農夫と王女
昼にしては妙に薄暗く、夜にしてはやけに明るい、そんな不思議な日のことでした。
熱心に畑を耕す農夫が一人、クワを打ち立て精を出しています。
「じいや、馬を止めよ」
畑のそばを通り掛かった王女は、農夫の働く姿を見て馬車を止めさせました。
「じいや、あれは何ぞよ?」
「農夫似御座います。ああやって畑を耕し、作物を作る準備をしておるのです」
「少し近くで見てみたい」
「左様で御座いますか」
馬車が農夫の近くへとよりました。王女は馬車の窓から農夫を眺め、声を掛けました。農夫は熱心に畑を耕しているせいか、馬車に気が付きません。
「畑は大変か?」
王女の声に、農夫は振り返ることなく返事をしました。
「大変ですが、私はこれ以外に働き方を知りませぬ。それに、野菜を育てていれば、税金が少し楽になりますから」
馬車を操るじいやが、ヒヤヒヤと王女の顔色を窺いました。しかし王女は顔色一つ変えずに質問を続けました。
「税金が重いのか?」
「はい。私のような貧乏農家はとてもじゃありませんが、街へ行って服を買う余裕すらありませぬ」
「そうか……」
農夫はそのまま畑を耕し続け、王女は馬車で城へと戻りました。
翌年、税金が軽くなりました。
そして王女は再び農夫の畑へと向かいました。今度はお忍びで見窄らしい服を着て一人で歩いて行きました。農夫は相変わらず無心で畑を耕しておりました。
「畑は大変か?」
王女の声に、農夫は振り返ることなく返事をしました。
「大変ですが、私はこれ以外に働き方を知りませぬ。それに、野菜を育てていれば、生活費が少し浮きますから」
王女は質問を続けました。
「稼ぎが悪いのか?」
「はい。野菜の価格が下がっております。肉主体の食生活のせいでしょう。野菜が売れなくては、我々は飢えて死ぬだけ」
「そうか……」
王女は静かに歩き出しました。
そして城へと戻ると、国民に野菜を食べるようお触れを出しました。
野菜を食べるようになった国民は次第に病気が減り、税の入りも良くなりました。
そして王女は再び農夫の畑へと向かいました。今度もお忍びで、見窄らしい服を着て一人で歩いて行きました。農夫は相変わらず無心で畑を耕しておりました。
「畑は大変か?」
王女の声に、農夫は振り返ることなく返事をしました。
「大変です。毎日世話をしてやらねば良い作物は採れませぬ」
王女は質問を続けました。
「自由な時間は無いのか?」
「はい。朝も昼も夕も畑の世話で、女房をめとる暇すらありませぬ」
「そうか……」
王女は静かに歩き出しました。
そして、国の農夫達に耕運機や収穫機械の補助を行い、これにより農夫達の労働時間が短縮されました。
そして王女は今年も農夫の畑へと向かいました。今度もお忍びで、見窄らしい服を着て一人で歩いて行きました。すると、農夫は相変わらず一人で無心に畑を耕しておりました。
「婚活は大変か?」
王女の声に、農夫は振り返ることなく返事をしました。
「大変です。私のような醜男は、誰も相手にしてくれませぬ」
王女は質問を続けました。
「其方の熱心な仕事姿を見れば、いつか良き妻と巡り会えるはずだ。諦めるな」
「はい。私のような醜男が好みで、金髪で美人でスタイルが抜群で童顔で身長は150cm以下で料理が得意で六カ国語を操り私に尽くしてくれる妻をめとれるように頑張ります」
「諦めろ」
王女は静かに歩き出しました。
もう農夫の所へ行くこともないでしょう…………
読んで頂きましてありがとうございました!




