決意の叫び
意識を失ったルリを抱えながらほっと息をつく。
「なんとかなったわね」
レミアが呆れたような表情で呟く。
「ありがとう。背中を押してくれて。」
「別に、どうせ止めても無駄だろうと思っただけよ。」
憮然としたように頬を膨らませてそっぽを向く。だが、ルリを救うために行動してくれたのは事実だ。そのことは、素直に感謝したい。
「魔族は?」
「あなたがルリちゃんを止めている間に逃げたみたいね。私たちもさっさと退散しましょう。」
暴走したルリにかなり手ひどくやられていたはずだが、なかなかタフな男だ。しかし、あの傷で再び暴れられるとは思えない。
なら、これ以上の長居は無用だ。神徒の騎士団が復活するとまたややこしくなる。
僕はルリを背負う形に変えて、都市を出る方向に向かう。その前に一人、立ち塞がるものがいた。
「行かせませんよ、先輩。」
静乃だ。魔族の奇襲を受けたダメージで、装備は所々焼けこげ、立っているのもやっとという様子だ。そんな満身創痍な状態でありながら、強い意志を宿した瞳はまっすぐ僕に向けられていた。
「教えて、ください。どうして、僕たちを裏切ったのか。」
「いや、だと言ったら?」
「連れ戻します。力ずくでも」
静乃は剣を握りなおし、正眼に構える。荒れる息を深呼吸の一つで制御し、それからはピッタリと微動だにしない。その堂々たる構えからは、負傷の影響を感じさせない。彼女が血の滲むような鍛錬を積んできたことが見て取れる。
さて、どうしたものか。構えの迫力はともかく、今の静乃は気力で何とか立っている状態のはずだ。だが、完全に気絶するまで粘り強く戦ってくる気迫を感じる。下手に時間をかけると、続々と神徒の騎士団が回復しかねない。
「やめましょう、静乃。」
「雫先輩・・・」
「そんな状態で、一人で悠一くんを止めるのは無理よ。ここは一旦退きましょう。」
雫の言葉を受けて、静乃は悔しげに唇を噛みながら剣を下ろす。そして、ぺたんと、糸が切れたようにその場にへたり込んだ。
静乃はもはや立つ気力すら残ってないだろう。雫にも戦意はなさそうだ。
僕は何も言わず、その横を通り過ぎた。
「絶対っ、強くなりますからっ!次こそ先輩を止めて見せます。」
嵐の後の静寂の中に、決意の叫びが響く。僕は言葉を返すことなく、ただまっすぐ歩き続けた。
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