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アマノクニ  作者: 山田遼太郎
弐ノ巻~ガハラのRUN&RUN☆~
14/54

其ノ四~僕は妻だけを傷付けない~

誰かの血が流れても。

 槍の穂先が沈み込む。深く、深く、抉り込む。

 が、アシナヅチに伝わったのは妙な感覚だけだった。藁と枝ばかりのカカシを突いたにしても、手応えが無さすぎる。


「悪いな、そいつはおれの二号だ」


 背後に立った気配に振り向く、一瞬。

 アシナヅチは、その動作すら無駄にせぬ。上半身を勢いよく捻り、貫いた『偽物』ごと槍を横薙ぎに振るう。

 一切の躊躇なき全力の一閃。

 声の主……クエビコはそれを前方への跳躍で避けると同時、爪先でくうに弧を描く回し蹴りでもって、友の顎を蹴り飛ばす。


「がぅっ」


 よろけて数歩後退したアシナヅチは膝をつき、ここではじめて、槍の穂先に刺さったものをしっかり視認する。

 藁で編んだ人形である。心なしか、顔つきが少しお茶目だ。


「起きていたのか? いやそれよりも、薬は確かに……」


 愕然とした呟きを聞き、クエビコは懐かしいものを感じて微笑む。『それよりも』というのは、いつも冷静沈着な態度を崩さない友が、不安を感じている時に何度も繰り返してしまう口癖だという事を、長い付き合いの中で知っていたからだ。最初は村の入口で、二度目は食事の席で、今日だけで三回使っている。思えばずっと、この神は、何かに対してひどく緊張していた。


「知らなかったか? カカシの胃ってさ、取り外し可能なんだよ。楽に洗浄できて便利だぜ」


 場にそぐわないおちゃらけた口調で言うと、彼は相手の足元に、つぎはぎのズタ袋のごときものをべしゃりと落とす。


「こちとら伊達に豊穣神やってんじゃないんだよ。飯の中の不純物なんざ臭いでわかる。あんまりなめちゃあいけねえ」


 アシナヅチはしばしの沈黙を挟み、やがて観念したように口角を上げた。


「一体いつから勘づいていた……などと聞くのは無粋に当たるか我が友よ」


「疑ったのは出会った時さ。おまえのマヌケが教えてくれた」


 見下ろす瞳から不意に感情の色を消し去って、クエビコは息を吐く。


「あの時、カカシのおれが歩いてる事よりも先に『無事だったか』って聞いたよな。なぜだ? タニグク村の件はあとで初めて話したはずなのに、知ってなきゃ出ねえ言葉だぜ。これでおまえを『信じないに足る理由』が一つ」


「相も変わらず、病的なまでの神経質と自意識過剰だな。だから友達も少ないのだ」


「何とでも抜かせ。もっと言うなら最初ッからだよ。カラスに道を聞きながら山を降りてる途中、三日前に情報をくれた奴を見つけてな。そいつの頭をもう一度覗いたら何が出たと思う? 『アシナガ村は平穏無事』だってよ。襲撃の前と後で話が違うのはどういう訳だい?」


 今度は軽口が返ってこない。


「そもそもおかしいと思ってたんだよなァ。おまえの村が襲われて、その横のテナヅチの村が無事で、どうしておれの村が滅ぶよ? 簡単だ、おまえが通したんだ奴らを。おおかた密約でも交わした上で、テナガの代わりにタニグク村を差し出しやがったんだろう? エェ?」


 自信満々にのたまったものの、この部分に限定して言えば、大した確証はまだない。思い込みに近い推測だ。


「でもそうだな、さすがにこれは暴論か? 第一、おれがカカシをしてたのは村に行く唯一の道。ノコノコ歩いて来た者をおれが見逃す訳ねえし、連中は空間転移を使うらしいって情報もある。だからこの仮説は間違いかもな」


 クエビコは、自分の考えが推測のままであってほしいと願っていた。しかし、望んでいた否定は返ってこない。


「何が言いたいかってーと、ハッキリ言って何がなんだかわからねえから、ここから先はおまえの口から説明してほしいんだよ。これまでの不審すぎる言動も、飯に混ざってたあからさまな遅効性の痺れ薬も、現に今しっかりとおれを殺そうとしたその槍も、全部脳ミソの足りねえカカシの妄想だって」


 ここでわざと言葉を区切り、アシナヅチの襟元を引っ掴み、無理矢理立ち上がらせた。

 それから交互に腕を振るい、その顔面を、


「証明」

    殴る。

「して」

    殴る。

「ほし」

    殴る。

「いん、だ」

    殴る。

「よおっ!」

    頭突きを見舞う!


 鼻と口から血を垂れ流してのけ反るも、アシナヅチは倒れず耐えた。


「ブふッ……話せばおぬしは、満足かっ!」


 前歯の欠片の混じった赤い痰を吐き、まだ握っていた槍を払う。遠心力で串刺しの人形が抜け、床に落ちる。

 迫る、胴抜きの軌道。

 避けきれぬとふんだクエビコは、逆に一歩前に踏み出し、穂先に近い柄を両手で掴む。


「そうともクエビコ、先の暴論も大正解だ……。私は『奴ら』と協定を結んだのだよ。武器をくれてやるかわり、領内で暴れぬ事を条件にな」


 拮抗する力と力……という訳にはいかぬ。今の状態が続けば、カカシの体が押し負けるは時間の問題である。

 クエビコは相手を睨み据えたまま、槍を右脇に挟んで、左手を背部へと回す。そして、アマテラスの杭と己をくくりつけている『たすき』をほどく。


「カラスに嘘を伝えさせたのも私だよ。おぬしが死んだものと思って術を解いたのが仇となったがな……これでもうおしまいだ。どんな理由があろうともおぬしは私を許さんだろう。そして結果的に妻をも脅かすだろう! なぜ山で死ななかった! なぜ何も知らぬうちに討たれてくれなかったのだ!」


「もういい黙れっ!」


 妙に芝居がかった白々しい告白を怒気で遮り、アシナヅチの体を、槍の柄ごと高々と持ち上げてみせる。

 例の杭は、既に足元に転がっている。邪神化の進行を意図的に再開させる事で、一瞬だけ腕力を底上げしたのだ。


「表へ出ろお!」


 そのまま、驚嘆の悲鳴を迸らせる『敵』を勢いよくぶん投げた。

 障子を突き破り、砂利を散らして中庭へと転がり出ていくアシナヅチに、クエビコは縁側から叫ぶ。彼の腕は杭を抱え、前方に向けている。


「ふざっけんなよクズ野郎がっ! おれの民を売りやがって! 子々孫々まで呪われろっ!」


 星なき月夜のもと、縁側の板を蹴り、弾かれるように跳びかかってゆく。

 突き出した杭の、鋭利に尖った先端が、迎え打つアシナヅチの槍とかち合う。アマテラスの神力が働いてか、折れる事もけずれる事もない。


「妻の寝床を守るためなら鬼にも成ろう!」


「それが神の言う台詞かよォッ!」


 二柱は怒鳴り合いながら、幾度も打ち合った。

 上がるはずのない火花が、両者の心の内で弾けた。

くさった! オモイカネちゃん☆


┌(┌ ^o^)┐


オモイカネ「ウフ……ウフフフ……(///ω///)♪


クエビコ『よせよ……民がみてる』


アシナヅチ『フ、許せ。恥ずかしがるおぬしが可愛くてつい……な』


クエビコ『ば、ばっけろい……(////)』


ブツカリ合ウ、体ト体……素晴ラシイ。変ワラナイ友情ト、芽生エテシマッタ同性トノ恋心への葛藤……思イヲ伝エテシマッタラもう戻レナイ……モドカシイ気持ち。ソシテ二人ハ幸せなキスをシテ終了……!


キャー! イケマセーン♪(/ω\*)


ハッ! ドドド、ドゥーモー皆サン! この薄い本ハ、何デモないノディース……友達カラ借リテちょっと……ソレヨリ解説行キマショウ! 男シカ出ナイ回ダッタカラ妄想たぎってシマイマシタ……。


今回ハ、アシナヅチとテナヅチについてデース。二人は夫婦で一組の神なワケですが、実ハ同じ親から産マレタきょうだいナノデス。


きょうだい同士がイチャラブする……二次元では結構お馴染みのジャンルデスネ。日本神話デハみんな普通にヤッテル事で全然変な事ジャアリマセン。かの高名なイザナギ様やイザナミ様も兄と妹でイチャコラ〇〇〇シテ子供作りマシタシ。


でも本作でのアシナヅチはせっかくの渋イケおじ様なのに、合法ロリのテナヅチとのカップリングでムッツリロリコンみたいデース。モッタイナイ。クエビコ様とのフラグビンビンに立ってるノニ。


アシナヅチとテナヅチ自体はあんまりメジャーな神とは言エマセンガ、あの有名なスサノオ様の武勇伝・ヤマタノオロチ伝説に重要な役で登場シテルンデスヨ。ヤマタノオロチの事もあとのエピソードで解説イタシマスね。


サテ、デハワターシは薄い本にモドリマース。乙女の時間……」


スサノオ「おいそこの君、今、このスサノオの話をしていただろう? ひょっとして、わたしの武勇伝のファンなのかね? 仕方ないな~あっちで詳しくみっちりたっぷり教えてあげよう(ムキッ)」


オモイカネ「イヤー! ムキムキはイヤーっ! ジャンルが違ウノーっ! アーーーーッ!」

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