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アマノクニ  作者: 山田遼太郎
壱ノ巻~神は此処にいまし~
9/54

其ノ九~モクテキ~

天帝、語る。



 何が飛び出ても驚いてやるものかと、クエビコは覚悟していたが、


『まず賊の正体……きゃつらは正真正銘の人間ぞ。もっとも体の方は、地上の珍妙な技術を使った「特別あつらえ」だがな』


「あれが人間?」


 即刻しくじった。真一文字に引き締めていた口が、容易くほどける。


『余が孫を降ろす時、天浮橋に一度だけ開いて閉じた地上への道が、何らかの方法で突破されてしまったのだよ。現に真っ先に襲撃を受けて占領されたのは、そこに最も近い辺境の街だったからな。まァとにかく、それを皮切りにあちこちで次元の歪みが生じて、きゃつらは虫が涌くように増え始めた』


 木の上のカラスは、羽根でくちばしを隠す不自然な仕草を取り、体を揺する。どうやら笑う真似らしい。


『矮小な人間風情が、いつの間にやら面白き芸を身につけたものよ。にっひひ、行動の予測できん悪戯っ子を見ている気分ぞ……実に楽しい』


「手前の国が侵略されてるのにか!」


『目くじらたてるな、ジョークぞよ。余だってムカついている。だからこそこうして愚弟どもにも伝えてない情報を提供してやった。……とはいえ、まだ不明な点も多い。実際のとこはニギちゃんの方が詳しいんじゃないか?』


 二つの視線を向けられた巫女は、慌てた様子でぶるぶると首を横に振る。


「知ら、ない……。ボクは『遊んでた』だけだよ。昨日まで普通に仲間と一緒だったのに気がついたらこの村にいた。なんにも覚えて、ない……っ!」


「どこが詳しいって? アマテラス! こいつはさっきから寝言みてーな事しか言わねえよ。おい小娘、遊びってのは一体なんの話だ?」


「うそ……!?」


 逆にあなたの方が理解できない、とでも言いたげな困惑の色を浮かべる相手に、クエビコは苛立ちを募らせる。巨大な認識の壁を隔てて互いの理解を妨げあっているような両者を、カラスはしばし見比べ、フムと唸った。


『なあニギちゃんよ、言ってもすぐには受け止められんだろうが、ここは地上と違う。ソナタは飛ばされてきたのだよ、高天ヶ原という神の住む国に』


 この言葉にニギは瞠目し、先刻以上の動揺を見せる。口をぱくぱく開閉させるも、声にならない様子だ。


『余は前々から何名かの人間に対象を絞り、使いを送って調べていたのだ。中でもニギちゃんには、明らかに他と違う素質を感じた』


 聞いた事もない情報に、クエビコは驚く。ただ引き込もってたんじゃなかったのかよ、と言おうと思ったが、よしておく。


『恐らくソナタは、神世と特別に高い親和性を持つ巫女みたいなもの。戻れぬ原因というのは、何度か来るうちに高天ヶ原の住人として組み込まれてしまったからだろう。その証拠に以前と変わったとこはないか? 出来ていた事が出来なくなったり、逆に異様な力が備わったり。心当たりはないか?』


「そ……そんなわけない、そんなわけ」


 ニギは全身を震わせながらおもむろにクエビコの方を向き、片目に力を入れて見開いたりパチパチさせたりと、一生懸命おかしな行動を始める。

 地上でいうウインクの練習っぽい、どこか間の抜けた姿である。

 しばし同じ事を繰り返した末、彼女はしょぼんとうなだれてしまう。


「だめ、アナライズできない」


「だから、もっと分かりやすく言えおまえ」


「な、名前とか情報、見たりするやつ。普通は誰でもできるやつ」


 そこで、クエビコはふと思い出す。襲撃者達の術の中に、名乗ってもない彼自身の名を言い当てるものがあった事を。


「あれか?」


 初めて理解の欠片を得た瞬間である。同時に丘での戦いを回想し、叫ぶ。


「そうだアマテラス! 異様っていやあ、こいつ滅茶苦茶な力を使うぞ! 他の連中も驚いてたくらいだ! 確か『つるぎ』とか『かがみ』とかいう」


「え、え?」


 あたふた混乱するニギをよそに、カラスは羽根をばたつかせて歓喜する。


『ビンゴぞ、クエビコ! それはまさしく三種神器ミクサ・ウエポン! あァ嬉しい、余の推測は正しかったぞよ。今すぐ旅支度を始めい!』


「ちょっと待ってくれ。まだよく飲み込めねえが……おい、『それ』がこいつを連れてく理由って事でいいのか? だとしたらよ、こいつは、まさか」


 クエビコの中に、電撃めいた激しさを持つ予感が駆け巡る。

 つるぎとは、天叢雲剣アマノムラクモノツルギ

 かがみとは、八咫鏡ヤタノカガミ

 まがたまとは、八尺瓊勾玉ヤサカニノマガタマ

 以上三種の神器を知らぬ者など、高天ヶ原にはいない。アマテラスはこの秘宝を『ある神』に授け、人の世の創成を託し、地上へと降ろしたという。


 その、神の名は。


しかり! ニギは誰あろう、我が最愛の孫・アメニギ岐志シククニ邇岐志ニギシ天津アマツ日高ヒダカ日子ヒコ番能ホノ邇邇芸命ニニギノミコト転生体うまれかわり! あ~ん会いたかったぞよ! もう一度おばあちゃんって呼んで!』


 アマテラスを宿すカラスは、甲高い叫びを上げて止まり木から飛び立つなり、ニギの肩に降り立って猛烈な頬擦りを始めた。時を越えたドラマティックな『再会』に感極まっての行動だろうが、される側はたまったものではない。白い顔はたちまち青ざめ、たださえ感情の薄い平坦な目は生気を失う。


『クエビコよ頼んだぞ! 何としてもこの子を無事に天浮橋へと導き、「天孫降臨てんそんこうりん」の儀式を再現せよ! さすれば扉は元の機能を取り戻し、内側から閉ざす事も可能となろう! ……なぜって? 橋のシステムへの干渉は、三種神器を持って一度でも中を通った我が孫にしか為し得ぬからだ! 悪しき人間どもを高天ヶ原から一掃し、神世の平穏を取り戻すにはそれしかないィーッ!』


「や、やたらでけえ話じゃねえか」


 話の筋をようやく掴めたクエビコは、おのが双肩にのし掛かる途方もない使命への重圧を自覚する。だがそれに伴い、新たな疑問も生まれた。


「いや、それで奴らを追い出せるなら願ってもないが……でも何でおれなんだよ? もっと強くてメジャーな神ならいっぱい居るだろ?」


『うつけ! 弱くてマイナーな神だからこそ適任なのだ。敵どもはどういうわけか競って強い神々をターゲットにする傾向があるからな、かえって旅の危険が増す。第一、我が部下は各地での対応に手一杯でほとんど動かせぬ』


「なるほど理にかなってんな……って今、バカにしたろ」


 やや腹が立ったが、ここは抑えておく。些末なプライドよりも今は、与えられた生きる理由と復讐のチャンスにこそ喜ぶべきだと思ったからだ。

 ここで、またも置き去りのニギが、やっとの事で鳥の抱擁を振りほどく。


「そこ行けば……いい? そうすれば、帰れるの?」


『そうとも! だからソナタにも重要と言ったであろ? ショック受けてるように見えてもしっかり聞いておるとはお利口さんよの!』


「まだ全然……わからないし、夢なら覚めてほしいし、頭の中ぐちゃぐちゃだけど、わかった気にならなくちゃって……はやく帰りたいから」


 ゆらりと立ち上がり、目尻に残る涙を拭う。心から理解はできずとも、本能から、目の前の希望的観測にすがらなければ居られなかったのであろう。


『ようし決定ぞよ。さーて用も済んだし、仕事に戻る』


 言うが早いが、カラスは力強く羽ばたく。


『言い忘れてたが、クエビコ。くれてやった十字架は肌身離さず身に付けておけ。余の神力が残存しているゆえ、邪神化を抑制してくれるだろうから』


 さらば、と黒い風が舞い上がり、瞬く間に夜空の闇へと同化していった。

おしえて! アマテラスさまっ☆


アマテラス「おまいらおっすおっす、余はアマテラス。ちょー有名な高天ヶ原のナンバーワンでオンリーワンぞよ」


オモイカネ「乗ッ取ラレター゜゜(´O`)°゜

何デここニモ出ルンデスカー! 本編デ散々台詞アッタジャナイデスカー!」


アマテラス「よしよし泣くでない。この余にはいくら出番があっても語りきれぬ魅力があるゆえな? ……まァしかし確かに、教えろと言われても現段階で知っている情報は全て話したつもりだからな、ここは一つサービスに、余のエロエロなところについてでも語るとするか?」


オモイカネ「エッ、何ヲ仰ッテルノカ今一ワカリマセンガ……ダッテ、アマテラス様の胸ハワターシヨリハちょびっとだけ大キイトイウ程度のモノで、サシテ語ルヨウナところデモないヨウナ……」


ガッ


アマテラス「よく聞こえんかったぞよ?(ニッコリ)」


オモイカネ「ごっ、ゴメンナサーイ(失禁)」


アマテラス「ちなみにボッチのクエビコくんは余を引きこもりとか散々呼んでいたが、余はこれ充電してるだけだから。明日から本気出すから。全国の充電してるみんなも、無理に外に出たりして無駄なエネルギー使うことないぞよ(ヾノ・∀・`)

それはそうと最近はこすぷれというやつにハマっていてな、特にこのセーラー服なんか可愛いじゃないか。余に似合うと思わぬか? これを着た余に罵倒されたいと思わぬか?

よーしそうかそうか、次に本編で姿見せするときはこれを着る事にしよう! 楽しみに待ってるのだぞー」


オモイカネ(コノ……ロリババァ……自分ノ事可愛いと思ッテヤガンノカ……)


ドゴッ


アマテラス「それにしても今日は楽しかったぞ、またコーナーに呼んでくれるか? 呼んでくれるな? 当然だよな? 余は姫ぞ? ぞ?」


オモイカネ「こくこく(涙目)」


アマテラス「というわけでみんな、次回もよろ! これからの余の出番にも期待してほしいぞよ、ちゅっ」


オモイカネ(ウゲー)

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