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 メグが絶対零度凍死確定くらいに冷たい声を出す。

「そんな十ウン年も前の話を持ち出してくるとか、お父様、どれだけ粘着なのよ」

「あれ? 二十ウン年じゃないの? メグたんの年が今年で……」

「お父様、それ以上の口をきくと、そちらのお馬さんのでん部の中心にある排泄穴に頭部から突っ込んで馬の骨にして差し上げますわよ」

「メグたん、そんな回りくどいいい方しなくても馬のケツ……」

「R-18規制でこの世から消えてもらおうかしら」

「ごめんなさいっ! この世から消さないでっ!」

「あら、消えてもどうせ転生して(もどって)くるんでしょう、お父様のことだから」

「はい、余裕で戻ってこれます。でもっ! ここで、いまこの瞬間に消されたら、馬の骨からメグたんを守れないっ!」

「別に大人なんだから、守ってもらう必要なんてないんだけど?」

「そんなことないっ! 男はみんなおおかみなのっ! 可愛いメグたんがこんな男に……1輪の純白の椿がぽとりと落ちて土に汚れる。ドアの向こうからひときわ甘い悲鳴が聞こえた……な行為をされちゃうなんてっ!」

「R-18よっ!」

「え? なんで? 椿の花の話をしただけだけど?」

「ぐ……しばらく会わないうちにセクハラの腕をあげたわね、お父様」

「そんな……女は乱れきった布団の中に残ったぬくもりを惜しむようにまだ眠っている、男は立ち上がり、窓辺においてあった水差しから水を一杯、コップに注いだ……な朝を想像しただけで、お父さまは……お父さまはなあ……うぁああああんん! メグた~ん!!」

「ちょ、泣かないでよ、お父様」

 それを見ていたキリーはにこやかな顔で馬車から降り立ち、メグの父に手を差し伸べた」

「では、こういうのはどうでしょう、私は生涯をかけてメグさんの純潔を守ります」                   

「そんなことができるのか?」

「私の国では側室を置くことが義務付けられていまして、もっぱら子を産むのはこちらの女たちの仕事なんです。高貴で聡明な王の妻にはもっとふさわしい仕事がたくさんありますからね」

「……つまり?」

「メグさんほどの才女を子を産む道具などにするわけがないじゃないですか、むしろ私が欲しいのはメグさんの肉体などではなく、そのすべてなのですから」

「おおお! 義息子ムスコよ!」

 メグの父はキリーの肩をがっしりとつかんで抱き寄せ、感激の涙を流しているが……メグはぶすっとした顔でキリーをにらんだ。

「それじゃあお嫁さんになる意味がないじゃない!」

 そんなメグにキリーはあくまでも柔らかな笑みを消さない。

「メグさん、夫婦になる意味というのは肉体のつながりが全てではありませんよ」

「じゃあ、何があるっていうのよ」

「もっと深い、心のつながりです。それに、メグさんみたいに美しい人に触れるなんて、恐れ多くて、どきどきして、ぼくにはできません!」

「ああ、わかるわ♡ 良く少女マンガであるパターンよね」

「少女まん? それは良くわかりませんが、好きだからこそ、大事だからこそ触れるのにためらう花がこの世にはあるのだと、私はあなたに会って初めて知りました!」

「ああん♡ いかにも恋っぽい!」

 メグがスカートの裾を翻してくるりと回る。

「これから一生、この触れそうで触れないドキドキが続くのね。でもキリー、男の子なんだからガマンできなくなっちゃったら、メグはユルしちゃうゾ☆」

 フェアリーが口の中でぽそりと言葉を噛んだ。

「うわ、あざとい……」

「ん~、何か言ったかな、フェアリーくん☆」

「いえ、べつに何も」

「嫉妬しちゃダメなんだゾ☆ メグには婚約者がいるんだから」

「するか! 嫉妬なんか!」

「あ~、それにしてもメグの恋愛は順風満帆っ♡ 転生してよかった♡」

 メグが無邪気にカラカラと笑えば、それにつられたメグ父は「ワハハ」と笑う。

 もちろんキリーは静かに、上品に、それでも笑顔を浮かべているが……彼の瞳が一切の笑いを含んでいないことを見抜いているのは、フェアリーただ一人であった……


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