《Section Four》『Ooparts Load』
この話で、あらかた、話は終わりですできれば、最後までこの作品に付き合っていただけると幸いです。
「……【ドレッドノート】! モルドレッド=ガリウス!」
俺がそう怒鳴ると、冷静な声が返ってくる。
「あ? その声は……ひょっとして、てめぇ、アーサーか? 生きてたのか! かっかっか!」
通信でそんな声が聞こえてくる。
俺は怒りを隠し聞いた。
「モルドレッド。お前に聞きたい事がある」
「なんだぁ? アーサー様ぁ? かっかっか!」
「なんで、裏切った! 国を! 俺を! 〝グィネビア〟を!」
怒り任せて問いただす俺に対し、モルドレッドは言った。
「は? は? はぁぁぁぁぁ?? 確かに俺は、あんたと国は裏切ったが、〝姫〟さんを裏切ってねぇよ! むしろ、裏切ったのは、〝姫〟さんの方だ!」
「どういう意味だ!」
俺は訳が分からず叫ぶ。
「うるせぇ! アンタには知る権利はねぇ! アンタを見てるとイライラする! いつもいつもいつも! 俺の邪魔しやがって!! でもな、アンタと会って良い事もある……。それは……アンタをもっかい殺せる事だ!!」
言い終わると、【ドレッドノート】が背中の翼とスラスターで飛び上がり、【クロガネ】に接近してくる。
「くっ!」
俺は瞬間的に回避行動を取る。
【クロガネ】がいた場所に、【ドレッドノート】が着地する。衝撃で地面がえぐれる。
「アンタ、今度は【セナルフ】に味方してんだろ? 逃がすかよ!! 燃やせ! 【赤き焔】!」
【ドレッドノート】が手を振りかざすと、そこから炎があふれ、【クロガネ】の左手に取り憑いた。振り払って、消そうとするが、消えない。
「かっかっか! その炎は消せないぜ! アンタも【カラークラウンズ】に乗ってんだ! 分かってんだろ! 【カラークラウンズ】の能力は全て、世界の事象、現象、法則を捻じ曲げられるってよ! 俺の【赤き焔】は、全てを焼き尽くすまで消えない永遠の炎! あの国を焼いた、俺の炎だ! かっかっかっかっかっかっか!」
それを聞き、持っていた右手の刀で燃えている左手を切り落とした。
概念は知っていた。だから法則を覆す【カラークラウンズ】の力は【魔法】とも呼ばれる。
「はっ! いい判断だな。だが、そうやってて、いつまでもつ? ジリ貧だな! かっかっか!」
【ドレッドノート】に乗るモルドレッドはあざ笑う。
その時、俺はある事に気付き、不意に口から言葉が漏れた。
「その程度か?」
「ああ?」
モルドレッドが首を傾げる。
「その程度なのかと聞いてるんだ」
俺がそう言うと、【ドレッドノート】から怒りの声が聞こえる。
「片腕失って! 威張ってんじゃねぇぞ! 偽王の分際でぇぇぇぇぇ! 全てを灰と成せ! 【赤き神焔】!」
怒りに任せ、【ドレッドノート】の口から、黒い炎を吐き出す。しかし【クロガネ】は避けない。
「死ねぇぇぇぇぇ!」
案の定、黒い炎は【クロガネ】に直撃した。
「死んだか? 死んだか? かっかっか!」
モルドレッドはあざ笑う。だが炎が消えると、そこには幾重にも折り重なった黒い刀があった。
「な!」
「何を驚いている。三年前、俺を焼いて【ホワイトエンシェント】を壊したお前が! 三年前と同じ防御をした俺を見て何を驚いてるんだ?」
「それは……」
「いいさ。答えは牢屋で聞かせてもらう!」
俺は炎を避けながら、【クロガネ】を走らせる。
「く、来るなぁぁぁぁぁ!」
【クロガネ】が【ドレッドノート】の真ん前に行った時、【クロガネ】の持つ刀で【ドレッドノート】の左腕を切り落とす!
「うわぁぁぁぁっっっ!」
【ドレッドノート】は暴れ狂うが、俺は切った左腕を回収し、距離を取る。
「お、俺の左腕を返せ!」
「断る! まあ、いいや。特別に見せてやる。この【クロガネ】。いや【ブラックロード】の真の能力をな!」
俺はそう言い、【クロガネ】失われた左腕に【ドレッドノート】の左腕を接すると叫んだ。
「俺に! いや、我【ブラックロード】に従え! 【黒き王冠】!」
すると、【クロガネ】の左肩から、コードがいくつも現れ、【ドレッドノート】の左腕に結合し、取り込んでいく。
最終的に、かつて【ドレッドノート】の左腕だったそれは、燃やした筈の【クロガネ】の左腕に変化していた。
「んな! 何だよ! その【カラークラウンズ】は! 一体何なんだよ!」
モルドレッドは怯え俺に問う。
「教えてやるよ。この【クロガネ】は元々、コックピットがない外装だけの胴体だった【オーパーツピース】だった。そして壊れた【ホワイトエンシェント】の生きてるパーツを組み合わせていたら、いつの間にか、組み合わせた【ホワイトエンシェント】の【オーパーツピース】が【ブラックロード】の【オーパーツピース】に変わっていた。【クラフト】の発掘中、後で分かった事だが、全てを従属させるコイツの事は【ブラックロード】以外に、こういう名前が残されていたよ」
俺はそして不敵な笑みを浮かべて言う。
「【場違いな兵器の覇王】だってな」
俺がそう言うと、モルドレッドは震え上がる。
【オーパーツロード】の逸話は、【クラフト】が見つかる以前からある話だ。
まさに伝説。【クロガネ】は、その一言で言い表せるほど、恐ろしい存在なのだ。
「う、うわぁぁぁぁぁっ!」
混乱して逃げながら攻撃してくる【ドレッドノート】。
それを見て俺は、ため息を吐き思う。
ケリをつけるいい機会だ!
「【クロガネ】。【転換】行けるな」
『勿論です。マスター』
その言葉を聞き、俺はニッと笑う。
「モルドレッド! お前の力貰うぞ! 【赤転換】!」
俺が叫ぶと、【クロガネ】の体に赤いラインが入り、背中には翼が生える。
「なんだ? あれは!」
「考えてもみろ、逸話にあるだろ? 『色の王の力を写し操り』ってな。つまり、お前のパーツから、【クロガネ】は【ドレッドノート】の全機能をパクッたんだよ!」
そして【クロガネ】を空に羽ばたかせる。
「くそ、くそ、くそぉぉぉぉぉっっっっっ!!」
悔しがるモルドレッドを尻目に、俺は【クロガネ】と【ドレッドノート】の力を合わせ、赤き一本の剣を作る。
「これで終わりだ! モルドレッドぉぉぉぉぉっっっ! 竜を討て! 【赤き竜を殺す剣】!」
その【アスカロン】を振るう。すると【アスカロン】の放った斬撃は、見事【ドレッドノート】を貫いた。
翼を捥がれ、体を貫かれた、【ドレッドノート】は自由落下する。俺はそれを空から見下ろした。
すると眼下に見下ろす光景に、俺は覚悟を決める。
眼下には、約十万もの【オーパーツギア】の軍隊が存在した。
「【クロガネ】」
『はい。マスター』
「俺も腹を括るわ。付き合ってくれるか?」
『どこまでも、マスター』
「なら行くぞ。【白転換】!」
すると【クロガネ】の赤かったラインが白に変わる。
そして【アスカロン】と同じように、今度は白銀の剣【エクスカリバー】を作る。そしてその【エクスカリバー】を手に取り、空に掲げる。
「行くぜ。天を穿ち、海を割り、大地を裂く、勝利の剣よ! 今こそ、全てを切り裂く剣となれ!」
そう叫ぶと光の帯が【エクスカリバー】から現れ、徐々に収束していく。そして巨大な光の剣となる!
「光を裂け! 【白銀の騎士王の剣】ぁぁぁぁぁっっっっ!!」
その日、首都【シラパ】に迫っていた【メオラ帝国】十万の軍隊が、たった一機の【カラークラウンズ】によって消滅させられた。