表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/69

14 ようこそフロンティアへ8

14 ようこそフロンティアへ8


 結局昨日はあの後、学園外に出ないで塔に帰った。子供は夜お外に出てはいけません。シエラを伴えば万に一つも危険はないだろうが、わざわざ地雷を踏みに行くほど私は殊勝ではない。

 ついでに昨日のうちに冒険者キットとも言える旅道具、魔道具一式を天界通販で揃えてしまった。出来る限り下界でも出回ってそうな安い物で揃えた。さんざんチートやらかしていてもう手遅れな感は否めないが、必要に迫られるまでは省エネで目立たず行きたいものだ。


 ポーション類も【下界ポーション】【下界マナポーション】という不遜な名前の物を取り寄せている。安いのに30本1セットで来る。ポーションは1本で私の体力が全開になる。マナポーションは気持ち回復する程度だった。

 これでも普通に道具屋で売っている物よりいい効果だったりする。瞬時に回復するし、飲んでもそこそこおいしい。普通は数十秒は回復効果が出切るまで掛かる。味も薬草くさい。まあ、わざわざ飲まなくても液体が体に掛かれば効くんだけどね。飲んだ方が良く効く。


 傷にポーションをかけるとどうなるか、例えば傷がダメージ30、身体内部のダメージが30、ポーションの回復量が40だとすると、飲んだ場合は身体内部のダメージが全快して傷が10回復する。傷に振りかけると傷が全快して体内のダメージが5回復する感じである。


 ゲームなどでよくよくあるシーンとして、ポーション類を対象者に投げつけるだけで効果を発揮するのは結構謎な現象なのだが、マジでガラス容器で、中身が対象者にぶっかかって効果を発揮する場合、液体が肌に接触するとにゅるっと染み込んでいくので、盾でキッチリ防いだりしない限りは効果が発揮される。

 ガラスは割れるともちろん危ないので、寒天のような柔らかめの容器も存在している。「オブラートに包む」のオブラート(苦い薬などを包むゼラチン質の、透明な餃子の皮みたいな奴)とか、インスタントなスープの加薬を包んでいる透明なアレみたいな素材を使用している物もある。

 マナポーションと天界通販で永久機関ができるが、これは禁断の外法のようで二の足を踏んでしまう。いや、だって…ねぇ?


 さて、今日はどうしようかな。転生者達は筋トレ、イメトレ、チャンバラに忙しいだろうから、しばらく放置しといて問題ないだろう……。ふーむ、転生者の行く末を脳内で占っていると、そういえばここら辺のダンジョンとか、魔物とかどうなってるのか気になって来た。冒険者ギルドに行ってその辺の情報収集でもしてみようか。


 かなり軽めな軽食を食堂で済ませた。シーゼルと軽く挨拶したが、今日は特に用事はなさそうだ。まぁ幼女を連れまわすのは犯罪だからな。衛兵さん、コイツです。暇な時にでも構ってやるか。やはり魔法バカだけあってこちらに興味深々な様子だ、チワワみたいな目で見てきやがる。小僧、ファイアーボールで魔王ワンパンできるようになったら物を教えてやろう。っと内心で勝手に袖にしつつ、冒険者ギルドへ向かう。

 完璧イケメンを見るとドキドキしちゃう!でもやっぱ女の子がいいんじゃ~!。ファンタジーのリアルなナマモノだけあって美男美女の完成度がやべーのね。性別とか関係無しに見惚れるっていうかね。そういう訳で別のシナリオが始まってしまう前に冒険者ギルドへ行くのである。



 途中で串焼きを買い食いする。このために朝食は減らしておいたのだ~!


「おじちゃん!くしやき二本ちょうだい!私はちいさめ!」


「おう!お嬢ちゃんまいど!銅貨…三枚だ!」

「はいまちど!熱いから気ぃ付けてな!ありがとな!」


 実に気持ちのいいスキンヘッドである。串焼きも旨い、朝から最高だ。


 そうして買い食いして、冒険者ギルドに到着。


 面倒な視線を避ける為にアサシンの影を二人で装備しつつ玄関扉をくぐる。朝の時間帯はまずまず混んでる様だ。

 ちらほら転生者らしき奴も散見される。まずはゴブリンとかスライムくらいにするんだぞーと内心で注意する。さて、依頼表でも見てみるか。依頼表の貼り付けられているボードの、人垣の後ろの方に行く。ボード板は一段高くなった場所にランクごとに並んでいて、板の上の方に依頼表が貼り付けられている。見やすい様にとの配慮だろう。私はシエラに抱え上げてもらい後ろの方から依頼表を見通す。エルフの視力を舐めてもらっては困りますなぁっと。


 魔物の討伐や護衛の依頼とランクを見比べると、この辺の危険度の分布が粗方わかる。予想通り、人里の近くは危険の少ない低ランクの仕事が中心で、遠くの地名で自然そのままの原生林や未探査の洞窟群周辺、霧の濃い湿地、厳しい環境の山々など、要するに何か魑魅魍魎が潜んでいそうな所の依頼はランクが高く、危なそうな名前の魔物の討伐や素材、あるいはそのルートを通る護衛などであり、参考の所要日数も多くなっている。


 他の要因で危険度が高い依頼もある。ダンジョン攻略や国を跨ぐ旅路の護衛や国境周辺での依頼などのようだ。

 ダンジョンにはもちろん魔物や罠があるからで、国境周辺は平野であっても警備の兵に不審者として対応されたり、盗賊が付け狙ってたり、戦争で死した亡者がアンデットとして襲ってくるから、などなど。



 危険そうな依頼もあるものの、予想通りというか、平常運転な依頼が並んでいるように思える。ドラゴン襲来!とかアンデットが大量発生して死都になった!とかオーク兵団が進行中!なんちゃらスタンピード!て感じの旬な依頼は発生してない。幼女が出張る案件はなさそうだ。


 テンプレ通りにそこらのゴブリンやスライムを虐待しに行くか、ダンジョンに潜ってみるかの二択かな。…ダンジョン行ってみるかな。やっぱ依頼って契約だから、義務とか発生しそうだし、そもそも別に金に困ってないし。

 と言うわけで依頼は受けずに近いダンジョンの位置を確認してから出発するとしよう。


 この近辺には二つダンジョンがあり、一つはかなり近い。というか学園の裏山にある。学生の訓練に使われてる様で、たまに近場の冒険者や兵士、騎士等々にも開放されるらしい。

 低難易度で浅め、しかも中で死んでも復活できるタイプだ。名前は「訓練ダンジョン」そのまんまである。チュートリアルの為に作られたかの様なダンジョンだね。


 もう一つはマルタの街から少し外れて、西の方にある山脈の麓にあるダンジョンで「長蛇洞窟」という名前のダンジョンである。

 低階層から徐々に難易度が上がっていく良心的な設計だが、とにかく長くて深いダンジョンで一階層一階層が相当長く広い形状で階層も延々あるらしい。そして、まだ踏破されてないダンジョンということだ。キプロス帝国からも同様のダンジョンが伸びているらしく、地下深くで繋がっているのでは?という噂が実しやかに伝わっている。


 ちなみにダンジョンの最奥にはダンジョンコアがある部屋、手前にラスボス部屋があるのが通例で、ダンジョンコアを破壊するとダンジョンの代謝が止まる。

 ダンジョンの代謝というのは、魔物が定期的に涌いて徘徊したり、宝箱がポコッと出てきたり、罠が再生したり、あと何らかの付加効果の事である。死亡時に復活出戻りの結界魔法もこれに含まれる。

 というのが天界通販カタログやら、ギルドの閲覧可能な資料やら、暇でもないのに相手をしてくれた受付嬢から仕入れた情報である。


 なんか情報聞いただけでおなか一杯になった気分だよ。そういえばここまでに絡んでくるテンプレ冒険者に全然会ってないな。「邪魔だよガキ、帰ってママのおっぱいでも吸ってろ」的なテンプレなやつがさ。ちょっと周囲をチラチラ。不自然なほどこちらに興味が無い様に振る舞ってる連中ばかりだな。認識阻害で意識できてない奴がほとんど、出来る冒険者っぽい奴は、目を合わせないくせにこっちをチラチラと気にしている風である。事案だね。


 少し客観的に振り返る。認識阻害系の装備お揃いで片方明らかに尋常でない立ち振る舞いの美女メイド。どう考えても冒険者になってはいけないような幼女が冒険者カードを引っ提げて徘徊。う~ん、絶対に関わりたくない感じだわ。はぁ~なんだかな~。いや、まぁわかってるんだよ、さっきからヒソヒソと耳に入ってくる噂がさ。


「おい、知ってるか、あの幼女、魔法の先生らしいぞ」


「ああ、そうらしいな、今日ウチのパーティに入った新人がそんな事言ってた」


「一昨日はギルドマスターと話してたらしい」


「新人の戯言だと思うが、あの立派な学園で、超級の火魔法を素手で繰り出したとか聞いたんだが」


「こっちでも似たような事聞いたぞ。まさか、な」


「それよりもあのメイドだよ。気配が尋常じゃないんだが」


「ウチのレンジャーが凄い勢いでブルッてる。バジリスクと眼が合った時よりヤバいとかなんとか良いながらトイレに駆け込んだきり戻ってこないんだが…」


「おい、お前そっち向くな、消されるぞ」


 ふえぇ、みんなで幼女をいぢめるよぉ…グスン。内心では涙腺が崩壊しかかっていた。




「先生!?朧先生!あ、丁度良かった。もし宜しければ僕たちと一緒に訓練ダンジョンに行きませんか? 僕はツカサって言います!」


 ん、この感じ。幼女に救いの手が!


「ほんとう!?いっしょにいこっ!」


 つい条件反射で幼女っぽい返答をしてしまった。たぶん にぱぁーって顔してる。


 既に準備もしてあるそうで、そもそも死人は出ないので、さっさとダンジョンへ向かうことに。


 事情を聴くと、転生者だけのパーティーを組んで、既に何回かダンジョンに潜ってるらしいのだが、戦闘の運び、連携が上手くできない様で、連戦になったり集団戦だと弱い魔物相手でも厳しいらしい。何かの拍子に一人崩されるとそのまま全滅コース、という状況。

 装備や消耗品は復活されないのでゾンビアタックはダメ。もっと効率よく修行しつつ冒険しつつ…というプランのもと、一度方策を練り直しにギルドへ来たという。学校に居るんだからもっとゆっくりじっくりレベリングすればいいと思うのだが、…青春って奴だな。ここは幼女先生として導いてやるか。


「僕はツカサ、騎士タイプの前衛です。魔法も入れつつバランスの良い魔法騎士を目指してます」


「俺はリュウゲンだ、長剣、大剣の類をメインにしたいと考えている」


「あたしはカスミ、魔法職メインね、一応弓道やってたからそちらも少しは役に立つと思うわ」


「私はエリカです。えと、杖です。支援とか回復で皆を助けられたらって・・・。攻撃は、苦手かも、です」


「私は知ってると思うが魔法使いで朧と名乗っている。こちらはシエラ。私のメイドさん、そして強い。私の護衛も兼ねてる。妙な事さえしなければ良い子だからほどほどに仲良くな~」


 シエラが軽く礼をして一通りの紹介がおわる。ダンジョンに繰り出すぞー。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ