一度で二回もしてもらえるところ。
その間ずっと、お姉ちゃんに甘えていていいところ。
「お姉ちゃんのお腹の方に、ごろーんってしようねぇ。そう……ごろーん……♪」
……ごろー……ん。
ひざ枕の上で体を寝っころがえした。ベッドがきしっと音をたてる。いきおいあまって、ふかりと、鼻からお姉ちゃんのパジャマにうまってしまう。
お姉ちゃんが痛くなってなかったか、顔を起こして見上げようとしたら、むしろ、とってもうれしそうな顔をしていた。
「ああ、もう……上手にできました♪ ご褒美の……ぎゅ〜〜……!」
わぷ。
お姉ちゃんはいきなり体をかがめて、私の頭をつつみこんだ。ひざ枕とお胸に挟まれて、世界はまっくら。すごくあたたかい。
息を吸えば、お姉ちゃんのにおいだけ感じる。声を出そうとしても、口が太ももに当たっていて、むーとなって、お姉ちゃんがくすぐったそうにするだけだ。
でも、鼻は太ももと太ももの間におさまっていたから、苦しくはなかった。
そのうち、私は声をだそうとするのもやめて、されるがまま、くたっと力を抜いた。
まだぎゅー……とされたまま、ささやかれる。
「ごめんね……びっくりした? もうちょっとだけ、こうさせてね……」
とくん……どくん……。
お姉ちゃんの心臓の音が聞こえてくる。
ゆっくりとしたリズムで、お姉ちゃんもリラックスしているのが分かる。
それからちょっとしたあと、お姉ちゃんが抱きしめるのをやめてくれた。ぷはあと息をする。
「はぁ〜〜……充電完了〜〜……♪」
お姉ちゃんは気持ちよさそうに息を吐いた。
それから猫ちゃんをかわいがるときみたいに、私のあごの下をすりすりとなでる。
「……ごめんね? 苦しくなかった? ……うん、うん……よかったぁ。ごろんってこっちを向いてくれたときにね、こんなに身を任せてくれてるー……って思ったら、嬉しくなって……」
恥ずかしそうに言ってから、あごの下をなでていた指は、耳の方にやってくる。
「だから、こっち側でたっぷりお返しさせてもらうね。今、お姉ちゃんやる気さいきょーだから……」
すりすりと耳をもんでから、耳かきのじゅんびもかんりょう。
「いくよ〜……?」
ささやき声も、とっても集中している感じだった。
──かりっ、こりっ。
──かりっ。かりり……かりっ、こりっ。
まずは手前側から。けど、さっきよりスピードがちょっと早いかも?
だからと言って、痛くなったなんてことはなかった。気持ちいいくらい、てきぱき耳あかが取られていく。むずむずするひまもなく、耳がすっきりしていく。
──かりっ、ぐりっ……。
──こりっ、ぽりっ……こりっ、かりり……。
──こしゅ……。
一度、耳かきが抜かれて、きゅうけい。わたしもほっとひといき。
お姉ちゃんがふふふと笑う。
「だんだん、息も深くなってきたね……眼も瞑っちゃった……」
そのとおり、わたしももう、目をつむってるほうが楽になってしまった。
また髪がなでられる。
「もおっと、リラックスしてね……」
そうは言うけど、お姉ちゃんだって一緒だった。
ずうっと聞こえている息の音が、とてもリラックスした感じに聞こえる。
「手前、あとちょっとで綺麗になるよー……。残りの、かりかりー……ってかき集めていくねー……」
お姉ちゃんの言う通り、それから後片付けするみたいに、耳かきは浅いところを、まんべんなくかいてくれる。
──かり、かりっ、かり、かりっ……さっ、さっ……。
──かきかき……かり、かり……さり……ざり……。
「よぉし……こっち側も、手前終わり。──最後にぃ……奥の方をー……やってくよー……♪」
お姉ちゃんは段々と近づいてくるみたいに、耳元で囁いてきた。私のくすぐったがる表情を楽しんでいるみたい。だって、ふふっと楽しそうに笑ったのも聞こえたから。
「……ね、その前に、聞いていい?」
それから、ちょっと声のトーンが変わった。
「こっち側の奥にね、すごくおっきくて、剥がれそうな感じの耳垢があるの。見てるだけで痒そうなやつ……。こっちのお耳の奥、もしかして今日まですごく、違和感あったんじゃない……?」
言う通りだったから、うんうんと頷く。
「お姉ちゃんと約束したから……今日まで痒いの、ずっと我慢しててくれたの?」
うん、と頷く。
お姉ちゃんの、もどかしそうで、それでいてどこかうれしそうな声。
「……気づかなくて、ごめんね。今度から、我慢できないくらい痒くなったら、すぐお姉ちゃんに言っていいからね。2週間じゃなくても、すぐ耳かきしてあげるから……」
またなでられるんだけど、手つきはさっきまでのよりも、もっと優しい。よしよし、えらいえらいと褒められている気がする。
それから、ふぅっ……と集中する感じでお姉ちゃんは息をはく。
やさしく耳を持ちなおた。
「よぉし。がまんしてくれた分、気持ちよーく耳かきしてあげる……。痒いとこ、いっぱい、こりこりー……って、したげるからね……」
話しかけられる間、耳の外がわをずっとすりすり……くに……ともまれていた。
ゆっくりと耳の穴がひろがる。かさ……と耳の中で動く音が聞こえた。
きっと、耳の中でおっきいのが動いたのだ。
「ん……これでよく見えるかな。んっ……しょ……。また、おっぱい当たっちゃうけど、許してね。覗き込まないと、上手く取れなさそうだから……。入れてくよー……」
さっきむぎゅうとされたときのように、また私の頭はいろんなものにつつみこまれる。
のぞきこむお姉ちゃんの息も、耳にかかって、あたたかくて、こそばゆくて……。
そのまま、耳かきが奥のほうまではいってくる。
──くりっ……ごりっ……ばりっ……!
すごい音がした。
大きな耳あかは耳かきがさわっただけで、かんたんに動いたみたい。
ぴくんと頭がゆれかけるけど、お姉ちゃんのお胸に受けとめられてしまった。
すぐお姉ちゃんは気づいてくれる。
「わ……もしかして、痛かった? ……ああ、よかった。でも、くすぐったかったんだよね。うーん……」
お姉ちゃんは耳かきを抜いて、どうしようかなやましげ。その間、お姉ちゃんは空いた方の指を耳の中に入れて、いじいじしてくれた。ほったらかしだともどかしかったと思う耳の中も、指ですりすりこすられていると、ちょっと楽だった。
それから、「うんっ」とお姉ちゃんが言うから、作戦はきまったようだった。
「ねぇねぇ。もっとくすぐったいだろうけど……もう少しだけ、強めに触ってもいいかな? すごく軽い力でぐらっと動いたから、このまま丸ごと取っちゃった方が、我慢しなくていいと思うの」
うんっ、と頷く。
「ありがとぉ……♪ じゃあ、このまま入れるよ。あとほんのちょっとだけ、我慢だよー……?」
──がりっ……ごりっ!
またおっきい音。それに、さっきよりさわりかたも強め。
ごくんとつばをのむ。
──ざりっ……がりっ……・
──ばりっ……! ぱり……かり、がりっ……かり……。
──ざり……ざっ……。ぐりっ……。
耳の深いところで、がさごそ、おっきいのが動いている。中々たおれないボスキャラみたいに、しつこくねばっては、耳の奥でひっかかってる。
耳あかが、奥のほうでもくねったところにあるっぽいからなのかな……? 骨っぽいというか、こりこりしたところに耳あかも、耳かきも当たるから、またとってもくすぐったい。
がまんするため、お姉ちゃんの声に耳を澄ませる。
「……すぅ……。んっ……。んー……。むぅ……」
集中しきっているお姉ちゃんの声をきいていると、なんだか落ちついてくる。
そのうち、耳の中でのがさっ、ごそっと言う音がどんどん大きくなってきた。
もうほとんどはがれかけみたい。
んっとくちびるをむすんだ。
──がりっ、がりっ、ごりっ……ぺり……
──がりっ、がぼ……ぺき…………
──ばりっ……!
「と……れ、たぁっ……!」
──がぼっ、ざず、ずぞぞ……
耳の中を引っかきながら、外へ引きずり出されていく耳あか。
ころんと耳の中から出た後、外の音がなんだかきれいに聞こえた。
ティッシュで耳かきをぬぐって、耳あかを落とした後……「よしよし、えらいえらい……♡」と頭を撫でてくれる。
「よく頑張ったねぇ……。お耳の中、すっきりした? ……うん、うん、そうだよね。耳垢は取れたけど、まだ、お顔がもどかしそうだもん。ずっと我慢してたんだから、むずむず取れないよね……」
そして、寝かしつける前に見たいに囁いてくれるのも、またクリアに聞こえた。
「取れたあとのとこ、いーっぱい耳かきしようね。むずむずがなくなるまでやってあげるから、お姉ちゃんに教えてね……」
ゆっくり耳かきが入ってきて、さっき大きいのが取れたばかりのところにふれる。
変な声が出ちゃいそうになるのをがまんした。
──こりっ……かりっ……。
「んふふ。一瞬、お口がきゅってなった。やっぱり、かゆいのはここだよね」
──かりっ……こりっ……。
──さりっ……かり……。
大物が無くなって、優しい音に変わった。
──くりっ……こ、りっ……。
でも、骨っぽいところに引っ掛かるような感じがくすぐったいのは、変わらない。
「あ、今ぴくってした。ここ、気持ちいいんだ……?」
──かりっ、こりっ。
──くりっ、こ、りっ。
「奥まったとこの……うらっかわだね。ん、もっとかりかりしてあげる……」
お姉ちゃんに、一番かゆいところがバレてしまった。
耳かきはおんなじ所をかりこりと触る。その度、頭が動くのをがまんできない。
んっ、とか、んぅ、とかいう声も、どうしても出てしまう。
お姉ちゃんはとってもうれしそう。
「ああもう……かわいー……♡ 触るたび、お顔がとろんってするの……。これくらいの力で、こりっ、こりってするのがいいんだね……。じゃあ……力加減は変えないまま、ちょっとだけ早く耳かきしてあげる。きっと、もっと、気持ちいー……ってなるからね……」
私の顔もそうだけど、お姉ちゃんの囁き声だって、なんだかとろんとしてきていた。
耳かきがさっきより少しだけ深めに、耳の奥に当たる。
──かりっ。
それから、一掻き。
そして──。
──かりかりかりっ……かりかり……かきかりかき……
耳かきが、気持ちいところをくりくり、早い感じでさわる。
ずっとがまんしていたむずむずが、ほぐされて、かきあつめられて、かきだされていく感じ。
ぎゅっと手をにぎりしめた。
お姉ちゃんにもきっと、私がきもちいいのにたえているのが見えているはずなのに……今度はぜんぜん、手をゆるめてはくれなかった。
──こりこりこりっ、かりかり……かきかきかき……
──かりかりかりっ……こりこり……かりっ、かりっ、かりっ。
「……ね、きもちいいでしょ?
──かきっ、かきっ……さり……。
ふぅ、とお姉ちゃんの一息。
「これくらいかなぁ。これ以上やっちゃうと、お耳の中赤くなっちゃうから……。どーぉ? お耳痒いの、収まった?」
うん……と頷く。
お姉ちゃんの、満足そうな笑い声。
それから、くちびるが耳へ近づいてくる。
あぁ、しあげだ。
もう、がまんする力が、残ってないのに……。
「すぅ…………──
──ふぅー~ー~ー………………」
いっぱい耳かきされて、温まった感じのする耳の中が、お姉ちゃんの息でふぅーっとさまされる。
口があいちゃう……。
「もーいっかいっ……。
すぅー…………──
──ふぅー~ー~ー~ー………………」
仕上げが終わった。
そして、何秒かくらい、しんとした静けさ。
私はその間に、ゆっくり息をすって、はいた。
お姉ちゃんが耳かきを置いて、あったかい手で私の頭を包む。
「おーーしまい……♪ お疲れ様でした。どっちのお耳も、きれーになったよー……♡」
もちもちと、優しくほっぺたをもまれる。
やっぱり思うけど、お姉ちゃんは、私のほっぺをさわるのが好きだ。
「お顔もおてても、くたっとなってる……。そろそろ、眠たくなっちゃったね……? うん……♪ お姉ちゃんの言う通り、歯磨きしといてよかったでしょ? このまま、一緒に寝ちゃえるもんねー……」
こくりとうなづく。
耳かきもうれしいけど、お姉ちゃんといっしょにねられるのも、うれしかった。
……
ティッシュとか、耳かき棒とか。耳かきの後片付けの後。
お姉ちゃんの腕が私の体をだき起こして、ぎゅっと一度抱きしめてくれる。
私も、お姉ちゃんの背中に手を回して、ハグのお返しをする。そしたら、またお姉ちゃんがぎゅうともっと抱きしめてくれる。
それから、お姉ちゃんの手がささえてくれるまま、ベッドへやさしく寝かしつけられる。
真っ白で、私のつかっているのよりおっきい布団をかけながら……。
お姉ちゃんと一緒に、かたまで布団をかぶさる。
お姉ちゃんは、ベッドの上のテーブルからリモコンを取って、ピッ、と、リモコンでお部屋の電気を暗くした。真っ暗じゃなくて、少し明かりが残る感じ。私が真っ暗で寝られないから、お姉ちゃんが合わせてくれたんだ。
お姉ちゃんのうでが私の体をだきよせてくれた。手が私の背中に回されて、ぽんぽんとさすってくれる。
思わず、すごくゆっくり息をはいてしまう。
お姉ちゃんはいつもお顔向かい合わせで、そい寝してくれる。
「ふわ……。はぁ、体、あったかい……。お姉ちゃんの方が先に寝ちゃいそう……」
お姉ちゃんは可愛くあくびしながら、私の体をもっと近くへ引き寄せた。ふかりと、やわらかいお胸にあごがのっちゃう。
布団の中でも、足が触れあった。お姉ちゃんの足の方が、ひやりと冷たかった。
だから、私はお姉ちゃんの足の間に、自分の足をさしこんだ。
「わ……足まで、ぽかぽか……。でも……逆に、お姉ちゃんの足、冷たくない?」
ふるふると首を振った。もうちゃんと声をだせないくらい、寝ちゃいそうだったから、お姉ちゃんの耳元でささやく。
こしょ……こしょ……。
「……え、あっためてくれてるの……? ……んも~~……♪」
そしたらもっと、ぎゅうっと、だきよせられた。お胸に顔がうずまりそうだった。
息ができるように顔をあげたら、すりすりと、ほおずりされる。
「はぁ……私、お姉ちゃんでよかったぁ……♪」
とっても甘い声。すごく嬉うれしくて、私も、と返す。
んふふ、とお姉ちゃんが幸せそうな顔してくれたから、私も幸せだった。
ベッドの中も、お姉ちゃんの体も、二人ぶんの体温で、すぐぽかぽかしてきた。
静かになったら、二人の寝息だけが聞こえてきた。私は、お姉ちゃんのお胸に顔をうずめた。
そしたら、とく……とく……とお胸の音もひびいてくる。
聞いているだけで、ぼんやりとしてくるくらい、ここちいい。
背中をだきしめてくれるお姉ちゃんの手が、後ろの髪も、なでてくれる。
そのままふたり、ぐっすりとねむりについた。




