episode18 チェックメイト!?
またもや絶体絶命のピンチとなってしまった。
シュン「悪いな。助かったよ。」
コウ「しかし、このままじゃらちがあかないな。」
俺らは辺りを見回したがザッと20人の黒スーツが居る。
お互い絶妙な距離を取りながら様子を窺っているが、奴らが一斉に奇襲してくればかなりまずい事になるだろう。つまり、この状況をなんとか逃れなきゃならないのだ。
そんな緊迫した空気の中、奥からセイリュウが笑いながら歩いてきた。
セイリュウ「ハハハ。よく出来ましたアリンコさん達!」
セイリュウは機嫌が良さそうに俺らの前に立った。
まともに戦っても勝ち目は無いと思い、俺は交渉を持ちかけた。
シュン「交渉しないか?」
しかし、セイリュウはおちゃらけた態度で聞き返した。
セイリュウ「交渉??どんな交渉?」
シュン「お前は俺らに伝説のチョコレートの事を探るなと言ったよな?それでこの書物を返してくれれば見逃すと言ったよな?」
セイリュウ「うん。言ったよ!それでそれで?」
シュン「俺らも戦わずとも伝説のチョコレートがなんなのか知れればそれでいいんだ。」
セイリュウ「そうかそうか。それで?」
シュン「つまり、俺らはこの書物を返す。そのかわり伝説のチョコレートの秘密を教えてくれ。」
セイリュウは5秒ぐらい黙り、ニヤニヤしながら聞き返してきた。
セイリュウ「それって僕に有益な事ある?」
シュン「そっそれは…書物を取り返せるだろ。」
セイリュウ「そんな事しなくても、僕の一言で奪い返せると思うんだよなぁ」
シュン「…。」
セイリュウは周りに居る黒スーツを見回した。
確かにこの交渉は俺らにしか得は無い。
だが、セイリュウなら頭も悪そうだし、なんとかなるかと思ったが、さすがにそう上手くいかない。
俺はセイリュウの指摘に返す言葉が無かった。
コウ「だーもう!こんなブレザー野郎と話してもしょうがねぇよ。」
シュン「いや、ブレザーではないだろっ」
俺は小声で冷静にツッコミを入れた。
セイリュウ「んで、どうしたいんだい?」
コウ「黙れくそブレザー!」
コウは落ちていた拳ぐらいのサイズの石をセイリュウに向かって全力投球した。
セイリュウは隣に立っていた黒スーツを引っ張り、石はその黒スーツの顔面にクリティカルヒットし、黒スーツは倒れて失神した。
セイリュウ「危機一髪セーフ!危ないなぁ。なにするんだよ怪物くん」
コウ「仲間を盾にするとはとことんクソッタレだな。」
コウは意外と情に熱い男で仲間を盾にして自分の身を守ったセイリュウが気にくわなくて仕方なかったのだろう。
しかし、セイリュウはコウの事を馬鹿にするように笑っていた。
セイリュウ「仲間?このアリンコ達が?こんな奴らただの駒だよ。」
シュン「どうゆう事だ?」
セイリュウ「チェスで例えるなら、ポーンだよ。つまり捨て駒。こんなこころの無い兵士を仲間だなんて思う訳が無いだろ。」
セイリュウはあざ笑うかのように黒スーツを見下している。
シュン「キングを守るための駒。黒スーツ達はそれにすぎないと言う事か」
セイリュウ「だから言ったろ?僕はキングじゃない。僕もただの駒だ。まぁナイトって辺りだろうな。有能の駒を守るのも捨て駒の役割さ」
コウ「チェスとかなんとかわかんねーけどさ、オセロで例えられねーのかよ」
シュン「あぁ。奴らが黒で、俺らが白だ…って例えられる訳ねーだろっ」
俺は呆れながらツッコんだ。
コウ「ちょっと耳をかせ。いい作戦がある。」
小声でそう言って、耳打ちで語り出した。
コウ「俺があのくそブレザーにとっかかるから、お前は北門へ走れ。」
シュン「どうゆう意味だ?」
コウ「俺が奴らを引き付けてるうちにお前は此処から脱出しろって事だ。」
シュン「お前はどうする?」
コウ「あいつら蹴散らした後でお前を追うよ。」
シュン「んなばかなっ!そんなの作戦と言えるかアホ!」
俺はコウの無茶苦茶な発言に思わず声をあげてしまった。
コウ「ブレザーに向かって行けば間違いなくアリンコがガードに入る。すれば半分ぐらいはこっちに引きつけれるだろ?その隙にお前は走って逃げろ。昔から足だけは速かっただろ?」
シュン「お前が突っ込んで行って、間を空け引き付けてから隙をみて、逃走するってか?俺の逃走は可能かも知れないが、その後が問題だ。」
コウ「俺が喧嘩で負けたの観たことあるか?それにあの野郎は殴らなきゃ気がすまねぇ。信じろ俺を!」
シュン「死ぬんじゃねぇぞ…」
コウ「縁起でもねー事言うな!さっさと蹴散らしてすぐ追いつくよ」
この時のコウの目はマジだった。俺はもうこの作戦しかないと思い決意を固めた。
セイリュウ「おーい。作戦会議は終了したかーい?」
セイリュウは退屈そうに言った。
セイリュウ「そろそろ明るくなってきちゃったし、終わらせようか。君達わかってる?もう既にチェックメイトなんだよ?」
シュン「…チェックメイトって言うのはな…ゲーム終了の掛け声だ。よく覚えとけ俺らはまだ終わってねー!」
俺の声と同時にコウがセイリュウに向かって突っ走った。
セイリュウ「ふっ。自棄になったみたいだね。大畳際が悪いってのはまさにこの事だ。潰しちゃいなアリンコさん達。」
セイリュウの言葉で周りの黒スーツは一気にコウと俺に向かってきた。