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【書籍化決定】魔法学園の大罪魔術師  作者: 楓原 こうた
大罪に寄り添う聖女と救済の邪教徒
31/69

あれからとそして

 ユリス達が入学してから数週間の月日が経った。

 基本的な授業は午前中に座学、午後からは実技と言う形になっている。


 Sクラスは他のクラスとは違うのか、合同での授業は一切ない。

 故に、このSクラスでの環境全てが今の学園生活全ての環境なのである。


 そして、数週間も時間が絶てば自ずとクラスの集団は確立していき、自然と同じ面子で行動することになった。


 その中で、主に目立つ集団は二つ。

 まず一つ目はーーーー


「なぁ、セシリア? 魔法学って俺に必要ないと思うわけですよ? だって魔法使えねぇし? 大半の魔法とか師匠に習ったし? ……だから、その……もう、正座やめていい?」


「ダメですっ! これはお説教何です! せっかく学びに来ているのですから、寝ないでちゃんと聞いてください!」


「でもさ……正座の上にセシリアが乗っちゃったら余計にキツいんだけど? 乗る意味ないよね? お兄さん、後ろから襲っちゃうよ?」


「お、おそ……っ!? も、もう! 懺悔してくださいっ!」


「えー、俺が悪いの?」


「そうです! そもそもユリスは人与えられた大切な勤勉さをーーーー」


 午前中の授業も終わり、教室の隅にて正座するユリス・アンダーブルク。

 そして、その上に何故かちょこんと怒りながら座るセシリア。だが、その表情はどことなく嬉しそうだ。


……まぁ、現在進行形でニマニマとユリスに説教をしているが。


「今時、聖女であるセシリアに「襲う」なんて言ってるのって、ユリスくらいよね」


「間違いないな!」


 さらに、その光景を呆れながら、それでいて微笑ましそうに見る二人。

 アナスタシア公爵令嬢とリカード伯爵子息。


 二人は側の椅子に腰掛けながらそれぞれ自由にしていた。


「ははっ……なんか、最近私もこの光景も慣れちゃったなぁ……」


 一人、皆とは違う容姿と異彩を放つ少女。

 金髪を長い耳にかき上げたミラベルが、二人の姿に苦笑いを隠しきれない。


 まず一つ目の集団と挙げれば、この五人の面子だろう。

 聖女であるセシリア、公爵令嬢であるアナスタシア、伯爵子息であるリカード、エルフであるミラベル、そしてその中心にいる無能の辺境領主の息子であるユリス。


 貴族平民種族関係なく扱われるこの学園だからこそ、こんな異様な面子が揃っているのだろう。その中では、上下関係など存在していない。

 それ故、クラスでは文句なしに目立ち、尚且つ実力がトップクラスにあることから、最近では皆話しかける様子もなくなってしまった。


 だが、一人例外を挙げるとすればーーーー


「皆さん、今日もお揃いですね」


 さらりとした銀髪を靡かせ、おしとやかに現れた少女。


「エミリアはもう用事はいいのか?」


「はい、先ほど講師の先生に授業の内容で疑問だった所を聞きに行っていただけですので」


 この国の王族ーーーーエミリア・ラピズリー第3王女である。


「あなたもエミリアを見習いなさいよ」


「嫌だ! 俺は怠惰な人間なんだ! 一生甘やかされて生きるんだ! お金だけ貰って毎日娼館に通ってお姉さん達と密な夜を過ごしまくるんだ!」


「ユリスくんは相変わらず正直者だね……」


「そこは素直に尊敬できるぜ!」


「流石相棒! よく分かってらっしゃる!」


 この者達の談笑の姿は本当によく目立つ。

 一人一人が特殊な人間だからこそ、誰もが関わりにくく傍から眺めることしかできないのだ。


 その中で一人、入学してから打って印象が変わった人物がいる。


「でもさ、本当に俺にとっては魔法の授業なんて要らないわけよ? だって俺、魔術師だし? 魔法士じゃねぇし?」


 ユリス・アンダーブルク。

 魔法が使えない故に無能として蔑まれ、周囲から冷たい目で見られていた男。


「ユリス!?」


「はいユリスです」


「聞いているのですか!?」


「聞いてません」


「もうっ! ユリスは……もうっ!」


 始めこそ、皆は爵位の低い彼が無能である事を馬鹿にしてきた。

 自分より劣っているからだと、魔法が使えない奴がここにいるのはおかしいと。


 だが、蓋を開けてみればどうだろうか?

 初日の試験ではS級のカエサルと渡り合い、実技では魔法以外の科目では常に断トツのトップ。

 皆、ユリスの実力が分かってきたのだ。


 だが、それでもこのクラスでの話。

 ユリスの実力を知らない他のクラスであれば、未だにユリスは馬鹿にされているだろう。


 ……だが、ユリスが馬鹿にされれば周囲が黙っていない。

 周囲はそれぞれが権力と権威がある者ばかりーーーー進んで馬鹿にしようとは思わないのだ。


 だけど、それでも周囲はユリスと仲良くしようとはしなかった。

 それは劣等と見ていた人間が優れていると知ったから故にプライドが許せないのかもしれない。


 それに、印象が大きく変わったと言えばーーーー


『ねぇ、またバーン様が一人よ?』


『馬鹿ッ! あまりバーン様の話をするな!』


「……」


 教室の隅の一席、そこに座るバーンである。

 食堂での一件以降、周囲のバーンに対する評価は劇的に下がった。


 直接の嫌がらせを受けている訳ではない。

 それはバーンが公爵だからで、もしユリスみたいに爵位が低ければ、バーンに対して何かしらのアクションがあったのかもしれない。


「……」


 バーンは聞こえるその言葉に反論はしない。

 それは寛大になったからーーーーなんて理由ではなく。


『ねぇ、そう言えばバーン様って正式に後継に選ばれなかったんでしょ?』


『あぁ……エミリア様から直接ユグノー公爵様の所に話が行ったらしく、直々に……だそうだ』


『うわぁ……エミリア様に言われちゃったらそうなるよね……』


 皆がバーンに近づかない理由は大きく一つだ。


 それは、『バーンと一緒にいれば、エミリア様に嫌われてしまうのでは?』と言うものである。

 大衆の前で、エミリアはバーンに叱責した。

 その言葉の中に見損なったという単語が含まれており、もし「バーンと関われば自分もエミリア様からーーーー」なんて不安があるのだ。


 格は圧倒的にエミリアの方が上。

 バーンに嫌われるよりも、エミリアに嫌われる方が他の人は嫌なのである。


「……」


 故に、バーンは孤立した。

 その拳をワナワナと震わせながら。



 ♦️♦️♦️



(クソクソクソクソクソクソクソクソクソクソッ!!!)


 その夜、バーンは苛立ちを募らせる。

 握る拳は震えており、すぐにでも唇を噛みきりそうであった。


 ユリスが先日歩いた場所とは違い、敷地内にある庭園をバーンは強く足を踏みしめながら歩いている。


「クソッ!!!」


 近くにあった鉢植えを蹴り飛ばし、何処にも向けようのない感情をぶつける。


(俺は公爵家の人間だぞッ! それなのに、どいつもこいつも馬鹿にしやがって!!!)


 公爵家の人間は敬われる存在だ。

 常に人が自分の後ろを歩き、己を称えるーーーーそんな存在なのだと、バーンは思っている。


 だが、今はどうだ?

 有象無象が自分を馬鹿にするーーーーそれが、バーンにとっては腹立たしかった。


(あの王女と無能が……ッ! 絶対に許さねぇ!!!)


 自分を大衆の面前でコケにしたエミリアと、自分を踏みつけにした無能のユリス。

 それらに対する理不尽な怒りが、バーンの中を支配する。


(許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ!!!)


 だからなのかーーーー





「力が欲しいのか、そこの少年?」




 庭園に現れたその声。

 バーンはその声に反応することなく、憤怒のままに庭園を荒らしていく。


「憎いだろう? 恨んでいるだろう? 許せないだろう? だったら、私が君に力を与えてやろうーーーー憎き王女を踏み潰すために」


 だが、自然とバーンの首が縦に動く。

 どうしてなのか、自分でも分からないまま。


 そしてーーーー



「では、授けようではないかーーーー全ては、邪龍の復活の為に」


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― 新着の感想 ―
[一言] 自分は公爵家の人間だから敬われて当然と考えてるなら自分よりも地位の高い王女を敬わないのは矛盾だよなぁ
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