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さて、こうしてアルバトロス邸を抜け出したメグたちであったが、なにぶん夜中のことなので足元すら危うい。

戦闘精霊であるフェアリーは夜目がきくようだが、普通の人間の視力しかもたぬメグを連れては、思うように進むこともできないのだ。

「お嬢様、いったん戻って、明日また出直しましょう」

「だめよ、それじゃキリーたちにばれちゃうじゃない!」

「いや、しかしですね……」

 ここでフェアリーは妙案を思いついた。

 それはたった一言の悪魔の囁き、しかし、フェアリーのプライドを痛く傷つける『偽りの言葉』という妙手……

「って、フェアリー君? どうしたの?」

「ああ、いえ、オジョウサマノヨウナビジンガコンナヨナカニウロツクナド、オレハ、トテモシンパイデス」

「なんでよ、何かあったらフェアリー君が戦ってくれるでしょ」

「イヤイヤ、オレダッテバンノウジャアリマセン。コンナカヨワク、ヤサシク、ハナノヨウナオジョウサマニモシモノコトガアッタラ……ソウカンガエルダケデ、ナキソウデス」

「んふふふん、たしかに、私はか弱くて優しいから、その気持ちはわかるわ、だから、こうしましょ!」

 メグは両手を打ち鳴らし、そのまま組み合わせた手を顎の辺りにくねっとあてた。

「秘密裏に作戦を進めるためにも、家に戻るのだけはダメ。どこか宿を手配してちょうだい」

「あ~、まあ、そのくらいならお安い御用です」

「おへやはスイートにしてね」

「それは無理じゃないですかね、この時間に宿を取ろうと思ったら、このあたりではオーバールックホテルくらいしかありませんよ」

「やだ! それって、お化けが出るって噂のあるホテルよね!?」

「あれ? もしかしてお嬢様、お化けが怖い?」

「こここここここ、怖いわけないでしょ! メグは無敵の言霊使いなんだから!」

「こわいなら、家に戻ってもいいんですよ」

「しつこいなあ、怖くないって言ってるでしょ! ほら、いくわよ!」

 先に立って歩き出したメグは、しかし、背中を丸めて小刻みに震えている。

「お嬢様、意外にかわいいところありますね」

「は? なに、なんか言った!」

「いえ、いつもそういう風ならば、お嬢様の人生はもっと違うものだっただろうな、と思っただけです」

「なによ、ぜんぜんわかんない」

「わかんなくていいですよ、さ、行きましょうか」

 フェアリーはメグの頭を少しなでてから、歩き出した。月明かりすらないくらい道を迷うことなくまっすぐに。

「あ、まってよ~」

暗い足元に隠れた小石につまづきながら、メグは、その背中を追うのだった。


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