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13 ようこそフロンティアへ7

13 ようこそフロンティアへ7


シュナイゼルに連れられて、学園の裏側にある山の方に来ていた。シュナイゼルが、…シュナイゼルって名前が長いな、Schunaizel ? だから? シナイ、女っぽいな、シーゼル、よしこいつは今日からシーゼルだ。


 シーゼルが座学の魔法の授業を終えたらしい生徒達を連れてきた。五百人以上は居るのかな? 掲示板をざっと見た感じ、今にも発狂したり奇行に走るような様子は無かったが、疲れ半分、期待半分という雰囲気だ。


 一人を真理の魔眼で鑑定してみる。昨日冒険者ギルドに居た連中と比べると中の下の実力かな。魔法やスキルは初歩っぽいが、加護やら祝福が付いている。更にこの少年は【見取り稽古】というユニークスキルを持っているようだ、どれどれ、目を凝らして見ると詳細説明が出る。どうやら戦闘や演習などで観察した武術と魔法の習得が早くなるスキルらしい。特に武術、体術だと効果が大きいらしい。


 少年を分析している間にシーゼルが


「これから諸君らの魔法演習の授業を担当するシュナイゼルだ、宜しく頼む!・・・・・・」


 から始まる挨拶の様な訓示のような文句の一連を述べ、


「今日は諸君らの初演習にあたり、この学園最強の魔法使いである朧先生にお越しいただいた! 少し魔法を見せていただけるとのことなので、この世界の魔法が如何なるものなのか、実際に見て感じてほしい!」


 と、熱い紹介をいただいた。え、喋る内容何にも考えてませんよ。むむむ、よし、魔法の仕組みをテキトーに喋りながら考えよう。


「えー、魔法というのは今では古代魔法語と呼ばれる文字や図式に魔力を流すことで発動する機構、んー、水車の様なものだ。水を流すと水車は仕事をする様に、魔法式や魔法陣に魔力を流すと魔法が発動する。この魔法陣、ないし魔法式を都度魔力で構築し、発動するのが諸君らの目指す物になるだろう。その他には、魔法式を物理的に書き込んで、魔力をそこに流して魔法を発動するのが設置型魔法陣や魔道具だ。更に流し込む魔力も魔法を触媒するアイテムで補う形の魔道具もある。見た事あると思うが魔導ランプなんかはこのタイプがほとんどだ。こういう書き込み式の物は都度詠唱するものより複雑化していて燃費も悪いし、状況に合わせて調節とかができなかったりするが、一度作ってしまえば誰でも簡単に使う事ができる。あーと、いずれの魔道具も魔法陣も、基本的に摩耗する消耗品だから注意してくれ」


「マジかよそうなのか」

「さっきの座学より分かりやすいぞどういうことだよ」

「朧ちゃん、幼女なのにどういうことなの!?」

「魔女っ娘、いや、魔幼女か。あの帽子の存在感凄い!ぐぅかわ」

「のじゃ系 幼女だよな、あの声でこの喋り方は反則だろ」

「お持ち帰りしたいでござる、prpr」

「かわゆす、なでポ」

「アァーー!かわいいぃいいぃいむりぃぃい!お持ち帰りしたいぃい~~」


とかなんとか聞こえる。後半の奴はともかく、彼らにはもう少し為になりそうな事を教えた方が良さそうだ。あと幼女喋りを忘れてしまった。魔法の知識を引き出してるうちに、その記憶の持ち主に引っ張られたのかもしれない。まぁいいや適当で。


「…よし、じゃあ魔法を実際に使う時の説明に入るぞ~。さっき、魔法式や魔法陣は古代魔法語で出来ていると言ったが、式に記された言葉の意味する通りに魔力が流れ、魔法が発動する。水路の様な物だ。古代魔法語の細かい意味や魔法式の羅列の配置の意味、魔法陣の形や配列などが理解できれば一番だが、新しく魔法を作るのでなければそこまでしなくてもいい。正しい魔法式、魔法陣の再現、魔力の流し方、発動する魔法のイメージができればいい感じに魔法が発動するぞ。その時に魔法のイメージを言葉に出して並べて、最後に魔法陣の形を魔法名にして締めくくると上手くいきやすいらしいぞー。最初は魔法陣のお手本を見ながら先生に教えてもらいつつ魔法発動を目標に。次は先生無しで発動できるように。次はお手本の魔法陣を見ないで。という風にどんどん使いこなしていってくれ。使い慣れた魔法は無言で発動出来たり、より強力で効率の良い形になったりするから、億劫がらずに修練していってくれ~」


 シーゼルはあっけにとられた顔で私を羨望のまなざしで見つめていた。生徒達は期待に満ちた者、聞き入っている者、納得顔の者が多い。ちょこっと小児性犯罪者の顔をしている奴もいる。ふっ、括目せよ!


「じゃあファイアーボールをみせるぞ~」


≪激しく燃え盛る…火山の烈火の如く苛烈な…後には塵も残さない…敵を燃やし尽くせ、ファイアーボール≫


 手の平を上に向け、魔法詠唱を開始する。隠蔽などのオプションは無いシンプルな火魔法の初級魔法ファイアーボールが発動しはじめる。少し流し込む魔力を練ってある。こうすると時間がかかるが魔力の運用効率が良くなる。魔法陣を見せる意味で、少し発動を遅らせて魔力を循環させる。付け加えた言葉の意味を成す魔法式が無駄なく並んでいる。ちょっと威力が強すぎるかな?


『キイィィーーーーーーー……バシュッーーーゥン』


 山の木々を少し焦がし、網膜を焼き切りそうな発光球体が凄い速さで目標にしていた雲を蒸発させ通過してそのままお星さまになった。宇宙に飛んでったのだろうか、どこかに落ちるとヤバそうなんだが。これが俗に言う「余のメラだ」て奴か、まぁいいか。


「…とこの様に、皆も馴染みやすい初級のファイアーボールでも強くなる。魔法は広く浅く、よりも少なく深く、の方が実践では役に立つ…そうだな、煮詰まったら新しい魔法、器用貧乏で進め無くなったら一つの魔法に打ち込むくらいのバランスがいいかも。うん、魔法の先生も結構居るみたいだから、しっかり教えてもらうんだぞ」


「ありがとうございます!みんな朧先生に拍手!」


 シーゼルがそう言うと皆が拍手する。何か恥ずかしい。中二を拗らせた過去を人に見られ、しかもなぜかベタ褒めされた気分だ。今日はもう帰ろう。シーゼルが話を引き継ぎ始めたタイミングで、アサシンの影を纏ってステルスしていたシエラに目配せして、私も影に紛れつつ退却した。

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