第7話 ウーロン茶
午後六時から、ホテルでのビュッフェが始まるためわたしたち四人は部屋から出て二階にあるレストランに向かった。すでに大勢の生徒が集まっていて、各々料理手を伸ばしていた。わたしたちは決められた席に座る。わたしは自然と類斗を探した。
わたしたちより少し遅れて、類斗や奏也、それにわっちゃんと日向がやって来た。すぐにでもそばに行きたかったけど、わたしは気にしていないふりをして料理を取りに行った。嫌になるぐらい際立って見える。
「よ」
並んでいると、奏也も後ろに並んでいたみたいでわたしに声をかけてくれた。
「おいしそうやなあ」
「何食べよー。てか部屋も綺麗よなあ、爆睡できそうやわ」
「今日も朝練やったんやろ?」
「せやで、鬼西野」
やはり四人近くにいると会話が弾む。類斗は制服ではなく、普段着に着替えていた。たぶん兄からのお下がりであろうそれは、いつもよく似合っているしセンスもいい。わたしは母親に買ってもらった服を見ながら、ため息が出そうになる。全然類斗に見合ってないなーって。
てきとうに取った料理を食べながら、わたしたちは恋バナに夢中だった。ていっても、わたしは好きなひとはいないことにしている。幼稚園の頃から片思いだなんて、めちゃくちゃキモいし、類斗をそんな目で見ていると思われたくなかった。それに言っちゃうとなおのこと意識しちゃうだろうし。
絵美がわっちゃんをいいな、と思ったのは数ヶ月前らしい。たまたまサッカー部が練習試合をグランドでしていた時。ってことは、二年のあの頃だなーとかわかっちゃうから、わたしってやっぱきもい。
だからまあたぶんわたしが思うには中学の思い出作りってやつじゃないかな? だけどとにかく、類斗じゃなくてよかったー。
それから、文香の話にうつる。セックスもどきの話は避けつつ、この間ふたりでショッピングセンターに行きおそろのネックレスを買った話などを嬉しそうにしていた。憧れの中みんな生きてるんだなーってわたしは変に冷静だった。
上手くいかなかったら、男女の関係なんてすぐに崩れるのに。壊さないようにするバランスが大事なんだぞって思っていた。偉そうだけど。
「悠莉はさ、絶対類斗やろ?」
絵美からの質問に、豆が喉に詰まりそうになった。
「そんなわけないやん」
「なんでよー仲良いのに。いいなー類斗人気やん。優しいし、サッカーうまいし」
「ねー。この間も二年の子に告白されてたで?」
なにそれ、初耳! 詳しく教えて! って思うのに、言えない。
「廊下でさ。どうなったか知らんけど、あと、そうそう黙っててほしいんだけど、郁ちゃんも好きらしいよ? 類斗のこと」
郁ちゃん? 全く知らなかった。バドミントン部の郁ちゃんだ。たしかに類斗と話しているのを見たことある。そうそう、類斗の手触ったりしてたかも。はあ? ってなったけど。
「誰にでも優しいって罪だよねー」
「でもチャラ男じゃないし、悪い話聞かないから絶対類斗いいよ」
顔が赤くなりそうだったので、飲み物を取りに立ち上がる。
「おーい、ゆりちゃん大丈夫?」
ハッとすると、横に類斗がいた。わたしは自分の手元に目をやる。小さなお皿にウーロン茶を入れようとしていたのだ。
「は、あ、類斗!」
わたしは驚いて声が出る。
「ぼんやりが過ぎるやん、ほい」
類斗はガラスのコップにウーロン茶を入れてくれた。わたしは受け取ろうと手を伸ばす。ああ、さっきの大きな手だ、と思うと触れたくて仕方なくなった。
「おーい、しっかり」
「ごめんごめん」
「どうした? 俺がいなくてさみしい?」
「何言ってんの」
「女子トーク楽しんで」
わたしは類斗が入れてくれたウーロン茶を持って席に戻る。3人は変わらず恋バナに夢中だった。そういえば、さっき類斗は何も持っていなかった。もしかして……わたしのこと見てたのかな? なんて思ったけど、絵美のさっきの話を思い出すとなおさら自信なんて全くなくなっていった。




