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最愛のひと

 天使のエルちゃんから、年を取らない、大人に成れないという悩みを聞かされ、目から鱗が落ちた気がした。命があれば年は重ねるし老いても行く。自然のことだし誰もがいつかは行く道だ。分かってはいるが、私は25才の彩斗さんを愛しているから、自分の年齢と老いの姿に誰よりも敏感になり囚われて来た。

 彩斗さんは心優しい人だから、何歳であっても私に変わりはない、本質は同じ。年を重ねた分、より寛大に優しく成れていると励ましてくれた。こんな嬉しい言葉はないけど鏡を見るたび、哀しくてならない。なかなか今の現実を肯定出来ない。頭で理解していても心が連いていかないのだ。

 会いたいけれどやはり、こんな老いた姿で、会って良いいんだろうか。好きな人だから、愛している人だからこそ。

けれど、会いたい……。

 しかし、こうして、愛する人が居て会いたいと思えるのは幸せなことだし、65才でこんな想いが出来るなんて

有難いことだ。

 私の友人の一人は小さい孫がいて、70代の夫と暮らしている。夫婦の絆があるのだろうが、私は年老いた夫の世話に明け暮れる彼女を尊敬する。

 別の友人は独身で、若いイケメンのタレントさんを恋人のように思っている。一般の男性は苦手で、イケメンは唯、眺めているだけのもの。傷付くのが怖いからと言う。

自分を理解してくれる、女性の友達がいるからそれで良いとも言う。女性の友達も必要だが、力に変えられるのは断然男性だと思う。女友達が百人いても愛する男性ひとりには敵わない。それを日々実感している。

 私も傷付きたくないが、それを怖れていたら、何も出来ないし、前に進めない。

水の入ったコップの中の綺麗な石が欲しければ、手を入れるしかない。たとえ、水が冷たくても、手が濡れても。

それが、嫌で唯、見ているだけなら、手は綺麗なままだが、一生かかっても石は取れない。

何かの衝撃でコップが倒れ、水が零れて、綺麗なままの手で石が掴めれば良いが、そんなこと滅多に起こらないし、石自体が欠けるかも知れない。

 私は唯、見ているだけなんてしたくない。

彩斗さんに出会った時も、恋心に負けて、年を忘れて告白をした。その事は全く後悔していないし、むしろ頑張った自分を誉めたいくらいだ。唯、素直に正直に自分の気持ちを彼に伝えたから、若くなって夢のような時間が過ごせたし今がある。

 しかし、やみくもに私は自分の恋心を彼に伝えたのではない。伝えて傷つくのは誰だって避けたいし、何より、彩斗さんが困るのではないかが心配だった。

 「退院したら会えなくなるから淋しい」と退院3日位前から彼の顔を見るたび言った。嫌な顔や素振りをされたら、そこで終わるしかない。話しながら彼の様子を見ていたが、表情や態度はいつもと同じで穏やか。それで、私が何を言っても、動じることなく受け止められるだろう、その力があるだろうと思ったのだ。現にそうだったお陰で私は命を貰い、癌を抱えているにも関わらず元気だし、彼をモデルにして、彼への想いを元にして小説が書けるのだ。

全て彩斗さんが居てくれるからこそ出来ること。

 そんな、誰よりも大切な最愛の彩斗さんを失くすかもしれない事が、起こるとは思いもしなかった……。

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