1日目 謎の転入生
「チチチチ…」
小鳥が鳴いている。さぁ今日も一日が始まる。
私の名前は白雪美月。
バリバリの高校1年生!
ついに新たなる学校生活が始まり、友達もでき、楽しい日々を過ごしていた。
5月になり、テストの季節だ、しんどいな。とばかりに生活していた。
でもそんな日々でも楽しかった。
…あいつがくるまでは。
「んでさぁ」
私と話している彼女は宮関銀音という。
全くもって変な名前がコンプレックスらしく、みんなは「みやちゃん」と呼ぶ。
「なんか、転校生来るらしいよ。しかもこのクラス。」
みやちゃんはカナリの情報通だ。先生の話を盗み聞きしては教えてくれる。
この前なんて、テストの問題がバレて、クラスに公表して、呼び出されたこともある。
前科たっぷりなのだ。
ガララ…
「お前ら席つけ〜」
そう言ってやってきたのは岸山孝太だ。
まぁいわゆる先生で、このクラスの担任である。
かなり人望も強いと噂だが、あんまり好きではない。
その岸山と一緒についてきたのは、髪の毛がツンツンに尖った男子だった。
しかも服は私服である。この高校は制服が基本となっているから余計目立った。
「みやちゃん。男子って知ってた?」
「ううん。そこまでは聞けなかった。」
オホンと咳をした岸山が黒板に名前を書きながら、こう言った。
「え〜と彼の名前は、桐山友也くん。自己紹介よろしく。」
桐山くんと呼ばれた男は黒板消しを取り、桐山の桐を消し、切という字に変えて、
「切山友也です。よろしく。」と眉一つ動かさず言ったため、
教室が大爆笑に包まれた。
「オホン!…切山の席は白雪の隣だな。そこの端っこだ。」
なんと!転校生がいきなり自分の隣の席に来てしまったのだ!
これはお近づきになれるチャンス!と思った。
仲良くしておけば、喧嘩が強そうなので守ってくれそうだし、
悪っぽくてちょっとカッコイイかな…?と思っていたとこだ。
…とにかく!コレは声をかけるしかないと思い、話しかけてみた。
「あの…白雪です。よろしく…」
と、ちょっとおとなしげな感じで話しかけてみたものの、
「よろしく…」
と小さな声で帰ってきただけであった。
…ちょっとつめたいやつねぇ。っと思った。
6時間目が終わり、帰りのホームルームが終わり、さぁ帰ろうとした時だった。
切山がフッと私の机の前を横切り、紙を一枚落とした。
私の机の上に置かれた、転校生・切山からの手紙…?
…告白だ!そうに違いない!と私は一瞬思った。
いやいや待て待て、Wait a minute.
それは無いだろう。いやさすがに。
そんな、よろしくって言っただけで、付き合ってくださいは無いだろう。
うんうん。それはないない。と思いつつ、
一応、手紙の内容を確認することにした。
今日の放課後、
話がある。
体育館裏にて待つ。
必ず一人で来ること。
切山
うぉぉぉぉぉぉぉぉぉい!!
思いっきり告白やないか!なにが言いたいか丸見えやないか!
と、なんとなく大阪弁で心の中でツッコんでみた。
だが、こんなお誘い断るわけにはいかない。
彼氏でも作って高校生活をenjoyしたい。
よし!行こう!
ここは体育館裏。
四方がほぼ囲まれていて、誰かが来たら隠れることもできる。
告白やカツアゲにピッタリだ。
…いやいや。カツアゲはだめだろう。
まぁいいとして、
そんなこんなで体育館の壁にもたれかかっている、切山を見つけた。
「…切山くん。話って…何?」
おぉこんなセリフ初めて言ったぞ。なんとも優越感。
彼はどんな行動をするのだろうか。
俺と付き合ってくれ…いやシンプルすぎるか。
俺と一緒に来ないか?…これは、くさいな。超くさい。
どうでるどうでると考えているうちに、切山はなんと土下座をしてきた!!
えぇ!?付き合ってくださいお願いします系ですか?
かなりショックだった。なんかコイツが気弱そうみ見えてきてしかたがないのだ。
ところが、その心情はすぐに覆された。
「やっと見つけました。美月殿。」
…はい?
なんと言った?こいつは…
美月…「殿」??
「日本に美月殿がいると聞き、日本中を駆け巡りました。
ついに…ついに、やっと会えた。」
美月は大混乱であった。
は?見ず知らずのちょっと不良っぽいこの男の子が私を探してた?
「あの…どういうことかさっぱり…?」
切山は私の顔を少し見てため息をついた。
「…自覚がないとは聞いていたが、ここまでとは…」
質問に答えていない。と思ったが、話を続けてきたので聞いた。
「あなたは自分が平民と思っているとお思いですが、
実はあなたは、お嬢様なのです。」
…?はい?
おじょうさま…?
え!?私お嬢!!?姫君なの!!?王女なの!!!?
「あなたのお父様はとても偉いお方でその子供があなたなのです。
私はあなたのお父様に雇われた兵でして、あなたを守りに来ました。」
守る??私危険なの??
「とにかく、くわしい訳は言えませんが、あなたにお供したいのでございます。
許可をお出しください!」
…おちつけ。
冷静になれ。もう一度 Wait a minute.
ここまでを整理してみよう。
切山という人が転入してきて、
なぜか切山が私を探していて、
私が実はお嬢様で、
切山が私の父に雇われていて、
私を護衛しなくちゃダメで、
許可を求められていると。
OKという以外ないのであろうか?
だって、狙われてるんでしょ?私。
しかも、それを護衛してくれるし。
以前述べたように喧嘩強そうだし。
いいんじゃない?OKしても。損無さそうだし。
「わかった。えっと…切山くん。」
「ありがとうございます。では、コレをお付けください。」
彼は私に指輪を渡してくれた。
エンゲージリング…ではなさそうだ。
「それは発信機になっておりまして、ピンチの時は真ん中を2回押してください。」
私はその指輪の真ん中を2回押した。
すると切山の手からブーブーという音が聞こえた。
「これでピンチを知らせてください。すぐに駆けつけます。」
なるほど、考えたなと思った。
「あと、僕の名前は呼び捨てでかまいませんよ。」
「じゃぁ、切山。ジューズ買ってきて。」
「パシリですか!!?」
「あなた、私を守るんじゃないの?
ジュースぐらい買ってこないと、護衛なんて出来やしないわよ!!」
校舎の屋上
「美月と切山か。…さっさと始末せねば。」
彼の指にはキラリとひかる指輪が付いていた。
「全く遅いわね。」
美月は体育館裏でジュースを買ってくる切山を待っていた。
「私先に帰ろっと。」
美月は紙に
「ごめんね 先に帰る」とメモを書き、その下に家の電話番号を書いて、
帰ろうとした。
体育館裏から校庭まで、人に見られないようにして移動しようとした。
ところが、グラウンドには誰も居ない。
「あれ?おかしいな。野球部とサッカー部の練習終わったのかな?」
まだ4時半だ。これからが本番というはずなのになぜだろう。
「ここは私が作った場所だからね。」
その声は下足ホールから聞こえてきた。
そこに居たのは岸山孝太…そう、担任だ。
「先生…なに寝ぼけたこと言ってるんですか。私帰ります。」
「君はわかっていないようだね。」
私はこの先生馬鹿ですねぇと思いながら門を出ようとした。
しかし、門の前で頭を打ってしまった。
「いったぁ!」
ところが、門の前には人が居ない。門は開けきってある。
なぜ…?
「ここは私のMAKEの力で生み出した世界。ここからは一生出られない。」
私はまた混乱した。
は?世界を作り出す?意味わかんない…
けどコレだけはわかった。
私はコイツに狙われている。確実に。
私は岸山とは反対方向に走り出した。逃げよう。とにかく。
ところが岸山は追ってくる。ドンドンと差を詰められていく。
終わった。私死ぬのか…
そう思ったときだった。
パチュン!
という音と共に岸山のめがねが吹き飛んだ。
後ろを振り向くと、そこには、
左手に2個のジュースを持ち、右手に拳銃を持った切山がいた。
「お嬢様に何をする。」
「そいつの首には金がかかってるんだ。なんとしても連れて帰らねば。」
岸山がそう言った瞬間、目の前に狼が2匹現れた。
「私は物を作り出し、動かすことができる!!」
岸山はその狼に指令を出した。その狼は切山に襲い掛かる!
パパン!
2発の弾丸音がすると、狼たちは崩れ去った。
「くそ…まだまだだ!!」
今度は3匹の狼を繰り出してきた!
パン!パパン!!
狼は出現した瞬間に3発の弾丸によって崩れた。
「ふ…馬鹿め。その拳銃は6発打ったらまた弾を入れなければ撃てないはず!
弾の入っていない銃など怖く…」
そう言った瞬間。岸山の脳天を弾が貫いた。
「残念ながら。俺の能力はSHOTの能力。弾切れしない銃がとりえなんでね。」
普通の人間ならば、このまま倒れるだろう。
だが岸山はそうではなく、足からサラサラと消えていくようだった。
「くそ…我が名は文和!覚えていろよ…次は必ず…」
そう言って消えていった。
私はただただ突っ立っているだけだった。
「ねぇ、切山。」
「なんですか。」
「あんた。…どこまでついてくるき気?」
「お嬢様の家まで。」
美月はビックリした。
「え!?私の家に泊まる気?」
「だって家ないですもん。」
え〜っと思ったが、しぶしぶ承諾した。
これからお世話になると思ったからだ。
というか、かなり長い間お世話になるに違いない。
コレで第1話は終了だ。
なんだこの終わり方は…とはいわないでくれ。
まぁこの話で出てきた謎は次回以降に明かそうと思う。
ながながとお疲れ様であった。私もすこしつかれたよ。
ではまた会おう。