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5.校外学習の準備

 校外学習はスリーステップに分かれている。第一に事前学習。第二に実地学習。第三がまとめ学習。日常学習でのリズムがここにも踏襲されていて、やる気のない生徒にとっては迷惑極まりないことになっている。


 僕らの班は幸いそんなことはなく、形式だけの研究にファイティングポーズをとっていた。テーマは雷門だった。


 941年に作られる。幾度か焼失している。

 1886年から1960年までは姿を消した。現在のものは松下幸之助が建てたものである、云々。

 こんな学習は、大した内容を求められているのではないのだ。やらなければならないことに対して、ある程度の誠意を込めて向き合うことができるか、それを試されているのだ。最低限を済ませればそれでよい。


 ミネタは橋本と談笑を始める。橋本は割と明るめのキャラで、ミネタの女好きテンションにも対応できるようで僕としてはありがたいことこの上ない。


 しかし、男女一人ずつが消え、残されたのはやはり男女一人ずつだ。男はもちろん僕、小出で、女は関根だ。

 同じ班になって、関根に関してわかったことがある。

 彼女は基本的に無口なのだ。口に出す言葉は、うん、やそうだね、といった相槌が主で、それ以外には自発的に発言しない。


 それでも、うんやそうだねの、「う」と「そ」が発せられる瞬間の喉から頬にかけての動き、すぼめられた唇から発せられる芯のある声から、発音自体が苦手だという印象は受けなかった。むしろ、この人が話せば場の雰囲気が変わるというような声に感じた。もっと喋ってほしいが、それは今の彼女にとって想像の範囲外にある行為のようだった。


 ミネタと橋本の会話に耳を傾け、たまに突っ込みを入れて授業が終わった。関根は笑ってもいなかった。窓の外の青空を見ていた。


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