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夕食後、早々に部屋へと引き上げたメグは、こみ上げてくる笑いを押し殺しきることができずに、「ぬふふ、くふふ」と怪しい笑い声をこぼしていた。

いつもならフェアリーがこれにツッコミをいれるはずだが、その彼も今はいない。

だからメグは、部屋の隅に置かれた鏡台に映る自分に向かって話しかける。

「え? なにがおかしいかって? だって、あの女……」

にたーりと大きく口を割いて、メグはご満悦だ。

「飼い葉桶に顔を突っ込んで、本当の家畜みたいで、ざまあ、じゃない?」

これで一気に心のタガが外れたらしい。メグの高笑いが部屋に響いた。

青ざめた顔をしたフェアリーが駆け込んできたのはちょうどその時で、心地よい高笑いの邪魔をされたメグは、明らかに不機嫌そうな顔で彼を叱り飛ばした。

「ちょっと、乙女の部屋へ入る時は、ノックぐらいしなさいよね!」

今のフェアリーにそんな余裕などあるわけがない。瞳を朱に染めて戦闘精霊モードなのだから、ドアをぶち破らなかっただけでも理性の欠片は残っているのだと褒めてやりたいぐらいだ。

「め、メグ様ぁ〜」

いつものクールさはどこへやら、子供のように泣き散らかしながら、彼は床に突っ伏した。

「オムリたんが……俺のオムリたんが……」

「なんで『俺の』なのよ」

「だって、たぶん、恋だったのに〜」

「ちょっと、状況が良くわかんないんだけど?」

「かいつまんで話しますと、オムリたんのいる馬小屋に……男……男の……」

「うん、誰かが馬の世話でもしに行ってたんでしょ」

「違いますよ、あそこは今日は客間扱いだから、むやみに近寄らないように皆に言ってあります」

「じゃあ、誰がいたのよ」

「たぶん、キリー……」

「はあ?! あの女、あれだけのことをしてあげたのに、まだ性懲りも無くキリーに手ェ出しちゃってんの?」

「しかも、干し草の陰で、セ……セッ……おセッ……」

「せっせっせ?」

「違います! 確かにせっせと腰は振ってたでしょうけど!」

「それ! R-18っ!」

「わかってますよ、これ以上言うつもりはありませんよ。それに、考えたくもない……オムリたんが……あの純粋無垢でもの知らぬようなオムリたんが、アレを知っているオトナのオンナだったなんて!!」

「あー、フェアリーくんは処女厨だったのね」

「しょ? なんですか?」

「あ、メグったら、こんなハシタナイ言葉使っちゃうなんて、うっかりさん♡ てへ」

「ねえ、その『しょぢょちゅー』って、なんですか」

「うるさいわねえ、これ以上追求すると、言霊ぶつけるわよ!」

「ふぇえ、俺はこんなに傷ついているのに、メグ様が慰めてくれない〜」

「うるさいわね、むしろあんたが私を慰めなさいよ! 愛する男が他の女に誑かされておセッ……をしていたっていうショック受けてるんだから!」

メグは親指の爪の先を噛む。ギリギリと不穏な音がした。

「あの女、どうしてくれようかしら」

「あ、あまりあくどいことはしないでくださいよ、後始末が大変なんですから」

「そうね……」

メグはにやりと悪人の微笑みを浮かべた。

「大丈夫、私は平和主義なの。それに、知性ある人物はむやみに人を傷つけたりしないものだと心得ているわ。そうね、ちょっとだけ泣いてもらおうかしら……言霊で」

その悪人づらにツッコミをいれる元気すらフェアリーにはない。

部屋には耳障りなメグの高笑いが響きわたるのだった。

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