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スーパーが花屋に化けた  作者: 烏川 ハル


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1/2

前編

   

 料理するのは嫌いではないし、一週間の半分以上は自炊しているはず。ただ今日は、何となく、そういう気分ではなかった。だから仕事帰りに、近くのスーパーに立ち寄った。適当に、出来合いの食べ物を買うつもりで。


 鉄道も走っておらず、バスの本数も週末には激減するような田舎町。それでも市内には、大きなスーパーが五軒ある。

 一番大きいのは、東端と西端にそれぞれ一軒ずつある、スーパーW。野菜などの食料品や下着などの衣類はもちろん、本やDVD、子供向けの玩具、釣具や猟銃といったアウトドア用品まで扱っており、24時間営業している。

 おそらくスーパーWは、アメリカ最大手さいおおてなのだろう。一方、俺の感覚としては『二番手』になるのがスーパーKであり、この町には三軒。どれも比較的、市内中心部に位置していた。

 特に、そのうち一軒は、ちょうど帰り道の途中にある。「野菜などの食料品や下着などの衣類」は扱っていても「本やDVD、子供向けの玩具、釣具や猟銃といったアウトドア用品」は売っていないスーパーKだが、夕飯を買うだけならば、それで十分。

 いや、むしろ出来合いの食べ物は、スーパーWよりもスーパーKの方が充実しているかもしれない。俺がよくスーパーKで買うホウレンソウのキッシュもスーパーWにはないし、そもそもスーパーKでは、なぜか寿司を扱っているのだ。


 寿司といっても、アメリカ人のアメリカ人によるアメリカ人のための寿司だ。握り寿司は売っておらず、巻き寿司ばかり。特に、いわゆるカリフォルニアロール――日本とは逆に海苔が内側で酢飯が外側になった太巻き――が多い。

 最初に見た時は驚いたが、どちらが外側であろうが内側であろうが、口の中に入れてしまえば一緒だろう。それに、具材にウナギを使っているものがあったり、サーモンを使っているものがあったりして、なかなか旨い。俺の好みからすると、ウナギ自体は少し脂が足りないと感じたが――あまり良いウナギを使っていないと思ったが――、一緒に巻かれたアボカドがトロ味を補っていたので、まあ十分だろう。さすがアボカド、山のトロと称されるだけのことはある。


 カリフォルニアロールのパックを二種類くらい買うつもりで、寿司コーナーへ。だが今日は、もうカリフォルニアロールは売り切れていた。仕方がないので代わりに買ったのが、見た目はカッパ巻きとよく似ている――これは日本の細巻きと同じく海苔が外側で酢飯が内側になっている――アボカド巻き。

 それだけでは足りないので、ホウレンソウのキッシュも買う。だが、まだ夕飯として十分ではない気がする。結局、後で何か作って食べることになるかもしれない。

「アメリカの田舎町だと、日本みたいに弁当やおにぎりを買えないのが、不便なところだよなあ」

 と独り言を口にしながら、レジへ向かうと……。

 そこは、花の香りに包まれていた。

   

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