05 プロローグ2
05 プロローグ2
目が覚めた。
昨日は理の神が夢に侵入してきたんだっけか
「ママー、おはよー」
おや、寝室にママンがいないでござる。大き目な掛け時計を確認すると9時を回って少しの所だ。
この世界の天体運行は地球とほとんど同じである。星座は全然違うが天の川みたいなのは存在してる。月は地球と同じものが一つ(模様は微妙に違う)と少し特殊で大きいやつが一つある。大月、小月、と安易に呼び分けられている。この大月、大きさが変わったり色が変わったり軌道が意味不明だったりするらしく、このつきに急激な変化があった時、世界に変調が現れるんだとか。
日が昇って気温が上がってくるこの時間だと、我が母、ユミル・ルビーライトはお店の方に居る。これから私もそちらの方に行こう。
おねしょしてないな、よしよし。起き上がってシンプルな造形の幼女パジャマから着替えるべく可愛らしい服一式つかんで姿見の方に、とことこ歩く。
姿見の鏡を見てみると、自分の雰囲気がなんか昨日と違う。昨日までは砂場でキャッキャと黄色い声をあげていそうな風貌だったのに、今は木陰で一休みしてそうな園児に見える。「朧幼女」の二つ名を得たからだろうか。ふむ幼女か。
「ハンバーグ、好き…」
声に出してみる。ジト目が似合いそうな幼女になってしまったみたいだ。幼稚園で保母さんが玩具を皆に渡して大多数の園児がキラキラした眼で駆け寄る中、どうせしょうもない玩具やろ?アホらし、積み木するわーみたいな園児いるでしょ。あんな感じの眼だね。
要は世界で驚くことがそんなにないんだね。コップに汲んだ水の揺れなどや、照明、太陽の光と通り道なんかは初めは真新しいけど、中学生くらいになると慣れてくる。知識とは慣れである。輝かしい太陽の光は激しく、暑く、網膜を焼くが、日陰で直接見なければどうと言うことはないし、この世にエネルギーを供給する規則のある現象であることを理解する。とりわけ化学世界出身のおっさんの知識が入ってしまった瞬間世界の殆どは化学で説明され、その域を出ない。
たどたどしい手つきでゆっくりと着替える。鏡の向こうを改めて見直すと、細い銀髪で橙の目を眠たげに開けてる幼女が一人立ってこちらを見つめている。
「そういえば魔眼もらったっけ?」
自分の目の部分を注視していると、光彩の部分が少し回転するのと同時に、ゲームのウインドウの様に、鏡の向こうの自分の目の部分に注釈の様な物が表示された。
【真理の魔眼】[××の神から与えられた、あらゆる物事の真理を正しく見通す魔眼。虚偽、隠蔽に強く幻惑や精神異常の類には完全に抵抗できる]
アイツは理の神じゃないのか!?っと疑念が浮かび、次に淀みなく、ソレを思い出した。およそ全ての生き物には天界の住人、特に位の高い神は概念の色が強くてそれでいて掴みどころが無いように見えてしまうそうだ。
名前を知っている神を正面から見据えると、魂を持って逝かれてしまうらしい。召されるのかね。それで、そのような不幸な事故を防ぐために天界は文字通り神秘的な工作が至る所になされているらしい。ぼんやりとした姿で現れたり、間接的に、例えばお告げや啓示っぽい何かで地上とコミュニケーションするらしい。
天界は謎が多いのな、このちょこちょこと小出しで湧いてくる知識も謎だ。かなり不安だけど、世界の全ての知識が一気に押し寄せてきて脳姦されるのも怖いし放置でいいか。
さてトイレに寄ってからお店の方に行こう。