《Section Two》『Former Hero For Request』
さあ、ここでは、トウヤの王だった過去が明かされます。
楽しんで読んで頂ければ、幸いです
しばらくして警告が収まり、黄色の機体が帰ってくると、詰問所の職員に、黄色の機体に付いていくように言われた。
そうして黄色の機体の後ろに付き、王宮へ向かっていた。
そうして付いて行っていると、レピが気まずい空気に我慢出来ず、黄色の機体のパイロットに通信を繋げる。
「久々デス! ダハラ!」
通信に出たのは金髪の巨乳少女だった。彼女はダハラ=グリス。俺達のかつての仲間であり、幼女二人の親友なのだ。
『久しいなレピ。元気にしていたか?』
「それはもう元気デス! ダハラは相変わらず、騎士っぽいデス!」
『騎士っぽいのではなく、騎士なのだがな……。他の二人は元気にしているか?』
「勿論デス! とは言っても、トウヤもニアも、相変わらずだらしないデスが」
そう言って、カラカラ笑うレピだが、今回は珍しく気を使っているように見えた。そんなレピに対し、ダハラは神妙な顔で言った。
『それでも、我等にとっては、君達が希望なのだ』
《◎》
【セリアセルバ宮殿】王の間
俺とニア、レピはこの国の王に謁見するため、跪いていた。しばらくそうしていると、玉座の後ろの扉が、ガチャと音を鳴らし開く。誰かが玉座に座る。すると凛っとした声が部屋に響いた。
「表をあげてください」
そして頭を上げ、王の顔を見た時、俺は不意に固まってしまった。
「グィ……ネビ……ア?」
何故なら、そこには死んだ筈の少女が、そこにいたからだ。俺を招き、俺に命令し、俺が大切にし、俺と共にい、俺が守れなかった少女、グィネビア=トレムカ、その人だった。
しかし、俺は何故か冷静さを欠いていなかった。何故なら、俺には現実に向き合うだけの期間は、超えていたからだ。
そして冷静さを取り戻した俺は、声を振り絞って言った。
「いや……。違う……」
それを聞き女王は笑う。
「流石は元とはいえ、伝説の《騎士王》です。グィネビアは、わたくし従兄弟です」
「従兄弟……。そうか……」
俺は心を落ち着かせるため深呼吸し、意識を正常に戻す。
「初めまして《騎士王》アーサー=ドラグノ。わたくしはマリー。マリー=エッテニトア。この国の女王です」
それを聞き、俺は、ため息を吐き言う。
「それは三年前までの偽名ですよ。マリー。俺の本当の名はトウヤ=カンナヅキ。国、いや主人すら守れなかった愚かな異世界人です」
そう俺はかつて《騎士王》と呼ばれた王だった。
【アインナチリブ】という国を任された王だった。
いや、正確には、そこにいた〝グィネビア〟が【アインナチリブ】の王だった。そして【グィネビア】は国の危機に際し、【勇者召喚】を行い、俺を召喚したのだ。その後、俺の隣に常にグィネビアがいた。しかしその国は滅びた。グィネビアも死んだ。俺はこの世界では、何処かの神話のように【アーサー】なんて呼ばれていない。俺は所詮、ただの異世界人だった。それだけの話だ。もう三年前も前の話だ。
「で、俺達にダハラまで使って何のようです?」
そう聞くとマリーは顔をしかめて言った。
「わたくし達の国を守って欲しいのです!」
それを聞き、ニアは聞き返した。
「……国を守る……?」
「そうです。先日、【メオラ帝国】から使者が来ました」
「使者……デスか?」
そうレピが聞き返す。
「そうです。これを持って」
マリーは、書状をダハラから受け取り、俺に渡す。
その書状にはこう書いてあった。
『降伏せよ。【メオラ】は国を広げる。故に素直に国を差し出せば、汝達を許そう。ただし王族は後に処刑する。我らの駒がすぐに動くだろう。しかし我らは【メオラ】。寛大だ。時間をやろう。我が十万の大軍の本隊が来るまでに答えを出せ。我ら【メオラ】に栄光を!』
これは事実状の植民地支配だ。こんな物を出されれば、どの国でも戦いを挑むだろう。だが、【メオラ帝国】の物量は凄まじい。そして人材も……。そのせいで【アインナチリブ】は滅んだ。
だが、マリーはこれを俺達に見せてきた。
「で、俺達に国を守れと?」
「はい」
「お断りします」
俺はすぐに断った。しかし、この後マリーは予想外の返しをしてくる。
「分かりました」
すぐにそれを了承したのだ。
「何故と聞くのは場違いですかね?」
俺は冷静を装って聞く。
「私の【カラークラウンズ】は戦闘向きでは無いですから」
マリーは頬をかいて笑う。
「なら、なおさら、俺を引き止めるのでは?」
「あまり、理由はありませんが、しいて言うなら。わたくしがそうしたかったからです」
それを聞いて、俺は確信してしまった。
「あなたは王に向いていない」
「よく言われます」
マリーは困った顔でそう答えた。
「行こう。話しは終わった」
俺はニアとレピを連れ、部屋から出た。
「いいんデスか?」
「……いいの?」
部屋を出た後、二人が聞いてくる。
「何が?」
俺は自分に引っかかっている部分があるのが、分かっているくせにそう誤魔化した。