07 ようこそフロンティアへ1
07 ようこそフロンティアへ1
振り返ってお店側の扉を見ると女児を誘拐しようと家に押し入って来たであろう不審者が視界に入る。ボブカットっぽく切りそろえられた金髪、緩い橙色の目を濁らせている細身だが胸はでかい美人エルフ……というか母がいた。目をキラキラさせて手を広げてこちらに迫ってくる!
「エレナちゃん!エレナちゃん!食器のおかたづけできるなんて、エライッ!」
母は私に見つかったとみるや、なにか叫びながら急接近してガバッとわたしを捕獲する。つかまったー。
「ん~、ママお店はいいの?」
「いいのよ、この時間はどうせ誰も来ないからね~。エレナも一緒に行きましょうね~」
あえなく御用となって道具屋に移動した。道具屋に連れてこられた私だが、やることは特に何もない。
私は母と他愛のない話をしたり、棚に並んでいる道具を眺めたりするのが日課である。
昼から日没にかけては店のお手伝いにエルフのお姉さんが来てくれるので色々と話を聞くこともある。レミリアという金髪碧眼お姉さんで、冒険者が本業らしいがほぼ毎日こちらにお手伝いに来る。母が店番の依頼を冒険者ギルドに出した時に来て以来、ウチの専属になっている。
今は昼前なので、店内は母娘で二人しかいない。私が杖の並んでいる棚を見上げていると… チャリンチャリーンと来客を知らせる音がした。
「ロビンさんいらっしゃ…い?」
狩人エルフのロビンさんともう一人知らない女性が入って来た。ロビンさんは一匹狼の狩人なはずだが珍しい。
「やぁユミルさん、エレナちゃんの学校の件で色々と話を持って来たんだが、エレナちゃんはいるかい?」
ロビンさんはそう矢継ぎ早に話し出す。母にも心当たりがあったようで顔に納得の色が見える。
「その件でしたか、今日もエレナは元気ですよ」
私の学校の話だそうなので、母のそばに寄ってロビンさんと一緒に来た女性を見上げる
「エレナちゃんおはよう、今日は学校の人をつれてきたんだよ」
その後、三者面談+案内人ロビンさんで私の進学についてごちゃごちゃと話をした。学校関係者のこの女性はダリアと名乗り、近郊に学校が新設されたので、私に入学の話を持ち込んできた、という事らしい。
ちなみに真理の魔眼を発動して見ると
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名前:××-[ダリア]
種族:天使-[有翼族]
性別:××-[女]
年齢:××-[28]
職業:××-[学校関係者]
賞罰:××-[なし]
称号:××-[なし]
~~中略~~
状態:擬態有翼族-[正常]
装備:××-[平服]
物理耐久:S/S
精神耐久:S/S
魔力:S/S
筋力:A
精神力:S
対物理性能:A
対魔法性能:S
俊敏性:A
器用さ:A
知力:S
魔力運用効率:S
発動可能魔法種:測定不能-[火魔法、水魔法、風魔法、土魔法、光魔法、浄化魔法、回復魔法、支援魔法、付与魔法、召喚魔法、無属性魔法、生活魔法、固有魔法(有翼族)]
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コイツ完全に理の神の手の物だわ。母と学校についてあれこれと話をしているが、時々こちらをチラチラ見てくる。魔眼を発動した後なんかはこちらを見ながら小さくうなずいていた。ダリアは言葉巧みに話を進めていき、私を全寮制のお嬢様学校に特別待遇で入学させることを母に納得させた。
話の途中で「お嬢様学校楽しそう」だとか「大丈夫だよママ」「お友達たくさんほしい」「お手紙出すよ?」「時々帰ってくるね」等々、心無い私の言葉が入り、母は子離れに踏み切ったようだ。
私もちょっと、いやかなり悲しいがダイジョウブ、…目から汗が滲むが。しかしこれからの事を考えると仕方のないことだし前向きに行こう。
学校関係者ダリアが直接打診に来たために、問題が無ければ今日にも学校のお嬢様寮に出発できる。寮に住む手前、幼女に持たせる荷物は身の回りのお気に入りの物くらいで良いらしい。母が衣類、生活用品をリュックに入れ、私に背負わせる。
そんなに気に入ってなかったが人形の「うーたん」も持って行こう。耳が長いウサギの人形で寸胴なシンプルなヤツだ。うーたんは抱き心地がいいのでかかせない。