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第106部

プロローグ


新暦、999年。世界で最初に魔法教育を専門とした、魔法学校が作られた。その学校は魔法科のみしかなく、徹底した専門教育だった。その後、その魔法学校は、全宇宙中の魔法が使える人を募集し続けた。今や、全ての宇宙空間で、支部が置かれている。そして、その総本部があるのが、第3宇宙空間の「フェイル」と言う惑星だった。フェイルと言う惑星は、今の地球と良く似た環境だった。その後、恒星の爆発に伴って、惑星自体が崩壊の危機に晒された事もあり、長い封鎖されていた惑星だった。そもそも、この惑星どころか、惑星系一つ丸ごと封印されていたので、数百年間にわたって、大量の魔法が使われ続けた。その影響を受け、この惑星の地質は変質をして、魔力の結晶が作られた。その結晶は、「ドデカクリスタル」といい、正十二角形をした平べったい白い石であった。最初に見つかったのが白かったので、さまざまな事典には、ドデカクリスタル=白と言う事になっているが、さまざまな神の力が作用するので、正確には白のみではなかった。そして、今年、夏休みを利用しての、探索作戦が行われていた。


第46章 夏休みの宿題


新暦1020年、現在。魔法を使える人は、全人口の半数程度に登る。特別な省庁として、上級魔法協会及びそれらの全ての下部組織が解体され、魔法省が設置されたのは、すでに過去の事である。さらに、フェイルを封印後、最初に開発した人種が日本人だった事もあり、この地には、日系の名前を持つ人が多数いた。夏休みを向かえる日、そこからこの物語は始まる。


2年生の教室、机が整然と並んでいる。荷物は既にそれぞれが持ち帰っており、机の中も、両脇も、何も吊り下げられたり、入ったりしていなかった。生徒は、全員、体育館に集められており、今学期最後の集会が行われていた。


「と言う事なので、今回の一般的な宿題はありません。しかし、その代わりの課題があります」

体育館の一番前、ステージの上では、彰浩校長が課題について話していた。2年5組の列では、佳苗定子が、立ったまま寝そうになっていた。校長は、背広の右下についているポケットから、ドデカクリスタルを取り出した。

「今学期の宿題は、これを集める事です。すでに、1年生の時に習ったと思いますが、これは、ドデカクリスタルと言って、非常に強力な魔力が秘められています。出来るだけ、多くのドデカクリスタルを持ってくる事。それが課題です。なお、これを取るために、部外者とグループを組んでもいいし、戦闘の結果、相手のドデカクリスタルを奪ってもかまいません。期間は、明日から、始業式の日までの、2ヶ月間。但し、1ヶ月後に、登校日を設け、その時までに集めたドデカクリスタルは、学校側が預かる事にします。以上です。では、これで、終業式を終わります」


佳苗は、家に帰ると、携帯を見た。メールが一件入っていた。メールを開くと、幼馴染で、同じ魔法学校に通っている、武中鮎からだった。

「おっはよ〜、いや、おはようでもないかな?とにかく、ドデカクリスタル、だっけ?あれ、一緒に集めない?返事待ってまーす」

佳苗は返信を送った。

「うん、いいよ。ドデカクリスタル、一緒に探そう」


翌日、佳苗は、鮎の家に行き、そして、この惑星でドデカクリスタルを探す事になった。


「まず、どうやって探す?」

「ドデカクリスタルって、魔力の結晶体でしょ?だとすると、魔力が集まっている所を探せばいいんじゃないかな?」

だが、鮎も佳苗も、捜索系の魔法は習っていなかった。

「図書館に行ったら、何かわかるかも知れないね」

佳苗が提案したら、鮎も賛同した。

「そうだね。確かに図書館だったら、資料あるかも知れないしね」

そして、図書館に彼女らは向かった。


この町は、学校を中心として発展しており、それぞれ、ブロックごとに、さまざまな建物があった。学校に一番近い公共施設が、この惑星と学校が共同運営している、公立魔法図書館だった。ちなみに、横には普通の図書館もある。この魔法図書館は、蔵書数がこの第3宇宙一で、全ての宇宙空間の中でも、3番目と言う蔵書数を誇っていた。そして、彼女達は、その一角、魔法結晶物の所で、ドデカクリスタルについて調べていた。周りには、誰もいなかった。


「あった、これだ」

鮎が一冊のとても古い本を引き抜いた。そして、二人で、机に座り、頭を近づけて、読みはじめた。以下は、読みあげた内容である。

「ドデカクリスタルについて、新暦790年著。ドデカクリスタルとは、今年の学術調査によって、特別に開放された第3宇宙空間/第89銀河系/41腕/第892惑星系の、第5惑星で発見された、魔力結晶体の一種である。これと同様なのは、全宇宙を見渡しても、現在、太陽系/第2惑星にある国立博物館に、イフニ氏が寄贈された、「神の宝玉」のみである。このドデカクリスタルは、正十二角形を描いており、それぞれの頂点は、神の数と一致している。十二種類の神の色が存在している事から、ドデカクリスタルにも同数の色が存在していても、なんら不思議ではない。さらに、このドデカクリスタルを用いて、白色の剣が作られた。だが、剣は製造された翌日に忽然と姿を消し、未だに発見されていない。白色から、この魔力は、誠実の神である、アントイン神系統の魔法であると推測される。現に、封印作業中の魔法使い達は、主にアントイン神の遺伝子を保持していた。我々は、さらに発掘作業を続けており、更なる発見が望まれる」

本を元に戻して、同じ机に座り、話し始めた。

「つまり、ドデカクリスタルというのは、神の魔力の結晶でもあると言う事だね」

「でも、どれほどの量を使えば、こんな事になるんだろう。それに、ドデカって、何?」

「さあ、とりあえず、明日またここに来よう。それからだね」

彼女達は、いったん家に帰った。


その夜、彼女達は、同じような夢を見ていた。


目が覚めると、家に戻っていた。

「なんだったんだろう、あの夢は…」

佳苗は、鮎の家に行った。鮎は家の前で待っていた。

「あ、おはよ〜」

「おはよう、実は、私、昨日夢を見たの」

「え?本当?私もよ」

「もしかして、なんとかっていう神様が出てきて…」

「どこかの山の洞窟に案内されて…」

「そこに、剣が刺さっているっていう?うそ、同じ夢?そんな事があるの?」

「さあ、私には分からないけど、とにかく、図書館に行ってみよう。それと、私、昨日少し調べてみたの。インターネットで」

歩きながら鮎が言った。

「で、どうだったの?」

「ドデカって言うのは、接頭語で、12を意味しているそうよ。それと、ドデカクリスタルって言うのは、偶然発見されたもので、最初の発見場所には、石碑と博物館があるそうよ。その博物館には、複製のドデカクリスタルも置いてあるんだって」

「じゃあ…」

佳苗は止まってから続けた。

「じゃあ、そこに行って見ましょうよ。そしたら、よく分かるんじゃない?」

「それもそうね、これから行く?博物館の場所は、ここから、ちょっと行った所にあるそうよ」

彼女達は、そこにつながっている道路に沿って、タクシーで移動した。


「さあ、ここだよ」

タクシーの運転手が言った。

「それと、料金が…650GACだね」

「じゃあ、これでお釣りちょうだい」

佳苗は、財布から1000GAC札を出した。

「あいよ、350だね」

タクシーから出ると、博物館があった。ちょうど、正面玄関の前に、石碑があった。その石碑にはこう刻まれていた。「宇宙初のドデカクリスタル発見場所 記:新暦790年惑星時間7月5日」博物館は無料だった。

「なんだ〜、少しばかしお金持ってきたのに」

「それは、お昼代だね」

佳苗と鮎は、中を歩いて行った。そして、目的の場所を見つけた。

「ここだ、ドデカクリスタルについて」

鮎は読み上げはじめた。

「ドデカクリスタルは、おおよそ500年間にわたる、惑星系封印作業の副産物であり、それぞれの、魔法使用の関係によりさまざまな色が存在する。神が12柱存在する事から、12色あると言われているが、現在発見されているのは、アントイン神の色の白のみである。それぞれの魔力は、おおよそ690あり、これは、天然に存在する鉱石の中では、最も強い数値である。これから魔力を取り出すと、爆発的なクリスタルの崩壊が起こり、巨大なエネルギーが放出される事が判明している。それは、魔力の量と比例しているが、魔力1に対し、エネルギー量1.7294×10^8Jとなる事から、平均的なクリスタルで、約1.1933×10^11Jとなる。だが、現在発見されているドデカクリスタルは、総合計8000ほどの魔力を有しているので、世界は未だに安泰なのである」

したには、ドデカクリスタルの複製がおかれており、さらにその横に、「ドデカクリスタル(複製)」と、丁寧にも書かれていた。その下に、「本物は、現在、魔法学校に収蔵されている」とも書かれていた。佳苗が鮎に言った。

「じゃあ、ドデカクリスタルを集める意味がないじゃない。なんで、こんなに集めたがるの?」

「さあ、最低でも分かっているのは、私達じゃ、探せないって言う事だよ」

「とにかく…」

その時、少し考えるような顔をしてから、きっぱりと言った。

「ね、やっぱりここにいちゃ駄目だよ。探さないと、何も始まらないよ」

佳苗は、鮎の肩を強くつかみ、そして言った。

「行こうよ。ここだけじゃなくて、今すぐに、外の世界へ」

鮎は佳苗の腕をつかみながら言った。

「外の世界って言ったって、いろいろいるよ」

「この宿題には、何か裏がありそうなの。今までもいろいろとあったわよ。例えば去年なんて…」

「毒ニンジンの根、一人5本以上。だったわね」

「その後、何が起こった?」

「校長が強烈な腹痛を訴えて、そのまま入院。それで、今の校長になったわね」

「何かおかしくない?あんなに丈夫だった、生徒や教職員が全員ファイガーウイルスに感染した時でさえ、外では、何千人って言う死者が出たのに、あの校長は、平然と出勤して、その時初めて気がついたって言うぐらいなのに、なんで、強烈な腹痛を起こしたの?それも、みんなが、毒ニンジンの根を持ってきた直後に」

「…確かにね。それに、課題だし、結局は外に出なきゃならなかったんだし、ただ、その時期がみんなから1日ずれただけ…」

その時、佳苗が後ろから肩を叩かれた。

「佳苗達、まだこんなところにいたんだね」

佳苗が後ろを向くと、背中に大きな盾を背負った、同級生の竹中優太がいた。鮎が言った。

「優太君、あなたこそ、まだここでくすぶっていたなんてね」

「ははは、その言葉、君達にお返しするよ。それと、どう?佳苗達、僕と一緒に課題集めに行かないか?自分は、探査系の魔法は出来るけど、地図の見方も分からないし、それに、こんな大きな盾を背負っているから分かると思うけど、根は、ちょっと、弱いからね。それに、3人寄れば文殊の知恵とも言うし」

「優太も、そんな面があったなんてね」

「どうする?私は、別にかまわないと思うけど」

「鮎が言うんなら、別にいいわよ。今から行くべきかな?」

「そうだと思うよ」

そうして、3人組で、旅に出る事になった。


その日の夕方、リヤカーをどこからか調達して来た優太は、それぞれの家族に見送られながら、旅に出た。

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