表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百合耳かき  作者:
5/6

お姉ちゃんの耳かき

妹をねこっかわいがりするお姉ちゃんと、年の離れた妹ちゃんの耳かきです。

実験的に、読むASMRを意識して書いてみました。なので台詞はお姉ちゃんだけです。

地の文は7歳前後のお利口な子の語彙をイメージしています(が、まったく正解が分かりません)。


◇登場人物◇

お姉ちゃん:おおらか。甘いものが好き。

妹ちゃん(私):大人しい。口下手。本を読むのが好き。

 夜の十時。

 私はお姉ちゃんの部屋の、大きくて白いベッドの上にいた。

 となりにはパジャマ姿のお姉ちゃん。いっしょにお風呂に入って、いっしょに歯みがきをした後。一緒のシャンプーの香りがする。お姉ちゃんの長い髪もつやつや。


「はい。お姉ちゃんのひざ枕にどうぞー……」


 ぽんぽんとひざが叩かれる。

 ゆっくりと寝そべる私。頭を乗せると、パジャマごしでもふかふかな柔らかさ。


「どう? 寝心地いい? ……よかった。お姉ちゃんのひざ枕、柔らかいでしょー。最近ちょっとだけ、太っちゃったから……えへへ……」


 恥ずかしそうに言うお姉ちゃん。

 ふるふるとひざ枕の上で首をふる。


「ふふ、くすぐったい……。ありがとう、やさしいねぇ……」


 お姉ちゃんの温かい手が、髪をなでてくれる。

 お姉ちゃんの指は細くて、ブラシをかけるみたいやってくれるから気持ちいい。


「ん……じゃあ、耳かきしよっか」


 いそいそとお姉ちゃんはサイドテーブルから耳かき道具を用意する。

 先が細くて、耳の奥にこりっ……こりっ……って当たる竹の耳かき。

 耳あかをとるためのティッシュ箱。

 その間私はじっと待っている。

 いつも、この時間はきんちょうしてくるような、うれしくなってくるような、そういう気持ちになる。


「よし……。頭、ちょっと動かすね。見えにくくて」


 お姉ちゃんの手が私の頭を支える。それからちょっと持ち上げられる。場所のちょうせい。

 それから、お姉ちゃんが前かがみになって耳をのぞこうとする。そしたら、お胸がふにっと当たる。


「あ……ごめん、当たっちゃうね。でも、こうして覗き込まないと耳の中、よく見にくくて……耳かきの間、我慢しててくれる……?」


 お胸だけじゃなくて、声がぼそぼそってささやかれる感じになるのもくすぐったい。それでもがまんできるから、ひざ枕の上でうなずく。


「ん……いいこ。じゃあ……お耳引っ張って、どれくらい溜まってるか見るね」


 お姉ちゃんの声はいつもやさしい。それで、耳かきのときはとくに、甘くてあったかい感じになる。いつまでも聞いていたくなる声。

 耳をつまんで、軽く引っぱられる。


「わ……あらら……すごく溜まってる……。前にやってあげたの、二週間くらいまえだったよね……。その間、一人で触らなかったの? ちゃんと、我慢できた?」


 うなづく。


「えら~~い……!」


 そしたら、たっぷりと頭をなでられた。

 はずかしくて、うれしい。

 もう小学二年生だけど、こうされるたび、どうしても体から力が抜けてしまう。

 

「一人で触るのは危ないし……頻繁にやるのもよくないから……。お姉ちゃんにやってもらうまで、よく我慢できたね。かゆかったでしょ……?」

 

 うん……とうなづく。 

 ずーっとがまんしていた。体育の後とか、お風呂の後とか、気になるとどうしても指でさわりたいときもあった。けど、やくそくしたし、ちゃんとまったら、お姉ちゃんにいっぱいほめてもらえるって分かっていたから。お姉ちゃんにたっぷり、耳かきしてもらえるって知っていたから。

 だから、今すこしどきどきしている。


「すぐ、とってあげるからね……♪ じゃあ、入れていくよー……」

 

 私はつばをのんだ。


──しゅり、こそ……


 耳かきが耳のあなに入ってくる。


──かりっ。かりり……。


 耳かきが、耳の手前の方にふれる。

 かりっ、かりっ……ってまずはさわった感じを確かめるみたいに、やさしく耳のはだをかいてくれる。とってもやさしい力なのに、もうすごくきもちよかった。ずっとさわっていなかったから、むずむずがほぐされていくみたい。

 それから、耳の中の音に、カリッ、ぱりっ……とか、かさかさした音がまじる。

 手前の方だけど、もう耳あかにさわっているみたい。

 それぐらいいっぱいたまってるんだ……。

 じゃあ、もっといっぱいかりかりしてもらえる……。

 うれしくて、私はお姉ちゃんのパジャマのすそを、きゅっとつかんだ。


──ぱりっ、かりっ……こそっ……

──かりかりかり、ぱり、ずそ……


 ぺきっ、とか、ぱりっ、っていう音といっしょに耳あかがはがされて、ずそ……ごそ……と言う音をたてて、耳の中から出ていく。

 そのたび、すぅっと空気が入ってくる感じ。

 むずむずが取れて、耳のなかがどんどん気持ちよくなっていく。


 耳かきが出ていってる間は、お姉ちゃんがよしよしって頭をなでてくれる。


「……どう? 痛くなぁい? ……気持ちいい? 良かったぁ。たくさん取れるから、お姉ちゃんも楽しいよ。さて、いっかい耳かきの先を掃除してー……」


 ティッシュで耳かきをくしくしと掃除しながら、お姉ちゃんはふん、ふふん……♪って鼻歌を歌いはじめた。とってもうれしそうで、私もうれしくなる。


「きれーになった耳かきで、もーっとお耳の中、ぴかぴかにしようねぇ……♪」


 もう私は赤ちゃんじゃないけど、耳かきされるとき、こうやって赤ちゃんみたいにささやかれるのも、すき。はずかしいけど……心がぽかぽかしてくるから。

 きっと、もっと昔、ほんとに赤ちゃんだったころに聞いたお姉ちゃんの声を、思い出すからかな。


──かり、こり……ぺりっ。ささ……


 おねえちゃんはやっぱり、耳かきがじょうず。

 多分、日本でいちばんうまいかもしれない。

 だって、かりっ……こりっ……ってやさしく耳かきをうごかしながら、ぺり、ぱり、すごくかんたんそうに耳あかを取ってくれるから。

 それで、一度も、いたっ、てなったことがない。


──こりり、かり、かり……

──かりっ……こりっ……かり……


 手前の耳あかはなくなったのかな。細かいのを取ってくれる感じで、耳のはだを、さりり……かりり……ってかいてくれる。これも、すき。耳の中をなでられてるみたいで……。

 

「気持ちいいー……?」


 気持ちよすぎるから、んん……って、寝てるみたいなお返事しかできない。ねちゃいそうなのを、がまんする。


「んふふ。ほんとう、気持ちよさそうなお顔……。まゆがとろーんってして、手もくたってなって……。かわいー……♡」


──こりっ……かり、かり……

──くり、こり、こり……


 


 ……


「よぉーし、手前の方は綺麗になったね。じゃあ次は奥のおっきいのを取ってくから、少し待っててね……」


 浅いところが終わって、いったん休けい。

 足をくーってのばしてから、私もほぅっ……って息を吐く。お姉ちゃんが耳かきのお手入れをしてる間、私はくたっと力を抜いて、手もひざ枕の上に乗せて、お姉ちゃんのおひざに甘える。

 パジャマの良いにおい。それに、あたまをちょっと動かすだけで、太もものやわらかさがよくわかって、ここちいい。

 お姉ちゃんは太ってるってよくいうけど、ぜんぜんそんなことない。やせてる。今がいちばんのびじんさん。

 だから、お風呂あがり、いっしょにデザートをたべるときも、ひかえめにしないでほしい。

 甘いものを食べてるときのお姉ちゃんが、一番かわいいと思うから……。


 そんなことを考えているうちに、お手入れも終わったみたい。

 頭をぽんぽんってなでられる。それが、もっかいはじめるよ、の合図。


「奥の方触るの、怖くない……? そっか、ふふ……良かったぁ、むしろ、楽しみなんだ……♪  前のときに触ったの、気持ち良かった……?」


 ……うなづく。


「うんうん、前もすごく気持ちよさそうで….最後は寝ちゃいそうだったもんねぇ……」


 そう言った後、お姉ちゃんはいたずらっぽくくすくす笑った。

 それから、ひそひそ話するみたいに、耳元でささかれる。


「今日も、気持ちよくなったら、いつでも寝ちゃっていいからねー……。ベッドの上だし……そのまま一緒に、添い寝してあげるから……」


 声がくすぐったくて、体をよじっちゃう。

 お姉ちゃんがくすくすと笑った。


「ごめんごめん、くすぐったかったよね……♪ はぁ、もう……つい可愛くて、甘やかしたくなっちゃう……。がまんがまん……!」


 お姉ちゃんが自分のほっぺを軽くぺちぺち触る。ふうっと息を吐いて、気合を入れなおした感じだ。


「さぁて、気を取り直して….奥の方やってこうね。お耳、もっかい触るよ。ふふ、可愛いお耳が、赤くなってる……。リラックスして、ぽかぽかしてきたのかな……。じゃあ、いれるよー……」


──しゅり、こそ……

──こりっ。……パリっ……


 とっても大きな音がして、少しびっくりした。でも体は動かなかった。ぜんぜん痛くなかったから。

 深いとこをコリコリ、カリカリされる。耳あかもカサコソ動いては、つかまったのがずぞぞー……と耳からかきだされていく。

 さっきの場所とは全然違うひびき……。


──こり、くり、ごそっ……。

──かりっ、がさっ……こそ……。


「わぁ……取れる取れる、おっきいのが簡単に、ぽろぽろって……。取り甲斐あるぅ……♪」


 お姉ちゃんの声もさっきより楽しそう。


「〜〜……♪」


 もっかい、鼻歌。

 おねえちゃんのかわいいくせ。いい気分のとき、


──くりっ、くりっ……こりっ、ぱりっ……。

──がさっ、かり……ぽり……ごそ……。


──かり……こり……。


 ……


「……ふぅ。はい、こっちは綺麗になったよー。いい子で出来ましたっ……♪」


 その声で、私もハッとした。

 寝たわけじゃなかったけど、すっかり夢ごこちで、いつの間にか左耳がすっきりしていた。

 お姉ちゃんは気づいてたのかな。マッサージみたいに、上側のほっぺたを、もちもちとなでられる。


「じゃあ、こっち側の最後に、いつもの仕上げするね?」


 そのまま、お姉ちゃんがかがんで、ぐにっとお胸がおしつけられる。

 くちびるの動く音が、耳のすぐ近くで聞こえる。


「い、く、よ?」


 『いつもの仕上げ』。

 私はその言葉を聞いて、どきりとしながら、きゅっと口を閉じた。

 いつも、それをされると、変な声がでてしまいそうになるから。


「すぅ……、

 ふぅ〜ー〜ー…………」


 お耳の中に息がふきこまれる。

 耳の中が、ぼふぼふと揺れる。

 こそばゆくて、あったかい。結んでいたくちびるからも力が抜けて、開いちゃう……。

 これも、好き……。


「んふふ、気持ち良かった? ──もういっかい? うんっ……いいよぉ……。

 いくよぉ……?

 すぅ……、

 ふぅ〜ー〜ー〜ー………………」


 二回目は、


「お耳、ふーってすると、目がとろーん……ってなっちゃうね……。かわいー……♡」


 さらり……さらり……とお疲れさまを言われるみたいに、大きく手ぐしで髪をとかれてから、ぽんぽんと頭をなでられる。


「……よし。じゃあ反対がわもやろっか」


 こくっとうなづく。

 私が耳かきで好きなのは、こんなにきもちいいのに、一度で二回もしてもらえるところ。

 その間ずっと、お姉ちゃんに甘えていていいところ。


「お姉ちゃんのお腹の方に、ごろーんってしようねぇ。そう……ごろーん……♪」


 ……ごろー……ん。

 ひざ枕の上で体を寝っころがえした。ベッドがきしっと音をたてる。いきおいあまって、ふかりと、鼻からお姉ちゃんのパジャマにうまってしまう。

 お姉ちゃんが痛くなってなかったか、顔を起こして見上げようとしたら、むしろ、とってもうれしそうな顔をしていた。

 

「ああ、もう……上手にできました♪  ご褒美の……ぎゅ〜〜……!」


 わぷ。

 お姉ちゃんはいきなり体をかがめて、私の頭をつつみこんだ。ひざ枕とお胸に挟まれて、世界はまっくら。すごくあたたかい。

 息を吸えば、お姉ちゃんのにおいだけ感じる。声を出そうとしても、口が太ももに当たっていて、むーとなって、お姉ちゃんがくすぐったそうにするだけだ。

 でも、鼻は太ももと太ももの間におさまっていたから、苦しくはなかった。

 そのうち、私は声をだそうとするのもやめて、されるがまま、くたっと力を抜いた。


 まだぎゅー……とされたまま、ささやかれる。


「ごめんね……びっくりした? もうちょっとだけ、こうさせてね……」


 とくん……どくん……。


 お姉ちゃんの心臓の音が聞こえてくる。

 ゆっくりとしたリズムで、お姉ちゃんもリラックスしているのが分かる。


 それからちょっとしたあと、お姉ちゃんが抱きしめるのをやめてくれた。ぷはあと息をする。


「はぁ〜〜……充電完了〜〜……♪」


 お姉ちゃんは気持ちよさそうに息を吐いた。

 それから猫ちゃんをかわいがるときみたいに、私のあごの下をすりすりとなでる。


「……ごめんね? 苦しくなかった? ……うん、うん……よかったぁ。ごろんってこっちを向いてくれたときにね、こんなに身を任せてくれてるー……って思ったら、嬉しくなって……」


 恥ずかしそうに言ってから、あごの下をなでていた指は、耳の方にやってくる。


「だから、こっち側でたっぷりお返しさせてもらうね。今、お姉ちゃんやる気さいきょーだから……」


 すりすりと耳をもんでから、耳かきのじゅんびもかんりょう。


「いくよ〜……?」


 ささやき声も、とっても集中している感じだった。


──かりっ、こりっ。

──かりっ。かりり……かりっ、こりっ。


 まずは手前側から。けど、さっきよりスピードがちょっと早いかも?

 だからと言って、痛くなったなんてことはなかった。気持ちいいくらい、てきぱき耳あかが取られていく。むずむずするひまもなく、耳がすっきりしていく。


──かりっ、ぐりっ……。

──こりっ、ぽりっ……こりっ、かりり……。

──こしゅ……。


 一度、耳かきが抜かれて、きゅうけい。わたしもほっとひといき。

 お姉ちゃんがふふふと笑う。


「だんだん、息も深くなってきたね……眼も瞑っちゃった……」


 そのとおり、わたしももう、目をつむってるほうが楽になってしまった。

 また髪がなでられる。


「もおっと、リラックスしてね……」


 そうは言うけど、お姉ちゃんだって一緒だった。

 ずうっと聞こえている息の音が、とてもリラックスした感じに聞こえる。


「手前、あとちょっとで綺麗になるよー……。残りの、かりかりー……ってかき集めていくねー……」


 お姉ちゃんの言う通り、それから後片付けするみたいに、耳かきは浅いところを、まんべんなくかいてくれる。


──かり、かりっ、かり、かりっ……さっ、さっ……。

──かきかき……かり、かり……さり……ざり……。


 

「よぉし……こっち側も、手前終わり。──最後にぃ……奥の方をー……やってくよー……♪」


 お姉ちゃんは段々と近づいてくるみたいに、耳元で囁いてきた。私のくすぐったがる表情を楽しんでいるみたい。だって、ふふっと楽しそうに笑ったのも聞こえたから。


「……ね、その前に、聞いていい?」


 それから、ちょっと声のトーンが変わった。


「こっち側の奥にね、すごくおっきくて、剥がれそうな感じの耳垢があるの。見てるだけで痒そうなやつ……。こっちのお耳の奥、もしかして今日まですごく、違和感あったんじゃない……?」


 言う通りだったから、うんうんと頷く。


「お姉ちゃんと約束したから……今日まで痒いの、ずっと我慢しててくれたの?」


 うん、と頷く。

 お姉ちゃんの、もどかしそうで、それでいてどこかうれしそうな声。


「……気づかなくて、ごめんね。今度から、我慢できないくらい痒くなったら、すぐお姉ちゃんに言っていいからね。2週間じゃなくても、すぐ耳かきしてあげるから……」


 またなでられるんだけど、手つきはさっきまでのよりも、もっと優しい。よしよし、えらいえらいと褒められている気がする。

 それから、ふぅっ……と集中する感じでお姉ちゃんは息をはく。

 やさしく耳を持ちなおた。

 

「よぉし。がまんしてくれた分、気持ちよーく耳かきしてあげる……。痒いとこ、いっぱい、こりこりー……って、したげるからね……」


 話しかけられる間、耳の外がわをずっとすりすり……くに……ともまれていた。

 ゆっくりと耳の穴がひろがる。かさ……と耳の中で動く音が聞こえた。

 きっと、耳の中でおっきいのが動いたのだ。


「ん……これでよく見えるかな。んっ……しょ……。また、おっぱい当たっちゃうけど、許してね。覗き込まないと、上手く取れなさそうだから……。入れてくよー……」


 さっきむぎゅうとされたときのように、また私の頭はいろんなものにつつみこまれる。

 のぞきこむお姉ちゃんの息も、耳にかかって、あたたかくて、こそばゆくて……。

 そのまま、耳かきが奥のほうまではいってくる。


──くりっ……ごりっ……ばりっ……!


 すごい音がした。

 大きな耳あかは耳かきがさわっただけで、かんたんに動いたみたい。

 ぴくんと頭がゆれかけるけど、お姉ちゃんのお胸に受けとめられてしまった。

 すぐお姉ちゃんは気づいてくれる。

 

「わ……もしかして、痛かった? ……ああ、よかった。でも、くすぐったかったんだよね。うーん……」


 お姉ちゃんは耳かきを抜いて、どうしようかなやましげ。その間、お姉ちゃんは空いた方の指を耳の中に入れて、いじいじしてくれた。ほったらかしだともどかしかったと思う耳の中も、指ですりすりこすられていると、ちょっと楽だった。

 それから、「うんっ」とお姉ちゃんが言うから、作戦はきまったようだった。

 

「ねぇねぇ。もっとくすぐったいだろうけど……もう少しだけ、強めに触ってもいいかな? すごく軽い力でぐらっと動いたから、このまま丸ごと取っちゃった方が、我慢しなくていいと思うの」


 うんっ、と頷く。


「ありがとぉ……♪ じゃあ、このまま入れるよ。あとほんのちょっとだけ、我慢だよー……?」


──がりっ……ごりっ! 


 またおっきい音。それに、さっきよりさわりかたも強め。

 ごくんとつばをのむ。


──ざりっ……がりっ……・

──ばりっ……! ぱり……かり、がりっ……かり……。

──ざり……ざっ……。ぐりっ……。


 耳の深いところで、がさごそ、おっきいのが動いている。中々たおれないボスキャラみたいに、しつこくねばっては、耳の奥でひっかかってる。

 耳あかが、奥のほうでもくねったところにあるっぽいからなのかな……? 骨っぽいというか、こりこりしたところに耳あかも、耳かきも当たるから、またとってもくすぐったい。

 がまんするため、お姉ちゃんの声に耳を澄ませる。


「……すぅ……。んっ……。んー……。むぅ……」


 集中しきっているお姉ちゃんの声をきいていると、なんだか落ちついてくる。

 そのうち、耳の中でのがさっ、ごそっと言う音がどんどん大きくなってきた。

 もうほとんどはがれかけみたい。

 んっとくちびるをむすんだ。


──がりっ、がりっ、ごりっ……ぺり……

──がりっ、がぼ……ぺき…………

──ばりっ……!


「と……れ、たぁっ……!」


──がぼっ、ざず、ずぞぞ……

 

 耳の中を引っかきながら、外へ引きずり出されていく耳あか。

 ころんと耳の中から出た後、外の音がなんだかきれいに聞こえた。


 ティッシュで耳かきをぬぐって、耳あかを落とした後……「よしよし、えらいえらい……♡」と頭を撫でてくれる。


「よく頑張ったねぇ……。お耳の中、すっきりした? ……うん、うん、そうだよね。耳垢は取れたけど、まだ、お顔がもどかしそうだもん。ずっと我慢してたんだから、むずむず取れないよね……」


 そして、寝かしつける前に見たいに囁いてくれるのも、またクリアに聞こえた。


「取れたあとのとこ、いーっぱい耳かきしようね。むずむずがなくなるまでやってあげるから、お姉ちゃんに教えてね……」


 ゆっくり耳かきが入ってきて、さっき大きいのが取れたばかりのところにふれる。

 変な声が出ちゃいそうになるのをがまんした。


──こりっ……かりっ……。


「んふふ。一瞬、お口がきゅってなった。やっぱり、かゆいのはここだよね」


──かりっ……こりっ……。

──さりっ……かり……。


 大物が無くなって、優しい音に変わった。


──くりっ……こ、りっ……。


 でも、骨っぽいところに引っ掛かるような感じがくすぐったいのは、変わらない。


「あ、今ぴくってした。ここ、気持ちいいんだ……?」


──かりっ、こりっ。

──くりっ、こ、りっ。


「奥まったとこの……うらっかわだね。ん、もっとかりかりしてあげる……」


 お姉ちゃんに、一番かゆいところがバレてしまった。

 耳かきはおんなじ所をかりこりと触る。その度、頭が動くのをがまんできない。

 んっ、とか、んぅ、とかいう声も、どうしても出てしまう。

 お姉ちゃんはとってもうれしそう。


「ああもう……かわいー……♡ 触るたび、お顔がとろんってするの……。これくらいの力で、こりっ、こりってするのがいいんだね……。じゃあ……力加減は変えないまま、ちょっとだけ早く耳かきしてあげる。きっと、もっと、気持ちいー……ってなるからね……」


 私の顔もそうだけど、お姉ちゃんの囁き声だって、なんだかとろんとしてきていた。

 耳かきがさっきより少しだけ深めに、耳の奥に当たる。


──かりっ。


 それから、一掻き。

 そして──。


──かりかりかりっ……かりかり……かきかりかき……


 耳かきが、気持ちいところをくりくり、早い感じでさわる。

 ずっとがまんしていたむずむずが、ほぐされて、かきあつめられて、かきだされていく感じ。

 ぎゅっと手をにぎりしめた。

 お姉ちゃんにもきっと、私がきもちいいのにたえているのが見えているはずなのに……今度はぜんぜん、手をゆるめてはくれなかった。


──こりこりこりっ、かりかり……かきかきかき……

──かりかりかりっ……こりこり……かりっ、かりっ、かりっ。


「……ね、きもちいいでしょ? 


──かきっ、かきっ……さり……。


 ふぅ、とお姉ちゃんの一息。


「これくらいかなぁ。これ以上やっちゃうと、お耳の中赤くなっちゃうから……。どーぉ? お耳痒いの、収まった?」


 うん……と頷く。

 お姉ちゃんの、満足そうな笑い声。

 それから、くちびるが耳へ近づいてくる。

 あぁ、しあげだ。

 もう、がまんする力が、残ってないのに……。


「すぅ…………──

 ──ふぅー~ー~ー………………」


 いっぱい耳かきされて、温まった感じのする耳の中が、お姉ちゃんの息でふぅーっとさまされる。

 口があいちゃう……。


「もーいっかいっ……。


 すぅー…………──

 ──ふぅー~ー~ー~ー………………」


 仕上げが終わった。

 そして、何秒かくらい、しんとした静けさ。

 私はその間に、ゆっくり息をすって、はいた。


 お姉ちゃんが耳かきを置いて、あったかい手で私の頭を包む。


「おーーしまい……♪ お疲れ様でした。どっちのお耳も、きれーになったよー……♡」


 もちもちと、優しくほっぺたをもまれる。

 やっぱり思うけど、お姉ちゃんは、私のほっぺをさわるのが好きだ。


「お顔もおてても、くたっとなってる……。そろそろ、眠たくなっちゃったね……? うん……♪ お姉ちゃんの言う通り、歯磨きしといてよかったでしょ? このまま、一緒に寝ちゃえるもんねー……」


 こくりとうなづく。

 耳かきもうれしいけど、お姉ちゃんといっしょにねられるのも、うれしかった。


 ……



 ティッシュとか、耳かき棒とか。耳かきの後片付けの後。

 

 お姉ちゃんの腕が私の体をだき起こして、ぎゅっと一度抱きしめてくれる。

 私も、お姉ちゃんの背中に手を回して、ハグのお返しをする。そしたら、またお姉ちゃんがぎゅうともっと抱きしめてくれる。


 それから、お姉ちゃんの手がささえてくれるまま、ベッドへやさしく寝かしつけられる。

 真っ白で、私のつかっているのよりおっきい布団をかけながら……。

 お姉ちゃんと一緒に、かたまで布団をかぶさる。


 お姉ちゃんは、ベッドの上のテーブルからリモコンを取って、ピッ、と、リモコンでお部屋の電気を暗くした。真っ暗じゃなくて、少し明かりが残る感じ。私が真っ暗で寝られないから、お姉ちゃんが合わせてくれたんだ。

 お姉ちゃんのうでが私の体をだきよせてくれた。手が私の背中に回されて、ぽんぽんとさすってくれる。

 思わず、すごくゆっくり息をはいてしまう。

 お姉ちゃんはいつもお顔向かい合わせで、そい寝してくれる。


「ふわ……。はぁ、体、あったかい……。お姉ちゃんの方が先に寝ちゃいそう……」


 お姉ちゃんは可愛くあくびしながら、私の体をもっと近くへ引き寄せた。ふかりと、やわらかいお胸にあごがのっちゃう。

 布団の中でも、足が触れあった。お姉ちゃんの足の方が、ひやりと冷たかった。

 だから、私はお姉ちゃんの足の間に、自分の足をさしこんだ。


「わ……足まで、ぽかぽか……。でも……逆に、お姉ちゃんの足、冷たくない?」


 ふるふると首を振った。もうちゃんと声をだせないくらい、寝ちゃいそうだったから、お姉ちゃんの耳元でささやく。

 こしょ……こしょ……。


「……え、あっためてくれてるの……? ……んも~~……♪」


 そしたらもっと、ぎゅうっと、だきよせられた。お胸に顔がうずまりそうだった。

 息ができるように顔をあげたら、すりすりと、ほおずりされる。


「はぁ……私、お姉ちゃんでよかったぁ……♪」


 とっても甘い声。すごく嬉うれしくて、私も、と返す。


 んふふ、とお姉ちゃんが幸せそうな顔してくれたから、私も幸せだった。

 ベッドの中も、お姉ちゃんの体も、二人ぶんの体温で、すぐぽかぽかしてきた。

 静かになったら、二人の寝息だけが聞こえてきた。私は、お姉ちゃんのお胸に顔をうずめた。

 そしたら、とく……とく……とお胸の音もひびいてくる。

 聞いているだけで、ぼんやりとしてくるくらい、ここちいい。

 背中をだきしめてくれるお姉ちゃんの手が、後ろの髪も、なでてくれる。


 そのままふたり、ぐっすりとねむりについた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ