《Section Three》『Color Crowns And Fight Meaning』
さて、それでは、そろそろ、オーパーツロードについての話になってきます。
そしてクライマックスに向けて物語を加速させます。
最後まで付き合っていただけると幸いです。
【カラークラウンズ】。
色と王の名を冠する、他の【オーパーツギア】とは一線を画す人型駆動兵器。
世界に発見されているのは、十五機のみ。【オーパーツギア】の部類に当てはまるが、構造と性能は全くの別物で、王の名に相応しい性能を発揮する。更に一機ずつに解明できない特別な能力を持っている。
『状況は理解しました。そしてあなたの違和感の原因も』
俺は気が付くと、【クロガネ】に今までの事を話していた。
「話してくれ」
『マスター。あなたは自らの過去が相当トラウマになっているようですが、何故そこで、悲観するのでしょうか? そして何故、今回も負けると思っているのですか? 裏切られたから? それとも自分が弱かったから? 違います。あなたは怖がっているのですよ。自らの国に対し、悪逆非道を重ねた【メオラ帝国】に対して。そして戦争に対して』
俺が恐れている? 【メオラ帝国】を? 戦争を?
『考えても見てください。いつも余裕を持ち、自身満々のあなたはどこへ行ったのですか? いつも泣いても、敵を許さないあなたは、一体どこへ行ったのですか? それに今は私がいます』
言われてみれば……そうだな。
『思い当たる節があるようですね。なら、理由が分かれば、後は簡単です。今回の戦争で戦う意味を探して下さい。答えはそこにありますよ』
そう言った【クロガネ】に俺は小さく息を吐いて言った。
「ありがとう。助かった」
『いえいえ。マスターのためです。問題はありません』
そう言っていつものように、俺は【クロガネ】に体を預け、床についた。
《◎》
俺はその後、情報屋に頼み【メオラ帝国】を探らせた。
すると情報は、大して苦労せずに手に入った。
そして、その大隊の将を任された人物は、俺がよく知る人物だった。
数日後、また警報が鳴る。
俺はそれを聞き、予定通り出撃準備をしていた。
『それより、いいんデスか? 勝手に出撃して……軍隊でも無いのに……』
「よくは無いさ。そりゃな。でも調べたい事がある。そろそろいい頃だからな」
『……ニア達は待機? つまらない』
「ぼやくなよ。近々暴れられる筈だ。それまで温存しとけ。じゃあ、出るぞ!」
そう言うと、【カヴァス】のコンテナの一番上がスライドし、リフトが立ち上がる。コンテナに付いていたカバーがはがれ、【クロガネ】がその姿を現す。
俺は【クロガネ】を操り、空を駆けた。
《◎》
襲撃してきた赤い【ドライズ】の他に、青い【ドライズ】が一機いた。指揮官機のようだ。
「ヒャハハハハハ! やっぱ兵隊を、ぶっ殺してこその盗賊だよな。ヒャッハハハハハ!」
青い機体の【ドライズ】、【ドライズアクア】が、【セナルフ】の白い機体【ヴァリス】を腕に付いた爪の様な武器で次々と切り裂く。
「雑魚バッカじゃねーか! もっと楽しませろよ!」
「させるか!」
そこに巨大な槍と盾を持った、黄色の四足歩行の機体【ボルクス】が盾になり、【ドライズアクア】爪を防ぐ。
「なんだよ。ちったぁ、骨のある奴もいるじゃねぇか。だがな!」
そう言って【ドライズアクア】が腕を振り上げると、【ドライズアクア】の足元から、水が溢れ、そこから次々と影現れる。気が付くと【ドライズアクア】は二十機に増えていた。
「な、これは!」
「【ドライズアクア】の【スキル】、【アクアドッペル】だ。たっぷり味わえ」
特殊な【オーパーツギア】には【スキル】という特殊能力が使える。【ドライズアクア】の【スキル】は水で作った分身で攻撃する能力のようだ。
すると増えた【ドライズアクア】が【ボルクス】に襲い掛かる!
「く! 厄介な! は! は! はぁ!」
【ボルクス】は何度も分身に攻撃するが、分身は倒しても、倒しても増えてくる。
「くっ! これではキリが無い! ならば! これでどうだ! 轟け! 【ボルテックサンダー】!」
【ボルクス】が天に槍を掲げると、槍が電気を帯び始める。そしてその槍を地面に突き刺した瞬間、稲妻が大地を駆け巡った。
次の瞬間、水の分身は全て消し飛んだ。
「なに!」
「さあ、これで終わりだ!」
そうして【ボルクス】が槍で、トドメを刺そうとした時だった。しかしその槍は届かなかった。コックピット以外の全ての部分が、水の分身の刃で貫かれていたからだ。
そう水の分身は全て消し飛んだ筈だった。
しかし実際、本体は飛び上がってからも、分身を生み出し続けていた。それによって【ボルクス】は行動停止に追い込まれたのだ。
「ぐっ! くそ!」
【ボルクス】を動かそうと足掻くが、【ドライズアクア】は悠々とこちらに迫ってくる。
「残念だったな。【雷光の騎士】さん。あんたもここで終わりだ。楽しかったぜ!」
近寄り、ゆっくりと【ドライズアクア】の刃が行動不能の【ボルクス】に振り下ろされる筈だった。
その時、一陣の風が吹いた。
一瞬で【ドライズアクア】は腕を切り落とされる。
「な、なんで? ここに【カラークラウンズ】が! それも【漆黒の王】がここにぃぃぃっ!」
そこにいたのは黒き巨人だった。
「てめぇ如きが触ってんじゃねぇよ。屑が」
次の瞬間、ふら付く【ドライズアクア】は、気付く間もなく、切り裂かれていた。
《◎》
「間に合った」
『ギリギリでしたね』
俺は【クロガネ】で【ドライズアクア】を切り裂いた後、安堵していた。
「何者だ! お前は!」
そんな通信が入る。【ボルクス】に乗っていたダハラからだろう。
「何者って俺だよ。トウヤだ」
「なっ! どういうことだ! 【ホワイトエンシェント】はどうした!」
かつて乗っていた機体の所在を尋ねられ、俺は焦る。
「あれな……。実は……壊れた。で今は、この【ブラックロード】に乗ってるってわけ。俺は【クロガネ】って呼んでるけど」
「はぁ!?」
ダハラが素っ頓狂な声を上げていると、向こうからも動きがあった。
『トウヤ。右後方十時の方向に敵機一。しかし、反応が【カラークラウンズ】です』
丘の上に真っ赤な竜に似た機体が、こちらを見下ろしていた。
その機体を俺はよく知っていた。
「……【ドレッドノート】! モルドレッド=ガリウス!」