2 新婚旅行中だったのに。
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意識が戻ったとき衝撃を受けた。
俺の右手が柔らかいものを触っていた。もちろん自分の腹の肉ではなかった。
「……は?」
俺は同じ寝床に寝る『姉』の胸部を必死に揉んでいた。
衝撃を受けたが俺の右手は姉のまだ薄い胸部をまさぐり続け、しかも俺の股間も荒い息を吐く姉の手によってまさぐられていた。
俺は三十三歳のサラリーマンのはずだった。学生時代から付き合って十年前から同棲していた遙香とついに入籍し沖縄に新婚旅行中であったはずだった。
それがなぜここにいるのか。
しかも、俺には目黒孝典の記憶と同時に、まだ十歳のアルカスの記憶があった。アルカスとして物心が付いて、地獄のような日々を送ってきた記憶があった。
身体も俺ではなかった。サラリーマン生活も十年に及び、沖縄で水着になるのに躊躇というか吹っ切れが必要だった身体は、スリムと言うよりは栄養失調が明確であばらが浮いた薄汚れた少年の身体になっていた。
寝床も新婚旅行先のホテルのパリッと糊のきいたシーツではなく、藁を木枠に詰め込んで作られた『巣』のような代物だった。
訳が分からなくて思わず手に力が入って、アルカスの姉である十二歳のマイアが「ん……」と顔をしかめた。報復のように俺の股間をまさぐる姉の指に力が込められた。思わず声が漏れた。
だが、その俺と姉の小さなあえぎはたぶん周りには聞かれてないと思われた。
なぜなら竪穴式住居みたいな原始的な家の中、真横でアルカスとマイアの両親であるカイザとフィリアが激しく交わっていたからだった。母親のフィリアが必死に声を押し殺そうとしているから性交渉を子供から隠そうという気持ちは多少あると思われたが、父親のカイザががんばっちゃってるせいなのかまったく隠し切れておらず、腰を叩きつけるパンパンという音と粘度の高い液体の音と、息も絶え絶えの呼吸音が家の中に充満していた。
すげぇ、と思った。
獣だった。
同時に絶望的な気持ちになった。
両親の交尾に興奮して姉と性器をまさぐりあう子供達。
やっぱり獣だった。
しかし、実際のところはこういうものだったのだろう。子供の寝室と親の寝室を分けられるほどの余裕は現代に入ってからのものだと聞いたことがある。
アルカスとしての記憶を参照する限り、この世界--中つ国と呼ばれている世界はまだ中世といった文明レベルだったはずだ。しかも俺が転生した先は農村の農民一家。当然、恥じらいが育つような文化とか文明とかはまだここまでたどり着いていなかった。
「……マジかよ車も電気もないのかよ」
姉の胸部の頂点にある小さなぽっちを指先で転がしながら思わず呟いた。
うつむきながら声を殺していた姉が顔を上げて驚いた顔でこちらを見た。
弟が突然訳の分からない呟きをしたんだから当然と言えば当然だった。
俺はごまかすために指の動きを早め三十三歳の既婚者の経験から身につけた技術力を使い姉を屈服させた。
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