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第九話 最恐の暗殺集団と、命が惜しくない大バカ野郎


ナンバーワン・ホストのヤマギシと、七色の裏声をもつウラベと、力自慢の田舎者アオヤマの3人との待ち合わせ場所は、街外れの門だった。


門は国境でもある。


今までは王宮の兵士が守っていたが、陥落と同時に、敵国に占拠された。

赤い気色の悪い敵の旗が、何本も林立していた。

民間人は何人たりとも外に出られず、外から入ってくるのは敵国の兵士のみだ。




サラリーマンのトダは、その身なりから怪しまれることもなく(スーツ姿のサラリーマンはどこにでもいる)、門のそばまで難なくたどり着くことができた。


「残念だが、外に出ることはできないみたいだな」


トダのそばにいた、商社マンと思われる男が低い声でいった。

顔は疲れ切っており、諦めと困惑が同居していた。

今日明日中に、隣国の街に、商品を届ける必要があるらしかった。


「しょうがない。非常事態ということで、客先には諦めてもらおう。あとは本社にどう伝えるかだが、悩んでもはじまらない。今夜はキャバクラにでも行って、ぱーっと騒いじまおう」


男は門から壁にそった先にある、歓楽街へと向かってしまった。

庶民の娯楽は、たとえ戦争があろうと革命が勃発しようと、休みになることはないらしい。


もうすぐ太陽が真上にくる。光を遮るものはなにもない青空だった。


トダはまぶしさを右手でカバーし、ヤマギシとウラベとアオヤマの姿を探した。


でも彼らの姿はどこにも見当たらなかった。




1時間は待っただろうか?


さすがに辛抱強いサラリーマンのトダでも、あきらめて引き返そうとした、そのとき。


けたたましいラッパの音が鳴り響いた。


「レッド・ラビット・レンジャーだ!」


どこからともなく歓声があがった。


トダも名前だけは聞いたことがあった。

敵国の精鋭部隊、最強の暗殺集団、恐怖の赤いウサギの集団(通称:3R)。

実物を見るのは初めてだ。


人が門のそばに集まってくる。

赤い旗をもった兵士が群衆を牽制し、道を開けさせた。


ラッパの音が鳴り止むと同時に、赤い戦闘用の馬が、次々と門をくぐってくる。

馬に乗っている彼らは、全身を真っ赤な甲冑で覆っていた。

ただの兵士とは明らかに違う緊張感が、足の先から、頭のてっぺんまでみなぎっていた。


この精鋭部隊に比べれば、城で戦った兵士たちは赤子にすぎないと、トダは恐ろしくなった。

後ずさってこの場を離れようとしたとき、


「止まれ!」


と馬上から大声が響いた。

耳が痛くなるような甲高い声だった。


トダは、自分のことかと思い、全身を震わせて目をつむった。


馬のいななきと、群衆のどよめき。

レッド・ラビット・レンジャーが停止した。


「おまえ、何者だ! 命が惜しくない、大バカ野郎か!」


トダがおそるおそる目を開けると、レンジャーの先頭、その馬の足元に、一人の男が両手を広げて立っていた。


トダは息をするのも忘れてしまうぐらい驚く。

その命知らずの男の顔を、よく知っていたからだ。



敵国の精鋭部隊を止めた男は、ナンバーワン・ホストのヤマギシだった。





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