短編28:その時、隣にいるのは?
2016.05.15 割込更新
「あのさ。何となくお前なら、俺の期待通りの反応をしてくれそうだから、話すけど」
「うん」
「途中で頭がおかしいんじゃないのかと思っても、とりあえず話だけは聞いてくれ」
「うん。分かったから、とりあえず早く話して」
何か話があるからと、幼馴染に呼び出されて行ってみれば、こんなやり取りという前置きをされた。
「それじゃ、話すが」
「うん」
ごほん、と咳払いし、何かを覚悟したかのように我が幼馴染は話し出す。
「実は、話そうかどうかずっと思ってたんだけど、やっぱりお前にだけは話しておこうと思い続けて、ようやく今日話せる。俺たちがいる、この世界はーー乙女ゲームの世界なんだ」
「うん、知ってた」
あ、固まった。
おそらく幼馴染の望んだ私の反応は、親指を立てて「よし、病院行こうか」と言う反応だったんだろうけど。
「し、知ってたって……」
「うん、知ってた。雛笠君が攻略対象だってことも」
「……」
あ、まさかこれが止めになった?
我が幼馴染ーー雛笠千尋は、乙女ゲーム『名も無き世界の狭間で』での攻略対象者。
幼馴染である少女(つまり私)に想いを寄せていたのだが、告白が出来ないことに悩み、それを知ったヒロインの協力で幼馴染に告白することになる。
だが、いざ告白しようとした矢先に、協力してくれたヒロインのことを思い出し、すでに自分は幼馴染ではなく、ヒロインが好きなのだと自覚し、幼馴染に背中を押され、ヒロインに告白し、『雛笠千尋』ルートはクリアとなる。
これはあくまで雛笠君視点での流れであり、ヒロイン視点では、雛笠君に告白され、『彼と付き合いますか?』という問いに、はい・いいえという選択肢でルートクリアとなる。
「つか、深守。お前も転生者だったんだな」
ようやく復活したらしい。
「うん」
「いつだ。いつから気づいていた」
「中二の時だね。あの時は本当に、自分が中二病になったのかと思ったけど」
でも、進学先を決める際に、この高校の名前やらなんやらを見て、かなり驚いたけど。
「雛笠君は?」
「俺は高校名を見た時だな」
とりあえず、思い出した時の確認を終えれば、二人して息を吐く。
「……ゲームスタートは来年だったか」
「だね。スタート時にヒロインが転入してくるはずだから」
「……お前と付き合えば、攻略されないのかぁ」
「それは……」
どうなんだろう?
「けどそれだと、雛笠君が、私を恋愛的な意味で好きかどうかが前提になるよね?」
「それにお前は、俺をゲームみたいに『千尋』と名前では呼んでないしな」
すでに私たちという存在がシナリオに沿ってない時点で、ヒロインや他の攻略対象者たちがどんな行動するのかが分からない。
「とりあえず、お前は他の攻略対象たちに注意しとけよ? 転生者なんてイレギュラーになった以上、変な興味持たれて、いろんな意味でややこしくなるのだけは嫌だからな」
「そんなの分かってるよ」
私も面倒は嫌だし。
まあ、全ては来年やって来るヒロインさん次第だけど。




