《Section One》『Ooparts Gear War Harbinger』
今日中に終わらせます!
まだ序盤ですが、最後まで、お楽しみ下さい!
【オーパーツギア】。
先ほど、俺が寄りかかっていた機械の巨人【クロガネ】と同じ、人が乗って動かす巨人が、この百年、異世界にいくつもある遺跡で、数多く発見されている。最初に発見したクソジ……んんっ! 【マーリン博士】はそれらの巨人に【オーパーツギア】と名付けた。
そしてその遺跡の事は総じて【クラフト】と呼ばれ、《宝の山》とも《迷宮》とも呼ばれている。
初めは、【クラフト】から【オーパーツピース】と呼ばれる古代のパーツが、数多く出土していた。しかし、【オーパーツピース】自体の技術力が高く、文明レベルが全く追いついていなかった。よって多くの謎に包まれていた。だが【マーリン博士】によって、発見された【オーパーツギア】により、【オーパーツピース】は【オーパーツギア】のパーツである事が判明した。
後に【オーパーツギア】の構造は解明が進み、現在では出土品だけではなく、量産機による作業機器としての位置を確立しつつ、兵器転用が進んでいる危険な代物だ。
元々、兵器として発見されたものだったため、当然の結果といっても過言では無いが……。
その【オーパーツギア】の中でも、【クロガネ】は更に特殊な訳だが。
「ちょっとちゃんと聞いてるデスか!? トウヤ!」
助手席の窓から空を見上げ、そう考えていると、隣で赤髪の幼女が喚く。自分の腕より太いハンドルを、華麗に操作する赤髪の幼女。名前はレピ=ルアベカ。語尾にデスを付けないと気がすまない変わった奴である。
「ん? どうした?」
「『どうした?』じゃないデス! もう少しで【シラパ】に着くから、身分書を準備して寝てるニアを起こしてって、さっきからそう言ってるデス!」
顔を真っ赤にし憤慨するレピを見て、俺は真面目に答える。
「あ、わりぃー。まだ何も準備出来てないわ」
「じゃあ、さっさとするデス! じゃないと【カヴァス】から叩き落とすデスよ!」
「げっ!」
つい口からそんな言葉が漏れる。
【カヴァス】とは、このトレーラの名前だ。特注で色々な機能が搭載されているが、それはまだ内緒だ。
つまりレピは、俺を置いてけぼりにすると、言った事になる。
「何か文句でもあるデスか?」
ギロリとレピの眼光が光る。
鋭い瞳だった。そして思いは本気だった。
俺はため息を吐く。
「分かった、分かった。ちゃんと準備してニアも起こすから! 落ち着けって」
「分かればいいデス。というか、さっさとニアを起こすデス。レピさっきから、とても退屈デス」
「分かったよ。ったく」
俺はそう呟くと、助手席を立ち、分離されている後方の席に移動する。するとこっちに鼻提灯を揺らし、スヤスヤと眠る青髪の幼女がいた。彼女の名はニア=ワグ。ひたすら無口で、たまに謎の事を言う幼女である。
俺はニアの肩を揺する。
「おい、ニア。起きろ。もうすぐ着くぞ」
するとニアから謎の言葉が返って来る。
「……トウヤが豆腐に。……大丈夫。どんな姿でもニアには問題ない。……美味しく食べる」
「は? おい、何を言ってる?」
俺がそう言って、肩を強く揺するとニアの鼻提灯がパンッと割れる。
「はっ! 豆腐のトウヤは何処!」
起き抜けに胸倉を掴まれた。難儀だ。
「お前は一体どんな夢を見てるんだ……?」
「ん? 夢……。知り合いが食べ物になる夢……?」
小首を傾げるニア。相変わらず、意味が分からない。
「どんな夢だ! しかも何故疑問系……」
「……それはニアがニアだから」
「答えになってね――」
俺、トウヤ=カンナヅキは訳あって、この幼女二人と旅をしていた。
まあ、今回は違う用事で【セナルフ】来ている訳だが。
《◎》
【セナルフ】首都【シラパ】詰問所
「はい。身分証は?」
入国審査の職員からそう言われ、俺は胸から書状を見せる。
「これを見せればいいって言われたんだが?」
「何だ? これは……! グリス家の紋章だと!」
職員は慌てふためく。
おいおい、話通してんじゃないのかよ……。そう思っていると、サイレンが聞こえる。
今度は何だ?
すると右手の端末が鳴る。
「どうした?」
『……トウヤ。このサイレンは盗賊が出たから、その警報。【オーパーツギア】が五体もいる』
端末からニアの声が聞こえてくる。
「盗賊? それにしちゃ、こっちじゃ兵士が慌てまくってるが……」
『ニアも可笑しいと思う。だって紋様は消してるけど、盗賊の機体、全部。【メオラ帝国】製の【ドライズ】型だから』
それを聞いて俺は驚愕した。【メオラ帝国】製【ドライズ】型といえば、この異世界で初めて、生物のドラゴンを元にした可変形態【ドラグフォーム】に変形可能な最新機だ。軍全体にもまだ完全配備されてないのに、盗賊などが持っている筈が無い。
「どういうことだ?」
『さあ?』
俺が考えを巡らせていると、横から黄色を几帳としたまるでケンタウロスを髣髴とさせる、四足歩行の【オーパーツギア】が出撃して行った。
その時、俺に一つの可能性が予測された。
「ひょとして……」
『……何か分かった?』
「いや、あくまで可能性だが……。俺達が呼ばれた事を考えれば……。最悪の展開かもしれん」
『……どういう事?』
「俺の予測では……戦争が起こる。それも国と国の取り合いのデカイ奴が。……最悪、【カラークラウンズ】同士の戦いが起こる」
俺の予想は当たって欲しくない時に当たる。正直嫌な予感しかしなかった。