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AES  作者: 石川湊
AES:Abandoned ONE 壱章 再誕した世界
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第十九話「最下位の騎士」

『待たせたなお前ら! これよりEクラスチーム・アイゼンブルームvs同じくEクラスチーム・ハーベストの試合を開始するぜぇ! DCコード0982、遮蔽物が多いくらいは大して特徴のねぇつまらない会場だが、まぁどうせ雑魚同士の試合なんだから、適当に楽しんでいってく――おっといけねぇ、それじゃあ準備はいいかぁ!? レディ~……ファイッ』


 試合会場の大型モニターから、チャンピオンズリーグの時と比べ若干やる気のないバーチャル実況者が試合の開始を告げる。


 最下位(Eクラス)同士の試合は見世物としての商品価値は低いが、その分チケット代が無料の為むしろ初見の観光者は足を運び易く、実際0982会場の観客席は満員とはいかないものの、控室のモニター越しでも分かる程度には盛況を博していた。


「アリス、まずは敵チームのBRを探そう。アリス、聞いてる?」


『……りょーかい、先行するわ』


 乱立する小岩に遮られ、試合会場は全体の様子が分からない作りになっている。公平を期す為、試合中控室はAES以外との通信が遮断される為、ユーリ達のモニターからも、敵チームの動向は分からない。


『ヘイヘイヘーイ! そんなチンタラやってねぇでよ、早いとこガチのぶつかり合いってやつを見せてくれ! お客様達は退屈しちまってるぜぇ~?!』


「アリス、気にしなくていい。落ち着いていこう」


『分かってるわよ……待って、敵機発見したわ。仕掛ける?』


 アリスから送られてきた映像に、敵チーム・ハーベストの機体が映し出される。そこにいたのは、西洋騎士の甲冑や盾を模した装備で固められた、重装型のAESだった。


『あいつ、盾しか持ってないみたい。多分DFね。チャンスよ』


「ちょっと待ってアリス……変だな。なんでDFがこんなセンターライン付近まで突出してるんだ? もしかしたら、近くに味方がいるのかも」


 今までBR向きのスピード重視にチューニングされていたアリスは、攻撃用の戦術機甲(アームドギア)も両腕のビームサーベルしか持っていない。その唯一の武装でさえ、近年の不況の煽りで出力がかなり抑えられてしまっているので、武器を持っていないガチガチの重装型は、アリスにとってはありがたい相手……ではあるのだが。、


『見つからないわっ。折角DFが孤立してるのに、狙わない手はないわよ!』


 周囲を探りながら歩を進める西洋騎士は、幸いアリスにまだ気付いていないようだ。しかしこの千載一遇のチャンスを前にしても、未だユーリの胸には言葉に出来ない違和感が引っ掛かり続けていた。


「……分かった。でも深追いはしないでくれ」


『了解!』


 アリスの火力不足は明白だが、相手に武器がない以上いずれ必ず決着はつく。そう自分に言い聞かせ、ユーリはモニター越しに斬りかかるアリスを見守る。


『たぁああああああああああああああああ!』


『おぉーっと、先制攻撃を決めたのは、チーム・アイゼンブルームのアリスのようだぜ! あのクソ生意気な……失敬! あの鼻持ちならない……超失敬! あのお転婆娘、今まで姉妹機の影に隠れていい所無しだったが、やりゃー出来るじゃねぇか!』


 敵機の兜に浅い亀裂を入れ、即座にその場から離脱するアリス。やはりアリスの武装では一撃で仕留める事は叶わなかったが、追撃を免れたのだから先制攻撃としては上々の結果だろう。


「いいぞアリス! そのままつかず離れずでDFをマークしてくれ!」


『分かったわ、任せて!』


「メリルさん、DFはアリスがマークしてますが、そっちに敵機は来てますか?」


『……いいえ、今イチちゃんと一緒にいるけど、敵の気配は全くないわ』


「了解です。そのまま警戒を続けて下さい」


 ユーリの想定の一つに、DFを囮にして一気にFWとBRが仕掛けてくるのではという予想があったのだが、どうやらそれも杞憂だったらしい。勿論まだ安心するには早いが、アリスが再び潜伏した今、奇襲はあまり効果がない筈だが……、

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