episode16 赤髪の男と銀髪の男
その一方通信が途絶えたヲタの様子を確認しに行ったユウイチはホテルの地下駐車場に着いた。
車を降り、フロントに向かう為にエレベーターまで歩いて行くと、エレベーターの横の自動販売機の前に赤のタンクトップに赤の短パンで赤髪の若い男と灰色のスーツで銀髪と言うより白髪まじりでオールバックの50過ぎぐらい?の男がなにやら会話をしていた。
ユウイチは二人の話に耳を傾けた。
赤髪の男「なぁおっつぁんよー」
銀髪の男「なんだ小僧?」
赤髪の男「いつになったら暴れていいんだ?てか小僧って言わないでくれるか?」
赤髪の男は少し不満そうに訴える。それにムッとした表情で銀髪の男が答えた。
銀髪の男「アレが完成するまでは大人しくする命令が出ている。だったらおっつぁんって呼ばないでくれるか?」
赤髪の男「最近ずっとこんな調子で体がおかしくなりそうだぜ。おっつぁんはおっつぁんだろ?」
銀髪の男「じゃあ小僧は小僧だ。」
赤髪の男「チッ。なんでもいいよもう。セイリュウの方は楽しそうなのにな。」
銀髪の男「年寄りにはこっちの方がよっぽど楽でいいがな。」
赤髪の男「けっ。んで豚ちゃんの足取りはまだ掴めないのか?」
銀髪の男「あぁ。直に捕まるだろ。」
すると銀髪の男は数秒黙り、ユウイチの気配を感じたのか、ユウイチ方をチラッと見て赤髪の男に声をかけた。
銀髪の男「おい。」
すると赤髪の男がユウイチの方へ振り返った。
鋭い眼孔で振り返った赤髪の男の妙な殺気を感じ取り、
ユウイチはすぐに目を逸らしたが、なにやらこちらへと足音が近づいてくる。
ユウイチ『まぢかよ。早くエレベーター来いよ』
ちょうどその時エレベーターのドアが開き、ユウイチは中へ入るやいなや、閉めるのボタンを連打した。
ユウイチ『ばかやろう!早く閉まれよ!』
赤髪の男がこちらへ来る前になんとかドアは閉まりユウイチは少しホッと…する間もなく、すぐにドアが開いた。どうやら焦って閉めるのボタンを連打していて、行き先階のボタンを押していなかったらしい。
ドアが開くと目の前には先程の赤髪の男が立っていた。
ユウイチは息を飲み硬直した。
赤髪の男「ようにーちゃんよー」
ユウイチ「な、なんですか?」
赤髪の男「今そこで俺らの話聞いてたか?」
ユウイチ「いいえ。全く。」
赤髪の男の問いかけにユウイチは白々しく答えた。
赤髪の男「そうか。ならいいんだけどよ、ところでこんな時間に何しに来たんだ?」
赤髪の男は何かに気付いているかのようにニヤニヤしながら問いかけてくる。
そりゃそうだ今の時刻は午前5時30分頃。ホテルのフロントなど開いてる訳もなく、こんな時間にフロントに向かうなんて不自然極まりない。
ユウイチはそれに気付いてか、動揺を隠しきれず言葉に詰まる。
ユウイチ「いや…まぁ…」
赤髪の男「どうした?旅行か?それとも人でも捜しているのかな?」
ユウイチはこの時気付いた。この男達は黒スーツ軍団の関係者だと言う事に。
こんな相手にヲタを捜しているなんて言ったら何をされるかわからない。とりあえず適当な嘘であしらおうとした。
ユウイチ「いや、ウンコが漏れそうだったもんで、トイレ借りようと…」
赤髪の男「トイレなら他の所にもあるだろ?」
ユウイチ「いや、ウォシュレット付いてないと俺ウンコ出来ないんすよ。まぁ下の豪邸では貸してくれないし…」
この時ユウイチはまずい事を言ってしまったと悟った。
その言葉を聞き赤髪の男は顔色を変えた。
赤髪の男「ほう。あの豪邸にいったのか?」
ニヤニヤしながら言ってくる。
ユウイチは慌てて言い訳をした。
ユウイチ「いやまぁ、近くだったし…」
赤髪の男「それで誰か居たかその豪邸に。」
ユウイチ「だっ、誰も居なかったですよ。」
赤髪の男「おかしいなぁ。誰も居なかったか?」
赤髪の男の口調は優しくあるものの、なんとも言えない冷たさが目の奥から感じとれた。
ユウイチ「あ、警備員の人が居ました。」
赤髪の男「そりゃ警備員は居るだろ。実は…」
奇妙なと言うより不気味な笑顔でなにか言おうとした時エレベーターの音声案内が二人の会話を遮る。
エレベーター「行き先階ボタンを押してください」
赤髪の男は少しムッとした顔をして、話を再開した。
赤髪の男「実はその豪邸に…」
またもや「行き先階ボタンを押してください」と会話を遮る。
完全に苛立ちを隠せず、顔ににじみ出てるが、こらえて会話を始める。
赤髪の男「実はその…」
更にもう一度音声案内が遮る。
エレベーター「行き先階ボタンを押してください。」
思わずユウイチが吹き出したと同時に赤髪の男がブチぎれた。
赤髪の男「うるせーなーっ!ぶっ殺すぞ」
駐車場に響き渡るような雄叫びをあげ、エレベーターのボタンを殴った。すると、一撃でエレベーターの電源が落ちる程の凄まじい威力だ。
ユウイチは完全に固まった。