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序章的なもの

まだまだ寒い季節とコロナが続く中、いかがお過ごしでしょうか。

皆さまが元気にしておられることを心より願っており、スランプに陥ったのに新しいものに手を付けた莫迦で愚か者な作者、神影です。

他の作品も作成を続けてはいるのですが、何せR18な展開を書いたことがなく、この先どうして行こうか作品的に悩んでいたりして、筆が進まない状態が続いております。

しかも、個人的に結構忙しかったり、布団という人生の友が離してくれなかったりして、日々、眠気と戦っています。

さて、本作ですが、転生と逆行はそれぞれ作品として見たことはあるけれど、2つ同時にはないなぁ・・・・・・・書くかってなった作品です。

何時まで続くか、続かないか分かりませんが、気長に付き合って下されば幸いです。

 何故こんなことになってしまったのだろうと、十字架にかけられ、周りが火に包まれ、朦朧とする意識の中レティシア―ナは思った。

 レティシア―ナ自身が潔白の身であろうとも周りがそれを許さなかった。

 どれだけ言葉を発しても、どれだけ無実を訴えようとも、誰にも信じてもらえず、状況証拠だけで悪と決めつけられ、18という短い人生がはかなく終わろうとしていた。

 レティシア―ナの人生は決められてばかりの人生であった。

 生まれこそよく、寒さにも飢えにも遭うことはなかったが、生まれながらにして貴族という人生を歩むことを決められ、結婚相手や友人も決められ、彼女自身で決めることはかなわなかった。

 与えられた部屋でふと見る窓の外には自由に大空を羽ばたく小鳥達。

 自分もあんな風に自由に思いっきり自由を謳歌してみたいと何度思ったかは分からない。

 家のことなど正直どうでもよかったが、今までの暮らしは領民あってのことで、そんな彼らのためになるのならば、たとえそれが望まないことであっても喜んで行うつもりだった。

 そのための知識もマナーも、令嬢の範囲ではないことも頑張って勉強したし、どんなに辛いことも耐えた。

 レティシア―ナの住んでいたミルヴァン侯爵家が治めているミルヴァン領は豊かな土地で、立地もよく、前方は海、後方は山に挟まれており、貿易や商業、農耕、畜産など多くの事業や産業が発展していた。

 しかしその分、津波の被害や山火事、土砂崩れなどの災害にも遭う確率が非常に高い土地でもあった。

 家は兄である長男が継ぐので婿養子をとることはなく、少しでもいいところに嫁ぐことで、もしそういった災害が起こった際に援助が受ける事が出来る。

 女である彼女のできる事と言えばそれぐらい。

 家が立ち行かなくなった時のために自分も働けるように準備までしていた。

 レティシア―ナはもしもという事態を考えるのが得意で、対策のために自分にできる事を出来る限りやろうとする性格だった。

 レティシア―ナ自身は同じ侯爵か辺境伯、伯爵家に嫁ぐことになるだろうと思っていたが、まさか自国の第2王子と婚約するとは思ってもみなかった。

 どうやって縁談をもぎ取ってきたのかは彼女には分からなかったが、かくして彼女の婚約者は第2王子になったのだった。

 第1王子はすでに既婚者であり、王太子でもあったので、年が同じで将来は王弟として跡継ぎのいない公爵家の養子になるので、家格も釣り合うレティシア―ナが選ばれた。

 それだけではなく、王家としては貿易が盛んな大きな港を持っているミルヴァン家を取り込みたかったというのもあったため、この婚約は両家の利益に基づいた、政治的面でも非常に重要な婚約であった。

 勿論レティシア―ナはそのことを十二分に分かっていたし、第2王子に恋慕の情などなく、あったのは領民のためという思いだけであった。

 しかし、レティシア―ナは事態に備えるのは得意であったが、急な事態や思いもよらない事態、とっぴな事態に対しては人一倍対応が苦手であった。

 だからこそどんなことにでも備えられるようにと準備を怠らなかったのだ。

 けれど、まさか第2王子ともあろう人が婚約の意味を知らず、レティシア―ナが第2王子に惚れ、ミルヴァン家が無理に婚約を推し進めたと勘違いしており、さらには嫉妬心から第2王子の良い仲だというだという名も知らぬ少女をいじめ、怪我を負わせ、食べ物に毒を仕込んで殺そうとしたなどといういわれなき罪を着せられてしまった。

 レティシア―ナは考えもつかなかった事態への対応が苦手である。

 つまり、頭の中がパニックになってしまい、周りから見ると罪人が醜く罪を逃れようとしているようにしか見えなかった。

 しかもその時は丁度、王太子である第1王子は外交のために海外へ長期間出向いており、国王陛下は酷い災害のあった場所へ1週間前から視察へ行っている。

 王妃殿下はご実家である隣国へ急な葬儀のために一足先に出向いており、国王陛下も視察からそのまま隣国へ向かう手筈になっている。

 宰相閣下は国王陛下とともに視察へ出向いている。

 緊急を要するため宰相閣下や王太子殿下が急いで戻っているが、早くても今日明日で戻ることは叶わない。

 今この国のこの瞬間、宰相の直属の部下である2人の大臣が王や宰相の留守を守っていたのである。

 幾ら任されたといっても、相手は第2王子。

 自分たちよりも位は上であり、いざ命令されれば、中々拒否できない。

 つまりは、絶好の断罪日和だったわけである。

 レティシア―ナの味方など1人もいなかった。

 学園全員が第2王子と少女の方を持ち、彼女の言い分など何一つとして通らなかった。

 家族もいわれのない罪を被せられ、投獄されてしまい、彼女は悪しき魔女として火刑に処された。

 嬲られ、貶められ、人としての尊厳も奪われた。

 屈辱だった。

 しかしそれよりも、レティシア―ナは悲しかったのである。

 レティシア―ナが愛した領民達ですら彼女を魔女として、罪人として扱ったからである。

 領民達に事の真偽など分からない。

 ただ、侯爵家が事実上没落し、その家の娘が魔女としてされたという事柄だけしか知らされなかったからだ。

 自分や家族を嵌めた第2王子や少女、その取り巻き達を恨み、憎む気持ちはあったが、それよりも悲しかった。

 自分が領民達のためにしていたのにという恩着せがましいことは言わないが、今までの時間は何だったのだと、噂に惑わされ、裏切られたことが何よりも悲しいことであった。

 レティシア―ナは憎悪と悲嘆を胸に強く抱いたまま熱い炎の中、一人、息を引き取ったのだった。



 これは、のちに起こる悪夢の七日間の前章である。



―――――――――――――――――――――――――――――――――

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 「っていうのが、その後の話に繋がる大前提の前夜譚なの!」




 そう声高々に話すのは、私の中学時代からの友達だ。

 この子は大層アニメや漫画が大好きで、私も彼女ほどではないがアニメが好きなのでそこから仲良くなった。

 今この子が話していたのは『魔女さんは幽霊~最強なのは恋する乙女だけじゃない~』という小説から漫画、アニメ化された最近アニメ好きの間では有名な物語だ。

 物語は、レティシア―ナが処刑された前夜譚から50年後から始まる。

 ミルヴァン侯爵家の長男として生を受けた16歳の少年が、家の書庫にあった其処まで古くもなく新しくもない、何処にでもあるような、けれどなぜか惹きつけられる本を見つける。

 その本を開くと、魔法陣が現れ、本の中に封じられていた魔女の幽霊が目を覚まし、少年に憑りついてしまう。

 魔女は冤罪をかけられ、火刑に処され、その憎悪から悪夢の七日間を起こした張本人で、少年の叔祖母(おおおば)に当たるレティシア―ナその人であった。




 「まぁ、彼は今の侯爵の子供じゃなくて、養子なんだけどね。長女を生んだ侯爵夫人は出産時に出血が酷くて、子供を望めない体になったみたいだし。出会った2人は互いに質問し合って、説明し合うの」




 レティシア―ナは自分のことや、自分の身に起きたことを少年に質問されるまま答えた。

 レティシア―ナも少年に、自分が死んだ後のことを聞いた。

 レティシア―ナの刑が執行され、亡くなったほんの約1時間後に帰城した宰相と当時の王太子によって、当時の当主とその奥方、レティシア―ナ以外の子息は助け出され、正式な調査の下すべて冤罪であり、侯爵家を陥れるための罠であったということが証明され、侯爵家としての地位を直ぐに取り戻した。




 「で、レティシア―ナは勿論冤罪!証拠も出鱈目で、証拠としての能力もなかったのよ!」




 これらのことから第2王子と少女は慈悲なく処刑され、取り巻き達は勘当されたのちに鉱山施設へ送られた。

 その他に関わった者たちにもそれ相応の処罰が与えられ、複数の家が没落し、これに乗じて王と王太子は国の上層部の改革を行ったこと、そしてすべてが終わったのを見計らったかのように、疫病や作物被害、災害が国を襲った、レティシア―ナが起こしたとされる悪夢の七日間をレティシア―ナに伝えた。

 まぁ、レティシア―ナにしてみれば、何それという感じだったらしく、『そんなことした覚えはないわ。死んでるっていうのにそんな力ないわよ。にしても、王太子殿下と宰相閣下、国王陛下、全く関係ない人達には悪いと思うけれど、ホントにザマァって感じね』とは彼女の名言で、この言葉に共感したファンは多いらしい。

 目の前の友達も、この言葉が大好きだ。

 そもそも、悪夢の七日間をレティシア―ナが起こしたとされた理由なのだが、レティシア―ナの故郷であるミルヴァン領だけが直接的な被害を受けておらず、災害が一番懸念されていた場所であるのに、一番被害がなかったことからそう思われたというのが公式設定だそうだ。




 「ここからが本題なんだけど、レティシア―ナはさっさと成仏したかったの。でも、レティシア―ナには思い残しがあったのよ」




 レティシア―ナの思い残しというか、未練というのが、『第2王子の手際があまりにも鮮やかだったことに対する理由』である。

 第2王子は莫迦ではなかったが、いかんせん阿呆であった。

 地頭はいいくせに、自分の耳の良い、都合の良い言葉ばかりを聞き、苦言に対しては受け付けなかった。

 レティシア―ナの言葉に対しても撥ねつけ、否定ばかり。

 唯一耳を貸すのは自分の兄である王太子と王、王妃だけであったが、言われたことを素直に受け取らず、捻くれまくった考えに転換してしまい、レティシア―ナに当たるばかりであった。

 しかも、第2王子が少女に出会ってからそれは増し、レティシア―ナに対しグチグチ言うだけであったが、怒鳴り散らすようになった。

 これに対し友達は・・・・。




 「絶対に魅了かなんかの魔法的なものを使ってたのよ。じゃなきゃ、此処まで変わるわけないじゃない!物語の、二次元の中だけど!」




 とのこと。

 実際、物語では魔法が日常的に使われているし、魅了かなんかの魔法が使われているのは何も不思議な事ではない。

 この前L〇NEでやり取りした時に、考察厨の人達が盛り上がってたと目の前の彼女は言っていた。

 まぁ、そんなこんなで、50年前の事件の本当の真相を暴くために少年主人公が魔女の幽霊、仲間達と共に行動を起こして、事件に巻き込まれていくファンタジーミステリーとなっているのだ。

 今は未だ完結しておらず、第6章の終わりまでになっている。

 作者が終わりは『縁起のいい8で終わるかも。幸せが広がるってことで』と言っているそうなので、あと2章で終わるらしい。

 

 ひとしきり語り終えた彼女はとても満足したようで、やっと落ち着きを取り戻した。




 「ごめんねぇ、長々話しちゃって」


 「全然いいよ。久しぶりに元気なところ見れてホッとしたから。幾らメッセージのやり取りしてても分かんないことってあるから」


 「確かにねぇ。でも、今日会えてよかったよ」


 「此処のところ二人して忙しかったもんねぇ」




 この春社会人になった私たちは、慣れない環境になれるために、そして早く仕事を覚えるために過ごしていた。

 そんな忙しさや心の余裕がなかった私たちは、まだまだだが、やっと少しだけ落ち着きを取り戻したところだった。

 お互いに都合がよくなってきたので、これを機会に会おうということになったのだ。

 しかし、楽しい時間が過ぎるのは一瞬で、もうすぐ別れの時間だった。




 「あ、そろそろ時間だ」


 「え、マジ?」


 「うん、そろそろ行かないと、お迎えに間に合わなくなっちゃう」




 彼女は実家暮らしなのだが、甥っ子君が遊びに来ているらしい。

 なんでも、お義兄さんは1週間出張しており、お姉さんは風邪をこじらせて寝込んでいるそうで、彼女のお母さんはその看病に行っているそうだ。

 で、何処からか今日が休みだと知った彼女のお母さんに頼まれて甥っ子君の迎えがあるらしく、今日は早めに帰ることになったのだ。


 お互いに別れを言い合って、また今度という言葉を交わした。

 今とても気分がいい。

 久々の落ち着いた時間。

 中のいい友との楽しい時間。

 そして、明日また頑張ろうという気持ち。

 誰が言ったのかは分からないけど、『女の子はお砂糖とスパイスと素敵な何かで出来ている』という言葉があるが、今の私はこれらからできていると断言できる。

 それぐらい、今の自分を作っているものだった。

 だからかもしれない。

 気分転換に何時もの道じゃなくて、少し遠回りして帰ろうと思ったのは。

 もし、あのまま何時もの道を帰っていたら、こんなことにはならなかったかもしれない。

 なんてことを思っても、もう全てが後の祭りなんだけど。





 行き成り襲った衝撃と背中の痛みと共に、私の世界が終わった。


此処までお読み頂き、有り難う御座いました。

これからも頑張って、投稿していけたらなと思っておりますので、宜しくお願い致します。

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