episode03 久々のメンツ
目が覚めるとやはり兄は帰っていない。
これでとうとう最後に会ってから3日が経った。
警察からも会社からもヲタからも連絡は無く、謎の女からのメールしか未だ手掛かりはない。
まだ6月だと言うのに雲一つなく溶けるような暑さでなにもする気が起こらない。
寝煙草しながらテレビを付けると、ニュースがやっていた。
認知症のおじさんが無事保護されただなんのって俺からすればどうでもよかった。
するとスポーツの話題に切り替わった。
ニュースキャスター「最近話題の総合格闘技の期待のルーキーナガセ選手が最初は勝てないと謡われていた20戦15勝KO率80%の格上選手相手にわずかプロ3回戦目で2ラウンドKO勝ちしましたー!!」
そうだ俺の親友のナガセコウは2年前に格闘家デビューをして、最近世間でも軽い話題になる選手。
中学の頃は俺と一緒に悪さなんかしていて、こいつは昔から頭が悪くのーてんきな奴だが喧嘩だけは強かった。
高校の時いきなり格闘家になるとか言い出して、なに言ってんだかと思っていたら本当にデビューしやがってたいしたもんだ。
最近はトレーニングなんかが忙しいらしく、俺も働いていないから金もないためほとんど顔をあわせてなかった。
兄の事も話しておきたかったので久々に連絡をした。
シュン「久々!元気にしてたか?」
コウ「おう!なんだ珍しいじゃねーか。」
シュン「試合勝ったらしいな!」
コウ「おっ!観てくれたのか?余裕ですよあんな奴。てかどうした?飲みにでも行こうってか?」
コウは気分良さげに言ってきた。俺はそんな気はサラサラなかったが、兄の事も話したいし最近顔すら合わしてなかったからそれもそれでいいなと思った。
シュン「あー。色々話したいこともあるしな!でも俺金ねーぞ。」
コウ「そんな飲み代の一つや二つ出してやるよ!格闘家舐めるなって!俺も丁度試合終わって次の試合まで時間あるからいつでも行けるぜ!ってか話ってなんだ?」
シュン「悪いな毎度毎度。まぁ詳しくはその時話すけど、実は兄が行方不明になったんだよ。それでヲタにも協力してもらってるんだけどさ。」
コウ「そうか。まぁゆっくり話は聞くよ!なんならヲタも呼べよ!久々のメンツになるなー」
シュン「声かけてみるけど、あいつくるかねぇ?」
コウ「俺が呼んでるって言っとけよ!あっわりー事務所から電話きたからまたかけるわ!ヲタに連絡しといてくれよ!じゃあまた後でな」
どうやらコウは相も変わらず元気そうでなりよりだ。
それにしても暑いのでアイスでも買いに行こうかと思い財布を、手に取り中身を確認してみた。420円…「よし!買えるな」とつぶやき玄関を出た。
俺の家は商店街に面しており、コンビニは目の前にあるが、一本奥に入ると道は狭く人通りも少なく変な奴がウロウロしていてまるでスラム街のようだ。
俺はなるべく面倒な事に巻き込まれたくないから最近はろくに外出してなかった。
コンビニに着くと柄の悪そうなサングラスの男がレジに並んでいた。
目が合うとめんどくさそうだと思い、俺は目をそらした。
するとその男がこちらに向かってくるではないか、なんだよめんどくせーなって思い、よく見ると中学の同級生で今は運送屋に勤めるユウイチだった。
ユウイチ「シュン?」
シュン「なんだよお前かよ。変な奴に絡まれたかと思ったよ。てかどんだけいかつくなったんだよお前」
ユウイチは中学の頃俺らとも時々連んでいたが、見た目は普通だった。だけど今となればどこからどうみてもチンピラ。
見た目はこんなだが、こいつは意外と規則正しい男で生活リズムが昔から良すぎる。そして毎朝半身浴したり、常にハンドクリームなどを持ち歩いている。なんかギャルみてーな性格の男。そして虫が大の苦手。
まぁ今の見た目と中身は正反対な訳だが、こいつの車の運転の技術はかなりのもので、道も相当詳しく目的地を言えばそこまで連れて行ってくれる意外と優しい奴。
ユウイチ「最近なにしてんの?生きてたのかよ?」
シュン「まぁボチボチな。お前こそ生きてたのかよ。」
ユウイチ「俺はバリバリだよ。てかコウは元気??」
シュン「あー!さっき久々に連絡してもしかしたら今日コウとヲタと飲みに行くけどユウイチもくるか?」
ユウイチ「まぁまだ一件搬送があるからなぁ。仕事が終わって時間あったら顔出すよ!」
シュン「おっけー!じゃあ仕事終わったら連絡よろしく!」
そう言ってユウイチと別れ俺はアイスを買って足早に家に戻った。
アイスを食べながらのんきにテレビを観ているとコウから電話がきた。
コウ「おーわりーわりー。ヲタに連絡してくれたか?」
シュン「あっ!まだだけど、今日ユウイチに会ってあいつも誘っといたよ!てか何時に合流するんだ?」
コウ「早く連絡しろよ!ユウイチかぁ久々だねぇー。6時に駅前の居酒屋でいいんじゃなーい?」
シュン「りょーかい!じゃあまた後でな!ヲタにも今連絡しとくわ!」
電話切ってそのままヲタにかけた。
シュン「もしもし?あれから何か情報は見つかったか?」
ヲタ「いや、なにも。」
シュン「そうか…。今日の夕方コウとユウイチと飲みに行くんだけどお前も来いよ!」
ヲタ「コウとユウイチ??久々だな!まぁいいけど、俺あんま酒飲めないよ?」
シュン「久々の中学メンツだよな!じゃあ6時に駅前の居酒屋でな!」
ヲタ「あーあと伝説のチョコのメモ持ってきてくれるか?なにか手掛かりがあるかもしれないから。」
シュン「わかったよー!」
電話を切り時計を見てみるともう4時45分じゃないか。俺は慌てて支度をして、駅へと向かった。