第8話 キス
食後に先生からの話を聞く。明日の集合時間や今日の夜の注意事項だ。
「異性の部屋に入るのは絶対にだめだからなー」
わたしたちはだらだらとレストランを抜けて、部屋に戻ろうとした。
「後でさ、ちょっと部屋来てや。トランプしよー」
奏也から小さな声で声をかけられる。
「おっけー」
この様子からすると、わっちゃんから事情を聞いているのかもしれない。まだ類斗と過ごせる喜びでわたしは笑顔になっていた。
一旦部屋に戻り、八時少し手前に部屋を出た。莱は別グループと遊ぶ約束をしているとのことで、そっちに向かって行った。わたしと文香は廊下を歩き、男子部屋があるフロアに向かった。辺りにはカップルになっているひとが話をしていたり、廊下で立ち話をしているひとたちで溢れていた。
わたしたちはなんとか先生の目を盗み、類斗たちの505号室に向かった。楽しくて途中駆け足になる。ドアは開いていた。文香が先に入る。
「やっほー」
「おーいらっしゃーい。先生大丈夫だった?」
「なんか廊下にわちゃわちゃいて、バレてなかったわ」
四人でベッドに集まり、奏也が持って来ていたトランプを広げる。
「やっぱ最初はババ抜きやろー」
「やろーやろー」
「負けたやつは最初に勝ったやつの言うこと聞くことなー」
「りょうかーい」
「ちゃんとお菓子持ってきたやろな?」
「もちろん、昨日親と買い物行って買いまくった」
いつものお遊びが始まる。ベッドサイドの時計を見ると、八時を過ぎていた。絵美は大丈夫だろうか。
わたしは類斗の隣に座り、彼のカードを引く。絵柄が揃ったので、カードを真ん中に投げる。どんどんカードは減っていく。最初になくなったのは類斗だった。
「おー! やったー! あがりや。いえーい!」
「まじかよ」
最後まで残ったのは、わたしだった。
「いややー。最悪」
類斗はニヤニヤしている。
「じゃあ、今から自分の部屋に戻って俺にお菓子を持ってくること」
「なにそれー」
「先生見つかるんちゃう?」
「はいはい、行ってー」
えー今戻れないのに、と思いながらも文香も忘れているのか、フォローもなく次のゲームを始める準備をしていた。わたしは仕方なく廊下に出る。先生に見られるかもしれない恐怖と、絵美の邪魔にならないだろうかということで頭がいっぱいだった。それでも類斗から言われたことだと言い聞かせて歩を進める。
時間は八時三十分ぐらいだった。さっきまでいた生徒の数は少しだけ減っている気がする。幸いなことに先生の姿はなかった。わたしは階段を降りて、403号室を目指す。
ゆっくりとドアを開け、入り口すぐの自分のかばんのところに向かう。すると、くちゃくちゃという音が聞こえてきたので、そっとベッドの方に目を向ける。
薄暗い部屋の中で絵美とわっちゃんがベッドに座り抱き合ってキスをしていた。そして、わっちゃんの手は絵美の胸の辺りにあった。まずい所を見てしまった……ていうかキスしてるってことはうまくいったんだ、と思っていると、後ろのドアが開いた。振り返ると、類斗がいた。




